名波浩&前田遼一の両コーチは新生森保Jに何をもたらすのか。“個を見る眼”と“フィニッシュワークの改善”に期待
下田崇GKコーチ、主にディフェンスを担当する斉藤俊秀コーチは残るが、新任の2人については期待も不安もある。特に東京五輪世代の監督代行を担うなど、森保監督の参謀として攻守全般を現場指導した横内氏の役割は大きかった。
名波氏は現役時代、日本代表の10番として98年のフランスW杯に出場し、当時セリエAだったヴェネツィアでもプレーするなど、選手としての豊富な経験が買われた部分もあるかもしれない。しかし、やはり古巣の磐田で6シーズン、松本山雅FCで2シーズン、監督を務めるなど、指導者としての経験も豊富にある。
2014年にJ2だった磐田の監督に途中就任すると、2年目でJ1昇格。17年には磐田を6位に導いた。J1で4シーズン目となった19年には成績不振で途中退任、磐田は最下位で降格している。松本には21年に途中就任、J2の下位に低迷していた松本を引き上げることができず、最下位でJ3に降格。1年でのJ2復帰を目ざした22年シーズンは4位に終わり、名波体制は1年半で終わりを告げた。
こうして振り返ると、監督として大きな成功を成し遂げたとは言い難い。しかしながら、2つのチームで数多くの選手を指導者目線で見て来ており、小林祐希(北海道コンサドーレ札幌)をはじめ、後に日本代表となる川辺駿(グラスホッパー)や大南拓磨(川崎フロンターレ)、伊藤洋輝(シュツットガルト)なども指導している。
そして記憶に新しいところでは、松本で横山歩夢をFWの主力に抜擢。シーズン11得点を記録した横山は今冬、J1のサガン鳥栖に移籍した。今年5月に行なわれるU-20W杯のエース候補としても期待される横山の成長は、名波氏の存在無くして語れない。
そうした個人を見る目に疑いの余地はなく、監督としても選手の状況判断など、ディテールまで目が行き届く視野というのはA代表の指導でも必ず活かされるだろう。
あくまで代表コーチであり、チーム全体を統率するのは森保監督であることを考えれば、前向きに考えることもできる。また欧州組が主軸になるA代表で、選手たちに時に厳しく接することもできるキャラクターであることは間違いない。
何より日本代表に対する想いというのは監督になってからも語っていたところで、そうした熱量も加えてくれるのではないか。
前田氏は磐田で14シーズン、さらにFC東京と岐阜でFWとしてプレー。2009年と10年には2年連続でJ1得点王に輝いている。W杯の出場こそ叶わなかったが、A代表として33試合を経験しており、本田圭佑や香川真司といった当時の欧州組とも多く接してきた。
磐田時代は寡黙な選手として知られ、コメントが記事になることもあまりなかった。しかし、実はかなり頭脳明晰で、サッカーIQが高いストライカーだった。仲間からラストパスを引き出すポジショニングが抜群で、ゴール前の状況を事細かに説明してくれたことが記憶に残っている。
2011年のアジアカップで優勝を決めた翌日、代表チームの計らいで30分ほど話を聞く機会を得たが、若い時にはアンダーカテゴリーの代表に選ばれていても、海外や欧州と言ったステージをあまり意識したことがなく、後になって「時間を巻き戻せるなら巻き戻したい」という想いがあったことを明かしてくれた。
