世界2.7億ダウンロードの大ヒットゲーム『Sky 星を紡ぐ子どもたち』は、なぜ戦わないのか。やさしさを前提にした世界設計

2019年に配信開始されたソーシャルアドベンチャーゲーム『Sky 星を紡ぐ子どもたち』(以下、Sky)は、世界で2億7000万ダウンロードを記録しています。

攻撃や奪い合いがない“争わないゲーム”。プレイヤー同士が手を取り合い、静かな景色の中でつながるという体験が、多くの支持を集めています。8月にはアニメーション映画『Sky ふたつの灯火 - 前篇 -』も劇場公開され、作品の世界はさらに広がりを見せています。

今回は、『Sky』の世界づくりを担うコンセプトアーティストの田邊裕一朗さん、藤原未歩さんに、作品の魅力やデザインへの思いを伺い、学生向けの特別講義にも密着しました。

ゲームをしない層もハマる「争わないゲーム」の魅力


『Sky』は、戦いやスコア競争のない“争わないゲーム”。空を旅しながら出会った相手に光を分けたり、そっと手を差し出したりと、言葉に頼らず気持ちを伝え合える体験が特徴です。操作はシンプルで、ゲーム経験が少ない人でも入りやすい設計になっています。

『Sky』の核にあるのは、人と人がつながる体験。田邊さんは、その姿勢について次のように語ります。

田邊「ゲームデザイナー、アーティスト、エンジニア、マーケティング、Q&A、コミュニティサポート、そしてプレイヤーの皆さん。チーム全員が、人と人とのつながりを最も大事にしています。」


『Sky』を手がけるアメリカのゲームスタジオ 「thatgamecompany」(以下、TGC)は、『flOw』『風ノ旅ビト』などを制作。ゲームは人と人をつなぐ体験になり得るという考え方を一貫して重視してきました。この姿勢は『Sky』の世界にも色濃く反映されています。

すれ違うキャラクターはすべて実在する誰か。 言葉を使わず気持ちを通わせる体験が成立するよう、プレイヤーが自分を投影しやすい世界がつくられています。

こうしたつながりを成立させるために、プレイヤー自身がキャラクターに投影しやすいことが重視されています。スーパーヒーローのような自分とは違う誰かになるのではなく、自分に近い姿で世界に立つこと。その前提が、『Sky』のデザインを支える土台になっています。

アバターの「白い髪」に込められた優しい理由。細部まで追求した“誰も傷つかない”世界観



『Sky』は、ゲーム性だけでなく、作り込まれた美しいビジュアルにおいても高い評価を受けています。

ゲーム内のデザインは、一貫して“やさしさ”が前提にあります。地形や建物、生き物のシルエット。どれも角ばった形を避け、柔らかいラインで構成されています。ぶつかったときに痛そうに見えないこと、接触がストレスにならないこと、その視点でひとつひとつがデザインされています。

キャラクターの髪が白で統一されていることにも理由があります。

田邊「白は、どの人種にとっても共通する色なんです。世界中どこを見ても、白髪にならない人種はいません。だからこそ、誰が遊んでも自分を重ねられる髪色として白を選びました。」


肌の色や顔の造形もあえてシンプルを追求。性別や年齢を決めつけない余白を残すことで、プレイヤーの想像が入り込む余地を広げています。
キャラクターが子どもをベースにしているのも同じ意図です。年齢や経験の差を越えて、ただ遊びに戻れる存在。子どもに戻れる空間としてデザインされています。

田邊さんは、自身の背景に触れながらこう話します。

田邊「僕の両親は日本人ですが、僕自身は日本に住んだ経験はほとんどありません。国籍や人種の壁を感じながら育ってきました。だからこそ、Skyではその壁を少しでも取り除きたかったんです。」

“白髪にならない人種はいない”という発想から生まれた髪の色。人種や見た目の違いを越えて、自分を投影しやすくするためのデザインです。
誰にでも開かれた世界、どんな人でも自分を投影できるキャラクター。『Sky』の普遍的なデザインは、こうした考え方から生まれています。


また『Sky』では、プレイヤー自身の創作活動も大切な文化として育ってきました。公式がファンアートの発表や交流を支援する「Sky ArtFest」のような場を設けているのも、その表れです。藤原さんは、ファンアート文化の広がりについて触れます。

藤原「余白があるからこそ自由に解釈できる。Skyのファンアートが多様なのはデザインが受け皿になっているからだと思います。」

解釈の幅を大切にしたデザイン。その結果として、世界中で多様な創作が生まれているのが『Sky』の特徴です。

開発7年。「報われた」と感じた瞬間とは



7年にわたる開発期間のなかで、印象深い出来事があったと田邊さんは話します。

田邊「ハワイのおばあちゃんから手紙をいただいたんです。『私はゲームが得意ではないけれど、娘と孫と3人で遊んでいます。素晴らしいゲームを作ってくれてありがとう』と。三世代で並んでプレイしている写真も添えられていました。」

“争わないゲーム”がどのように受け取られるのか。そんな不安を抱えながらの制作期間だったといいます。その一通の手紙で、「報われた」と感じたと振り返ります。

【講義密着】アイデアは広げて育てるもの。Sky流“発想の作り方”


TGCは、「ポジティブな感情体験を届ける作品づくり」を理念とし、その価値観を若い世代へ伝えるため、講義活動に力を入れています。今回の学校法人 岩崎学園 横浜デジタルアーツ専門学校(以下、横浜デジタルアーツ専門学校)での講義もその一環です。


今回、横浜デジタルアーツ専門学校で行われた特別講義では、作品づくりに欠かせない「アイデアを生み出す力」がテーマになりました。プロのクリエイターであってもアイデア出しは決して楽ではないと話します。

「アイデアは簡単には湧きません。でも、引き出しの数は練習で増やせます」

その具体的な方法として紹介されたのが、発想を拡張する「連想マップ法」。ひとつの言葉を真ん中に置き、そこから思いついた言葉を枝のように広げていく手法です。


短い講義時間でも、学生たちは次々にキーワードを書き出し、発想の幅が一気に広がっていく様子が見られました。


講義の締めくくりには、学生がその場で出した「地底」「冬」「おにぎり」という独創的なお題に合わせて、即興でキャラクターを描き上げるライブドローイングが実施されました。
背景が立ち上がり、線が重なり、キャラクターの姿が現れていくたび、教室に小さなざわめきが生まれました。

完成したデザイン画は学校へ寄贈され、学生の創造性を刺激する大切な資料として活用されていく予定です。


最後に藤原さんは、ものづくりを志す学生へ向けてメッセージを残しました。

藤原「今は、SNSなどで才能が数字で測られているように感じてしまいやすい時代。でも、それで価値が決まるわけではありません。

“絵が上手いこと”自体は、間違いなく大きな強みですし、その背景には途方もない努力があります。でも、絵が好きで学び始めたばかりの人にも、表現できること・挑戦できることはたくさんあると思っています。

自分の才能を止めないでほしい。そのためにもさまざまなアイデア発想法を知って、試してほしいと思っています」

藤原さん自身、美術の専門教育を受けていたわけではありません。それでも、『Sky』が好きで描き続けたファンアートが、いまのキャリアにつながっています。そうした経験があるからこそ、「数字だけで自分を判断しないでほしい」という言葉には、静かな説得力を感じます。

Skyが大切にしている“やさしいつながり”と同じように、創作にもそれぞれのペースと広がりがある。そんな前向きな空気が教室に残る講義でした。

Skyが積み重ねてきた“やさしさ”のあり方


『Sky』のデザインには、キャラクターや空間だけでなく、プレイヤー同士がどう関わり合うかまで含めた“やさしさ”があります。争わず、奪わず、ただそばに存在できる世界。その価値観は、講義で語られた創作の姿勢とも深くつながっていました。

『Sky』が大切にしてきた、優しい世界をつくるという考え方は、学生たちにとっても、自分の表現を見つめ直す小さな指針になったはずです。

Sky 星を紡ぐ子どもたち

PR企画: thatgamecompany × ライブドアニュース]