振袖に30万円もかけるなんて…「有名私大生・自慢の一人娘」がまさかの成人式拒否!〈世帯年収1,500万円〉50代夫婦が戸惑ったワケ
「振袖に30万円もかけるなんて……」そう口にしたのは、親ではなく娘でした。福岡で暮らす青木美智子さん(50歳・仮名)夫婦は、都内の有名私立大学に通う一人娘から「成人式には出ない」と告げられ、戸惑いを覚えたといいます。世帯年収は1,500万円。経済的な事情が理由ではありません。それでも、娘は「そのお金があるなら留学の足しにしたい」と話しました。“当たり前”だと思っていた成人式をめぐり、親と子の価値観の違いが浮き彫りになりました。
自慢の一人娘だったが…「成人式には出席しない」
福岡県で暮らす青木美智子さん(50歳・仮名)夫婦には、一人娘の詩子さん(20歳・仮名)がいます。娘は現在、東京都内の有名私立大学に通う大学生2年生です。
本来であれば、今年成人式を迎えるはずでした。しかし、昨年夏に娘が帰省した際、成人式には出席しないという意思を伝えられました。
娘は中学進学を機に地元を離れ、中高一貫校を経て大学へ進学しています。親にとっては、順調に進路を歩んできた娘でした。
成人式にかかる費用についても、美智子さんは当然のように「親が出すもの」だと考えていました。ところが、娘の考えは違っていました。
「中学から地元を離れたから、もう知り合いも少ないし、小学校のときはいじめられていたから正直、地元の人とは会いたくないの」「振袖にも興味がない。振袖に30万円も50万円もかけるなんて私からしたら考えられない。もし出してくれるのであれば留学の足しにしたい」
娘はそう率直に話したといいます。
「写真だけでも」と思ったが、考え直した理由
美智子さんは、着物はレンタルして、せめて写真だけでも残してはどうかと提案しました。しかし、娘はその案にも前向きではありませんでした。
「写真のためだけに振袖を着るのはもっと嫌。それに写真を撮ったら、親戚に勝手に見せられて『大人っぽくなった』とか品評会が始まるでしょ。昔からそういう雰囲気が嫌だったの」
娘の言葉に、美智子さんは戸惑いを覚えました。最初は「お金は出すからお前は心配するな」「成人式なんだから」と言っていた夫も娘の話を聞くうちにだんだん大人しくなり、最後には「そんなふうに感じていたとは知らなかった。すまなかった」と娘に謝りました。
このやり取りを経て、成人式への参加を見送ることを決めました。代わりに娘にはパールのネックレスとピアスのセットを贈ることにしました。
「成人式とは関係なく、娘に贈ろうと思っていたものなんです。パールは絶対必要になるから」と言って娘に渡しました。
「節目なんだから帰りなさい」と言えなくなった理由
成人式に出席しないという選択について、美智子さんはこう話します。
「『うちの子、成人式には帰ってこないんです』と言うと、だいたい驚かれます。『もったいない』『せっかくなのに』と言われることもありますね」
周囲からの反応に戸惑いながらも、美智子さんは少しずつ「家庭ごとに事情は違う」と割り切れるようになったといいます。
娘の詩子さんは、留学を控えています。その費用についても、「できる限り自分で出したい」と考えているそうです。
「教育費は、すごくかけてもらったから。留学費用は、少しでも自分で賄いたい」
そう話し、詩子さんは中学受験塾でのアルバイトを続けています。時給が比較的高く、責任もある仕事ですが、その分、学業との両立は簡単ではありません。
「バイトも忙しい時期だから、自分の成人式で帰っている暇なんてないの」
そう娘から聞いたとき、美智子さんは複雑な気持ちになったといいます。当初、美智子さんはこう考えていました。
「人様も大事だけれど、成人式は節目なんだから、帰ってきなさい」
しかし、学業に加えてアルバイトにも力を入れ、留学の準備を進める娘の姿を見ているうちに、その言葉を口にできなくなりました。
「自分の将来のために、今できることを一生懸命やっている。その姿を見たら、無理に帰ってこいとは言えませんでした」
娘自身も、地元に戻らない代わりに、別の形で節目を過ごす予定だと話していました。
「中高の同級生も、だいたい東京に来ているし。こっちでランチ会でもしようって言ってるの」
成人式当日に式典に出席しなくても、友人と会い、それぞれの近況を語り合う--詩子さんにとっては、それも一つの区切りでした。
4人に1人が「成人式にも同窓会にも出ていない」
株式会社アスカネットが行った調査によると、成人式関連(振袖・美容・写真撮影など)にかけた総費用は「10万〜20万円未満」が最も多く、次いで「5万〜10万円未満」「20万〜30万円未満」が続きました。多くの家庭が、成人式を迎えるにあたって10万〜30万円程度の支出を想定していることが分かります。
また、女性向け転職サイト「女の転職type」を運営する株式会社キャリアデザインセンターが働く女性337人を対象に行った「20歳について」のアンケートによると、成人式やその後の同窓会にいずれかに参加した人は75.3%でした。一方で、24.6%は「どちらも参加していない」と回答しており、4人に1人は成人式にも同窓会にも出ていないことが分かります。
参加者の約8割は「楽しかった」と回答していますが、逆に言えば2割は「楽しくなかった」と感じる人も。楽しくなかった理由として最も多かったのは、「親しい人や話せる人が少なかった」(41.5%)で、「形式的な会で面白くなかった」(37.7%)と続きました。
成人式の形は一つではない
美智子さんは、今の心境をこう話します。
「みんなと同じ形で祝わなくても、大人になること自体は変わらない。娘なりの考えを尊重できてよかったと思っています」
成人式は通過点の一つにすぎません。
どのような形で迎えるかは、家庭ごとに違っていてもいい--青木さん一家の選択は、そんな現実を静かに映し出しています。
[参考資料]
株式会社アスカネット「振袖と成人式写真」に関する調査
株式会社キャリアデザインセンター「20歳について」のアンケート

