物語に「魔法」を登場させると、人間の力や自然の物理法則では難しい描写や展開を生むことができます。一方で、魔法は不可能を可能にする能力のため、「何でもあり」にしてしまうと物語のかじ取りが難しくなります。物語に魔法を登場させるとき何に気をつけてどのようなルールを定めるべきなのか、New York Timesの元編集者で作家のK・J・デラントニア氏が語っています。

Magic to Serve, Not Solve, a Story: KJ Dell’Antonia on Magical Rules in Literature ‹ Literary Hub

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デラントニア氏は自身の作品を見返して改訂していくプロセスで、自らの作ったプロットの穴やキャラクターの振るまいに対し、頭を抱えるようなケースを多く経験しているそうです。デラントニア氏はその時の感覚を「改稿の最中に、この改稿によって私は大きなダメージを受けると確信していました。自分で作りだした作品や設定が、じわじわとした痛みを伴いながら私を攻撃してくる感覚がありました」と表現しています。

さらに、デラントニア氏が2023年9月に出版した「Playing the Witch Card」という作品では、ある女性が故郷の町に伝わる魔法と向き合って人生を見つめ直す姿が描かれますが、そこで扱われる魔法こそ、改訂のプロセスをよりひどいものにする要因であったとのこと。デラントニア氏の考えた魔法は内部ロジックを備えたもので、主人公のフレアにとっても物語にとっても役に立つものでしたが、初めはうまくいかずに「魔法により、物語の全てを台無しにしてしまいました」とデラントニア氏は語っています。



自身の経験も受けて、デラントニア氏は「文学の魔法にルールが1つあるとすれば、それは物語を解決するのではなく、物語に役立つものでなければならないということです」と述べています。そのためには魔法に「限界」を設定する必要があります。限界という名のルールは、物語上で越える壁として主人公たちの邪魔をします。仮に、このルールが主人公ではなく作者の邪魔をしてきた場合には、間違ったルールを設定していると考えられます。

限界やルールを設定することは、そのルールに従うキャラクターがどのように生きてきたかの道のりを明確にし、今後どういう選択を採っていくかを確定的にします。デラントニア氏は「ルールや限界、法則というものは、人生と物語を生み出す境界線です」と表現しています。



また、デラントニア氏は作家が行うべきはキャラクターを強引に動かすことではなく、キャラクターが動くための道順を作ることだと考えているそうです。「作家の仕事は、私たちの登場人物が別のことをするように強制するルールを作ることです。何かをすることが可能であるだけでなく、避けられない選択をするようにルール作りをすることです」と生き生きとしたキャラクターを描くコツを述べています。

最終的にデラントニア氏は、自らの失敗を「ルールを自分が作ったという事実だけではなく、なぜそのルールを作ったのかを忘れていたため、主人公と一緒に私も魔法のルールに直面して困っていたことです」と語っています。自分が作ったルールのせいで自分が追い詰められたとき、魔法のルールについて改めて問いかけることが重要です。