あくまで代表コーチであり、チーム全体を統率するのは森保監督であることを考えれば、前向きに考えることもできる。また欧州組が主軸になるA代表で、選手たちに時に厳しく接することもできるキャラクターであることは間違いない。

 何より日本代表に対する想いというのは監督になってからも語っていたところで、そうした熱量も加えてくれるのではないか。
 
 前田氏は磐田で14シーズン、さらにFC東京と岐阜でFWとしてプレー。2009年と10年には2年連続でJ1得点王に輝いている。W杯の出場こそ叶わなかったが、A代表として33試合を経験しており、本田圭佑や香川真司といった当時の欧州組とも多く接してきた。

 磐田時代は寡黙な選手として知られ、コメントが記事になることもあまりなかった。しかし、実はかなり頭脳明晰で、サッカーIQが高いストライカーだった。仲間からラストパスを引き出すポジショニングが抜群で、ゴール前の状況を事細かに説明してくれたことが記憶に残っている。

 2011年のアジアカップで優勝を決めた翌日、代表チームの計らいで30分ほど話を聞く機会を得たが、若い時にはアンダーカテゴリーの代表に選ばれていても、海外や欧州と言ったステージをあまり意識したことがなく、後になって「時間を巻き戻せるなら巻き戻したい」という想いがあったことを明かしてくれた。

 実際、その年にイングランドの当時2部だったウェストハムからオファーを受けて渡英したが、労働ビザがネックとなって欧州挑戦を断念している。

 そうした想いは指導者になっても活きているはず。まだトップカテゴリーでの監督経験は無いが、磐田U-18のコーチ、監督を務め、高校2年生ながらトップ昇格したMF後藤啓介にも大きな影響を与えている。

 上野氏は主に攻撃のフィニッシュのところやセットプレーの指示も担当していたが、前田氏が攻撃の最後のところにプラスをもたらしてくれることは期待できる。
 
 とにかく代表チームという特殊な環境だけに、始まってみなければ分からない点も多いが、森保監督もそこは承知で、進化のための新しいものを取り入れていきたい意志の表われでもある。

 コーチの功績というのはメディア側にも見えにくく、勝っても負けても監督にフォーカスが行くものだが、現代サッカーにおいてコーチの果たす役割は大きい。

 チーム立ち上げから当面は公開練習も多くなるはずなので、そこで改めて名波氏や前田氏の指導、振る舞いなどをチェックしていきたい。

取材・文●河治良幸

【PHOTO】日本代表の歴代ユニホームを厳選写真で振り返り!