これにより、スーパーは商品の販売在庫リスクを単独で負う必要がなくなり、新たに手数料収入が入る。また、生産者は出荷後の商品の行方や、販売状況が分かる。つまり皆で商品が「売れる」ことに対して、主体的に関わることができるようになるということである。

 消費者にとっては、生産者の顔がわかることで得られる安心感と、鮮度が良く品質の高いものを購入することができ、選ぶ楽しさが増える。

 「日本の農業を衰退させないためには、農業を稼げるビジネスにすること。そして、生産者に『ありがとう』の声が届く仕組みにしていかなければ、持続可能な農業にならない」と及川氏。

 自身もキュウリ農家、八百屋の経営も経験し、各現場をみてきて農業に携わる者皆が幸せになる落としどころは何かを探ってきた。その地道な現場経験から編み出したのが同社の流通の仕組みだ。

 及川氏は、手元資金50万円、仲間も人脈も0の状態から、1人和歌山県で2007年に創業。20166年グロース市場に上場させた。

 起業当初は、農家のコンサルティングや手伝いをしても全く稼げず、農家の人は感謝と生産物はくれても、目に見えないサービスに対してお金は払ってくれない。あるみかん農家は、みかんならあげられると言って、50みかんをくれたという。

 そのみかんを大阪の駅前でゴザを広げて、〝産地直送・300円〟で売り捌いていき、それが次第に農家の間で評判を呼び、今日のビジネスに繋がっている。

 現在同社を通じた流通総額は170億円まで達し、今後は東京・大田市場(青果)と同規模の1000億円を次の目標に掲げる。2025年8月期は売上高83億円(営業利益1・8億円)、PERは45・81倍、PBRは11・07倍と、農業ベンチャー唯一の上場企業で市場からの期待は高い。

 「当社はそこまで儲からないビジネスなので参入障壁が高く、ライバル企業はいない。ただ、日本の農業を良くしていくという志で、全部の流通にわれわれが関わることを最終目標にやっていきたい」(同)。苦労を重ねてきた経験から、「やればできる」と自らを鼓舞する及川氏である。