「iPhoneが1台も売れなくても黒字になる」アップルが7兆円の営業利益を出せる本当の理由

■Apple、Facebook、Amazonのビジネスモデルの違い
皆さんはGAFAという単語をご存じですか?
世界を代表するトップIT企業、Google、Apple、Facebook、Amazonの頭文字を取ってGAFAと呼ばれています。様々なメディアでも取り上げられており、また、日常的にも各社のサービスを利用する機会が多いため、GAFAの商品やサービス自体はご存じの方も少なくないかと思います。
それでは、みなさんは各社がどのようなビジネスを行い収益を生み出しているかご存じですか?
iPhoneやMac等の商品名や、Facebook、Instagramと言ったサービス名は聞いたことがあるかもしれませんが、各社がどのように収益を生み出しているかは、意外と知らない方も多いはずです。
今回は、Apple、Facebook、Amazonの決算数値の比較から、各社のビジネスモデルの違いを解説すると共に、時価総額で世界トップクラスのAppleの最新決算を解説します。
■2000年度のAppleの決算数値はどれか
それではクイズです。今から決算数値から企業のビジネスを予想し、どれがどの企業かを当ててみてください。
・Apple
iPhone、Mac、iPadでお馴染みのAppleです。GAFAの中でもメーカーとしての色が最も強い企業であり、収益の約8割が製品の販売収入で成り立っています。
FacebookやInstagramといった、SNSプラットフォームを運営するFacebook。収益の9割以上が広告収入で成り立ってます。
・Amazon
ECプラットフォームを運営するAmazon。売上の半分以上がECプラットフォームからの売上で成り立っており、GAFAの中でも小売業としての色が強い企業です。
それでは問題です。2020年度のAppleの決算数値は?〜?のうちどれでしょう? 各社のビジネスなどをイメージしながら、どのような数字になるのかをぜひ考えてみてください。

■7兆円の利益を生み出しているApple
それでは正解の発表です。正解は選択肢?がAppleの決算数値でした。世界のトップ企業である3社ですが、展開している事業は全く異なります。それぞれの事業の違いを決算数値から解説していきます。

まずはAppleです。Appleは大きく2つのセグメントで構成されています。iPhoneやMac、iPad等の製品を販売するプロダクトセグメントと、App Storeや各種のサブスクリプションサービスを販売するサービスセグメントです。
3社の中でも最も原価率が大きい特徴があり、原価の内訳はiPhoneやMac等の製品の原価を中心に構成されています。その一方で営業利益率は24%とメーカーの中でもトップレベルの収益性の高さです。2020年9月期の営業利益はなんと662億ドル(約7兆円)でした。
この高い収益性を生み出している背景には、企画、製造から販売までを自社で賄う垂直統合型のビジネスモデルと、販売した後も収益を生み続ける仕組みにあります。
Appleは製造の全工程を自社の管理下に置いています。その結果、製品の品質を高いレベルで維持するのみならず、各生産工程で生じる多額の中間コストを削減しています。また、製品を販売して終わりではなく、販売後もサービスを提供し続けることで1人当たりの売上高を高めています。その結果、営業利益率24%という製造業の中でもトップレベルの収益性を実現させています。

■Facebookの利益率はGAFAのなかでトップクラス
次にFacebookの決算数値を見てみましょう。Facebookの売上高の大半を占めるのは広告収入です。Facebookは世界最大規模のSNSを運営しており、SNS上にいるユーザーに向けて、高い精度での広告を発信したい企業から広告収入を得ています。
Facebookのコスト構造を見てみると、非常に低い原価率が読み取れます。Facebookは自社で製品を製造したり、商品を仕入れて販売するビジネスではなく、SNSプラットフォームを運営し広告収入を得るビジネスです。
従って、SNSの運営費用が主な原価となり、売上高が増加しても原価はそこまで大きくなりにくい傾向があります。その結果、GAFAの中でもトップクラスの利益率の高さとなっています。

■Amazonは利益よりも現金重視
最後はAmazonの決算数値についてみていきましょう。Amazonの売上高の内訳を見ると、ECやAWS、サブスクリプションと様々な収益源を有していることが読み取れます。それでも、全体の約7割はEC事業から収益を生み出しており、損益計算書は小売業に近い形となっています。
Amazonは自社で商品を仕入れてユーザーに販売するOnline stores事業と、外部の第三者がAmazonに出品し手数料を徴収するTherd party事業の2つのEC事業を展開しています。外部の第三者から手数料を取るThird party事業は、Amazonが商品を仕入れているわけではないため、原価率は大きくなりにくいビジネスです。
一方で、自社で商品を仕入れて販売するOnline stores事業は、商品の仕入コストが原価に計上されるため原価率が大きくなりやすい傾向があります。売上の約半分がOnline stores事業の売上で構成されていることもあり、損益計算書全体として原価率が大きい数値となっています。
また、自社で倉庫や物流設備等の多額の設備を有していることからも、物流コストや減価償却費が多額に発生し、その結果営業利益率は6%程度となっています。Amazonは従来から、利益よりも現金を重視する企業であり、利益率はGAFAの中でも最も小さくなっています。

■5G対応でiPhoneの売上が大きく増加
それでは、ここからは本日のテーマ企業であるAppleの2021年6月期の最新決算を深堀りして見ていきます。
Appleの売上高は、上述の通りプロダクト事業とサービス事業の2つの事業セグメントで分けられて開示されています。プロダクト事業に関しては、さらに、iPhone、Wearables、Mac、iPadと分けられています。

2021年6月期の決算を見ると、iPhoneの売上高が大きく増加し、全体の売上高を引き上げています。背景にあるのは、Apple初の5G対応機種である「iPhone12」シリーズの発売です。
5G対応への高い需要が存在し、iPhoneの買い替えのみならず、他社デバイスからiPhoneへの移行の動きも強く、その結果としてiPhoneの売上高が大きく上昇しています。

また、Appleのサービス事業も2021年6月期決算にて過去最高益を更新しています。近年右肩上がりに増加しているサービス事業ですが、サービス事業の成長に伴い、Appleの粗利(Gross margin)と営業利益(Operating income)も年々向上しています。

■iPhoneが1台も売れなくても黒字になる
Appleはプロダクト事業とサービス事業の2つのセグメントの財務データを開示しており、それぞれの数値を比較すると収益性の違いがはっきりとわかります。
iPhoneやMacのような製品を製造して販売するプロダクト事業は、ビジネスの特性上、どうしても原価率が一定額発生してしまうため利益率は高くなりにくいです。一方で、サービス事業はApp storeやApple Careといった無形の商材が中心となり、利用者が増えるに連れて収益性が大きく向上します。

近年大きく拡大しているサービス事業ですが、今期より、ついにサービス事業の収益のみでも黒字となる規模まで成長しています。つまり主力商品であるiPhoneが1台も売れなくても黒字になるということです。
サービス事業では、近年ゲームやフィットネス等の多数の課金サービスを取り揃え、複数のサービスを利用するユーザーが大きく増加しています。このように、ユーザーの囲い込みにも成功しており、今後もサービス事業はさらに拡大していくと思われます。

■順調に見えるAppleにも懸念点が
以上、GAFAの決算数値の比較からの、Appleの最新決算の解説でした。
一見、順調に見えるAppleですが、懸念点も存在します。新型のiPhone等が発売される期は売上高が大きくなるなど業績の振れ幅が大きい企業です。また、スマートフォン市場は年々競争が激しくなっているのみならず、半導体不足の懸念もあり今後も安定して収益を生み続けられるとは限りません。
そのような意味でも、通年を通して安定的に売上高を生み出すサービス事業は、引き続き成長するために非常に重要な位置付けとなっています。
今後、このサービス事業がどこまで拡大していくのかが、Appleの決算を見る際に非常に重要となります。
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福代 和也(ふくよ・かずや)
大手町のランダムウォーカー、Funda 代表取締役
学習意欲の高い個人や企業研修向けに、数字でビジネスを考える思考を身に付けるWEBアプリを提供しています。著書『世界一楽しい決算書の読み方』は発売開始1年間で20万部突破。TwitterやInstagramにて「#会計クイズ」を発信中。SNSトータルフォロワー数は約15万人。https://www.funda.jp
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(大手町のランダムウォーカー、Funda 代表取締役 福代 和也)
