「VIVANT」超えの衝撃 日曜劇場「リブート」が視聴率“独走”の理由 鈴木亮平×松ケンら“主演級8人”
主演経験者を揃えた
冬ドラマが出揃った。民放主要4局のイチ押し作品の滑り出しはどうなのだろう? 民意の表れである視聴率を確認し、どうしてその数字になったのかを考察したい。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】
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18日に初回が放送されたTBS「日曜劇場 リブート」(日曜午後9時)の視聴率は個人8.4%(世帯13.3%)。1月第3週(同12〜18日)に放送されたドラマの中で断トツだった。
日曜劇場の大ヒット作「VIVANT」(2023年)の初回で記録された個人7.4%(世帯11.5%)も上回った。これ以上ない滑り出しだった。

高視聴率の理由はいくつか考えられる。まず出演陣に主演経験者が大挙集まった。主人公の悪徳刑事・儀堂歩役に扮する鈴木亮平(42)は、ドラマと映画で計15本以上に主演している。儀堂は初回で殺された。
街のパティシエ・早瀬陸に扮する松山ケンイチ(40)の主演は実に同計40本以上。早瀬は妻殺しの罪を着せられたため、整形して死んだ儀堂になりすます。
ほかにも怪しい公認会計士・幸後一香役の戸田恵梨香(37)ら8人が主演経験者。大作映画と同等レベルの豪華さだ。
主演を任される人には一定以上の演技力がある。その上、存在感を持っている。だから主演経験者が複数いると作品のクオリティが上がる。大作映画は制作費がふんだんにあるから、出演陣の多くを主演経験者に出来る。
平均的なドラマは1本あたりの予算が2000〜3000万円しかないが、日曜劇場は日本生命など大手スポンサー4社が支えてくれているから、制作費は推定約4000万円。だから大作映画並みの出演陣が実現できた。
俳優にとっては日曜劇場の高い制作力も見逃せない。俳優は視聴者に相手にされないような作品には出たくない。その点、2025年の日曜劇場は「御上先生」など4作品全てが視聴率ランキングで上位入りした。今回のドラマの東仲恵吾プロデューサーも「ラストマン」(2023年)などを当てている。
ほかにも「リブート」がロケットスタートした理由がある。脚本が突出して良い。書いているのは黒岩勉氏(52)である。家族の絡むサスペンスが得意で、なおかつ先の読めないストーリーにするのがうまい。
黒岩氏は過去の日曜劇場では、莫大な遺産を巡る家族の暗闘を描いた「危険なビーナス」(2020年)を書き、ヒットさせた。捻りの効いた誘拐物「マイファミリー」(2022年)も手掛け、これも当てた。両作品はともに家族の抱える秘密が焦点になった。
「リブート」は2年前から失踪していた早瀬の妻・夏海(山口紗弥加)が、遺体となって発見されるところから物語が始まった。夏海はゴーシックスコーポレーションという会社で、闇社会の金のロンダリングに関わっていたらしい。早瀬は知らなかった。やはり家族の秘密である。
早瀬は夏海殺しの容疑を掛けられた。夏海の死の真相を突き止めたいが、警察に追われているので、身動きがとれない。そこで儀堂の恋人だったという一香の強い勧めにより、死んだ儀堂になりすます。これが人間のリブート(再起動)である。
斬新な設定だ。ただし、ややこしくなりそうな気配もある。初回の冒頭、儀堂は鶏小屋に監禁されていた。助けたのは一香。そのとき、儀堂は「決めた。リブートだ」と口走った。
リブートは割と容易に出来るのだ。整形すればいい。となると、殺された儀堂は本物だったのか? 儀堂が生きている可能性も捨てきれない。
人気者になりそうな悪役も登場している。北村有起哉(51)が演じるゴーシックスコーポレーション社長の合六亘である。
合六は鉄板焼き料理をつくるのが好きらしく、部下たちを集め、食べさせる。ただし、部下たちは素直には喜べない。合六は裏切り者に対しては「うまいもん食って、幸せな気分になって、終わったほうがいいやろ」と告げ、直後に殺す。これを真顔で言うのだから、まるでギャグである。
合六の組織に協力している儀堂も10億円着服の疑いがかけられた。この儀堂の中身は早瀬である。初回は早瀬が殺されそうな場面で終わった。
ヤンキードラマ
12日に放送されたフジテレビ「ヤンドク!」(月曜9時)の初回は個人5.0%(世帯8.1%)。1月第3週で3位だった。かなり高い数字だ。ヤンキードラマは昔からウケるのである。
暴走族の元リーダーが高校教師になるフジ「GTO」(1998年)は大ヒット作となった。見かけ倒しのヤンキーを描いた「ナンバMG5」(2022年)も人気を得た。
日本人はおおむねヤンキーを敬遠するが、そのドラマは好む。不思議な現象だ。ドラマで描かれるヤンキーたちが大幅にデフォルメされ、正義感の塊となり、義理人情や友情に厚いからだろう。1960〜80年代にヤクザ映画が大人気だった構図と似ている。
今回、フジはヤンキー物と医療物を組み合わせた。医療物もドラマの人気ジャンルだから、強力なコンビネーションである。
ただし、ヤンキー物と医療物の融合は至難。水と油のようなものだからである。どちらかを薄めにしなくてはならない。
このドラマの場合、ヤンキー物を優先し、医療物を後回しにしているようだ。そのほうが単純でつくりやすく、なおかつ面白い作品になると踏んだからだろう。
医療物を二の次にしているのは、橋本環奈(26)が演じる主人公・田上湖音波が医者になった経緯などから分かる。湖音波はお台場湾岸医療センターに赴任したばかりの脳神経外科医だ。
湖音波は13年前にオートバイで転倒事故を起こし、瀕死の重傷を負う。それを収容先の岐阜白峰病院の脳神経外科医・中田啓介(向井理)に救われた。それから湖音波は医師を目指す。お台場の病院に招いたのも先に赴任していた中田だ。
事故当時の湖音波はバリバリのヤンキー。「自分、レディースでした」。回想シーンでは特攻服を着ていた。
高校は中退。先輩の脳神経外科医・大友真一(音尾琢真)から「それで、どうやって医師になった?」と問われると、「根性っす」と答えた。トンチンカンな答えだが、「根性」はヤンキーにとって万能である。
湖音波は高卒認定試験(旧大検)に合格し、さらに医大入試に向けて猛勉強を積んだのだろう。だが、合格できたとは思いづらい。面接突破が難しいからだ。
面接は国公立も私立もすべての大学医学部が課す。配点も大きい。国公立は2次試験の約1〜2割、私立では40〜100点程度。なぜ、面接があるのかというと、医師としての適性、チーム医療への適合性などを見るためである。
面接で落ちる受験生はザラ。普通に考えると、湖音波も合格は無理。返事は「ウス」、謝るときには「サーセン」、感情的になると「たわけ!」と怒鳴るからだ。
それでも医大に合格し、医師免許も得たとする。だが、やはり医療物は二の次になっている。湖音波はカテーテル手術を裸足で行ったからだ。そのほうが「動きやすい」という。いつも裸足なのだそうだ。
だが、カテーテル手術には出血リスクがある。このため、手術前の医師とスタッフは滅菌ガウンや滅菌手袋などで無菌状態をつくる。もしも患者が大量出血したら、湖音波の足は血まみれになりかねない。
医療物としてはラフにつくられているが、それでもいいと思った視聴者が1月19日放送の第2回も観たのだろう。視聴率は個人3.6%(世帯6.1%)だった。個人は初回より1.4ポイント下がった。かなりの下げ幅だ。医療物を期待した人が脱落したのだろう。
恋と笑いの少ないラブコメ
13日放送のテレビ朝日「再会〜Silent Truth〜」(火曜9時)の初回は個人3.8%(世帯6.8%)。1月第3週の5位だった。20日放送の第2回は個人3.5%(世帯6.1%)と微減した。
主演は竹内涼真(32)。35歳になる刑事・飛奈淳一に扮している。小学校6年生のときの同級生がヘアサロン経営の岩本万季子(井上真央)、建築士の清原圭介(瀬戸康史)、会社役員の佐久間直人(渡辺大知)である。4人には共有する秘密があった。
小6のとき拳銃を隠した。銀行強盗と撃ち合いになって死んだ警察官・清原和雄(弓削智久)の拳銃だった。和雄は圭介の父親である。23年前のことだった。
その拳銃を使った殺人事件が起こる。殺されたのはスーパー店長で直人の異母兄・秀之(小柳友)である。佐久間家の厄介者だった。
秀之は自分のスーパーで万季子の息子・正樹(三浦綺羅)が万引きをしたことから、万季子を脅迫していた。圭介は万季子の元夫で正樹の父親であるため、一緒に脅迫に対処しているところだった。
万季子と圭介には動機がある。兄が迷惑な存在だった直人にも。3人とも拳銃を隠した場所も知っている。捜査に当たるのは飛奈である。誰が犯人なのか。
17日に放送された日本テレビ「パンダより恋が苦手な私たち」(土曜午後9時)の第2回は個人2.2%(世帯3.9%)。1月第3週の13位だった。10日に放送された初回は個人2.6%(世帯4.9%)。ともに低調だ。苦しいスタートを切った。
主演は生活情報誌の編集者・柴田一葉役の上白石萌歌(25)。さらに動物の求愛行動を研究する大学准教授・椎堂司役の生田斗真(41)である。
一葉はトップモデルの灰沢アリア(シシド・カフカ)を回答者とする恋愛相談コラムを担当することになった。ところがアリアは名前を貸すから勝手に書けという。困った一葉は椎堂の力を借り、動物から恋愛を学ぶコラムを自分で書き始める。
読者や一葉の先輩の悩みを椎堂の助言で解決する形になっている。ラブコメディだが、今のところ一葉と椎堂が恋に落ちる気配はないから、恋愛の部分が弱い。
恋愛離れの時代ということもあり、ラブコメはそもそも難しい。昨年の「じゃああんたが作ってみろよ」(TBS)はコメディ要素を分厚くして大成功を収めたが、このドラマは笑いもまだ少ない。それが出足の鈍かった理由だろう。
高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。前放送批評懇談会出版編集委員。
デイリー新潮編集部
