“名脇役”坂口涼太郎のしなやかな演技力 『愛の、がっこう。』『ちはやふる』など大活躍
あの作品でも、この作品でも、いいアジを出している俳優がいる――。
参考:『ちはやふる-めぐり-』第4話に“ヒョロくん”坂口涼太郎登場 「北央の魂、永遠なり!」
放送中のドラマ『愛の、がっこう。』(フジテレビ系)は女性教師とホストの特別な関係を描くもので、この男女の動向から目が離せない。けれども個人的には、“にぎやかしキャラ”ともいえる竹千代の一挙手一投足を目で追ってしまう。演じているのは坂口涼太郎。そう、あの作品でも、この作品でも、いいアジを出している俳優のひとりである。
本作は、非常にマジメな性格の高校教師・小川愛実(木村文乃)がナンバーワンホストを目指すカヲル/鷹森大雅(ラウール)と出会い、互いに惹かれ合っていくさまを描くラブストーリーだ。物語はいよいよ後半戦へ。“禁断の関係”とも呼べるふたりの特別な関係性は、これからどのように変化し、どんなクライマックスを迎えることになるのだろうか。
この物語の中で坂口が演じている竹千代は、「THE JOKER」で勤務するカヲルの後輩ホストだ。年齢的にはカヲルよりも上だが業界歴的には後輩で、ふたりは寮のルームメイトでもある。日常のふたりのやり取りは、じつにまぶしい。竹千代はカヲルを心から慕っているようで、カヲルもカヲルで竹千代の存在を大切に思っているのがよく分かる。微笑ましく、つい目を細めてしまう。このふたりもまた特別な関係なのだ。
俳優・坂口涼太郎といえば、映画『ちはやふる』シリーズ(2016年~2018年)の“ヒョロくん”こと木梨浩役でその存在を認識した方が多いのではないだろうか。再現度の高さも大きな話題になったものだし、力演も光っていた。いや、主人公らと対峙することも多かった朝ドラ『らんまん』(2023年度前期/NHK総合)の伸治役だろうか。彼はそれ以前に3作も「朝ドラ」に出演していて、4作目である『らんまん』でバイプレイヤーとしての地位を決定的なものにした印象がある。それからそうだ、『HiGH&LOW THE WORST』(2019年~2022年)のサバカン役も捨てがたい。
■坂口涼太郎が5時間におよぶ大作『三人吉三廓初買』で証明した演技力 演劇を観に劇場へと通う人々にとっても、坂口は特別な存在だ。
私がステージ上の坂口を目にしたのは、2023年に再々演された木ノ下歌舞伎の『勧進帳』がはじめてのことだった。あのときの衝撃と感動はいまでも鮮明に覚えている。鋭く伸びやかな声、指の先まで洗練された身のこなし。最前列でそのパフォーマンスに触れて、思わず見惚れた。それまで坂口の出演する舞台を見逃していたことを後悔したほどだ。
もちろん、それからちょうど1年後に上演された木ノ下歌舞伎の5時間におよぶ大作『三人吉三廓初買』には駆けつけた。やはり素晴らしかった。しかも彼は体調不良により降板した俳優に代わって急きょ参加した立場だったのだが、物語の中心に立ち、手練れの演技者たちとともに美しく壮大な作品をつくり上げていた。つくり手たちの坂口に対する信頼度の高さがうかがえたものだし、いち観客としても彼の安定感あるパフォーマンスへの期待が確信に変わったものだ。俳優・坂口涼太郎とは、各作品に圧倒的な強度を与えてみせる俳優である。それも、じつに軽やかに。
さて、彼が“いいアジ”を出している『愛の、がっこう。』に話を戻そう。坂口の演じる竹千代は底抜けに明るい人物だが、人間的にも非常にできた存在だ。たんに人間力の優れた人物なのか、はたまたこのような人間に至る経験を過去にしているのか。劇中でも少し明かされているが、後者が強いのだろう。その軽快で深みのある言動に触れるたび、竹千代というキャラクターの背景が見えてくる。すると自然と人物像の奥行きが生まれ、作品が深みを増すことにつながる。本作への坂口の貢献度は極めて大きい。
カヲルと竹千代が特別な関係だと先述したが、これはそれぞれの役を演じるラウールと坂口においてもいえること。ラウールはアイドルとしてキャリアを重ね、昨年は主演映画『赤羽骨子のボディガード』(2024年)も公開されたが、俳優としての経験が豊富だとはまだいえない。カヲルは個性的で特異なキャラクターなだけに、周りに頼れる存在がいないと浮いてしまったり、上滑りしてしまうのではないかと思う。そういう難しい役どころだ。
そんな彼の手を取り、ときに肩を組むのが、“竹千代=坂口涼太郎”なのである(もちろん、主演の木村文乃もそうだ)。坂口のようなプレイヤーの存在があってこそ、“カヲル=ラウール”は成立し、『愛の、がっこう。』は成立しているのではないだろうか。じつに頼もしい存在である。脇から支えるポジションなのだが、その美しいパフォーマンスをどうしても目で追ってしまうのだ。(文=折田侑駿)

