※この記事は2011年10月27日にBLOGOSで公開されたものです

 20日に行われた小沢一郎・民主党元代表の会見で、記者同士が"場外乱闘"になったことが大きな話題となっている。主催団体の上杉隆氏が、21日に読売新聞に抗議。読売も27日にでかでかと反論記事を載せた。日本最大の新聞社と、著名なジャーナリストの抗争は大きな火種を残した格好になった。【写真・文:安藤健二(BLOGOS編集部)】

■ 読売記者に「なめてんのか、この野郎!」



 これは、読売新聞社会部の恒次(つねつぐ)徹記者が、小沢氏に対して政治資金問題を何度も繰り返し追及したことに、会見を主催した自由報道協会の暫定代表でフリー記者の上杉隆氏が激怒。質問は一人一つまでという決まりを守らなかったことに、「あんたルール違反してるんだよ!」と大声で注意した。その後は、他の記者の質問に移ったが、会見が終わった後にバトルが再燃したのだ。

 同協会の発起人の一人である岩上安見氏も加わり、「なんであんな質問をしたのか!解答をさえぎってたら質問にならないでしょ」と抗議した。恒次記者が「通常の会見でよくあること」と抗弁したことで大騒ぎになった。3人は廊下でのやり取りが続いた後、控え室に移動して言い合いとなった。恒次記者の煮え切らない態度に、上杉氏が「なめてんのか、この野郎!」と声を荒げる場面もあった。この模様は約25分間に渡ってネット中継されている。

YouTubeにアップされた騒動の様子







■ 読売と自由報道協会がバトル



 上杉隆氏は翌21日、自由報道協会のHPに「自由報道協会主催記者会見でのルール違反について」とする恒次記者への抗議文をアップした。
 貴殿は2011年10月20日に行なわれた当会主催記者会見の場において、記者会見運用上のルールを無視し、司会者による再三の注意にもかかわらず発言を続け、多くの記者が参加する記者会見の進行を妨げました。これは誠に遺憾であり、下記の通り、抗議します。

一、 司会者の指示に従わなかったことに対して
二、 ゲストスピーカーの言葉を遮って発言を続けたことに対して

 今後、当会主催の記者会見に参加される場合には、ルールの順守を厳にお願い申し上げます。
 一方の当事者である読売新聞側は沈黙を守っていたが、27日、1ページをほぼ占拠するほどの大特集で反撃に出た。「当然すべき取材」という記事の中で、恒次記者のコメントが以下のように書かれている。
「会見者が質問をはぐらかした場合に、そのことを指摘できなければ、追及にならない。司会の指示を振り切らなければならないことはある。ルール違反と過剰に騒ぐことは、会見者を追及から守ることにしかならない。ジャーナリストがなぜ、そのようなことをするのか理解に苦しむ」
 同僚の渡辺晋記者も以下のように援護射撃をしている。
恒次記者の質問は、当然すべき取材だったと言える。虚偽記入が国民の判断を誤らせることになるため、実質的犯罪と言えるのではないか、とただす恒次記者に対し、元代表はきちんと答えようとしなかった。そのことをさらに追及しようとした時、司会者に制止されたのだ。これを振り切らないと、元代表の見解は引き出せない。
 なお、上杉氏は恒次記者に「暴言」を浴びせたことの責任を取るとして、暫定代表を辞める意向を表明。自由報道協会に対して辞表を提出したが、同協会は受理しなかった。

■ バトルの裏にある「記者クラブ問題」



 もともと今回の騒動の根っこには、会見を主催した自由報道協会が、既存メディアの情報独占に対して反旗を翻して誕生したということがある。というのも、記者クラブが主催する会見の多くは、未だにフリー記者の参加が許されていないからだ。今回の小沢会見には大手マスコミも大挙して参加したが、同協会の設立趣旨はフリー記者の参入障壁を下げることにあった。今年1月の設立時に、上杉氏はダイヤモンドオンラインに以下のように寄稿している。
 ついに「自由な言論の場」をつくることにした。

 昨夜、フェアな報道の場を提供するための非営利団体「自由報道協会」(仮称)を立ち上げることを宣言した。

 戦後一貫して、一部のメディアのみが特権の上に胡坐をかき、政府の公的な情報を独占するという歪んだ社会構造にあった日本。それは端的に記者クラブの存在によるものではあったが、もはやそうした欺瞞にも限界が訪れたようだ。

 長年、フリーランス、海外メディア、雑誌、最近では、インターネット等の記者たちが交渉を重ね、国民の知る権利を満たすメディアシステムを構築しよう、と呼びかけてきたのだが、伝統的な新聞・テレビなどのマスメディアは結局これを拒否してきた。

 国民の税金で開催されている政府の公的な記者会見を勝手に占拠し、世界に恥ずべくシステムをいまだ続けている「記者クラブ」に、もはや自浄作用はない。よって、筆者は多くの有志とともに、「自由な言論の場」を作り、記者会見を主催することにしたのだ。それが「自由報道協会」である。
 上杉氏らは、フリー記者の出席を認めない官公庁などの記者クラブの閉鎖性を常々批判してきた。そこで、あらゆる人間に会見を開放する「自由報道協会」を新世代の記者クラブとして立ち上げることになったわけだ。

 今回、上杉氏らは協会のルールに違反した読売記者に対して、わざわざネット中継するカメラの前で怒りを露わにした(控え室までカメラを招き入れている)。彼らの行動には、既存マスコミに対するカウンターとして、同協会の立場を鮮明にしたいという思いが透けて見える。

小沢氏は既存の記者クラブや大手マスコミの会見要請には滅多に応じない一方で、ニコニコ動画などのネットメディアへの出演や、自由報道協会の会見には積極的に応じてきた。政治献金問題を抱える大物政治家だけに、自由報道協会にとって「小沢氏の会見を主催できる」という価値は非常に高い。彼の会見が引き金となり、新旧メディアの対立が一気に浮上したのは、ある意味で当然の帰結かもしれない。