キャッシュレスで借金地獄の可能性。後払いサービスの落とし穴

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 キャッシュレス決済サービスと、それに付随するアプリの進化が目覚ましい。一言で言えば「スーパーアプリ化」しているのだ。たとえばPayPayは、今の時点でQRコード決済だけでなくタクシーを手配する機能も有している。もはやPayPayは「キャッシュレス決済のアプリ」とは呼べなくなっている、ということだ。さらに今年から個人ローンやビジネスローン、リボ払い等の金融サービスもPayPay内に実装するとしている。

 しかしこれは、消費者にとって本当に喜ばしいことなのだろうか? 思わぬ落とし穴もある。

◆スーパーアプリが目指す「後払いサービスの確立」

 何かしらの分野で大成功したアプリが「万屋」のようになっていくのは、PayPayだけの話ではない。世界共通の傾向とも言える。インドネシアの『Go-Jek』は、もともとはオンラインでバイクタクシーを手配するアプリだった。しかし独自のキャッシュレス決済銘柄『Go-Pay』をローンチしたあたりから、Go-Jekは突然変異とも言える成長を遂げる。Go-Payを基軸に、公共料金支払いサービス『Go-Bills』、動画配信サービス『Go-Play』やゲーム配信プラットフォーム『Go-Games』など、著しい多角化を同一アプリ内で実現させた。

 また、Go-Jekに限らずインドネシアでキャッシュレス決済サービスを提供するアプリは「後払いサービスの確立」を目指している。これは銀行口座の保有率が50%程度に過ぎないインドネシアでは、極めて重要な問題だ。だが、後払いサービスが消費者から要望される国はインドネシアだけではない。

 先日起きた後払いプラットフォーム『Paidy』の一件が記憶に新しい。これはオンライン通販で利用できるもので、新規会員登録の際の審査は一切ない。が、この簡単さゆえに、詐欺に悪用しようとする行為が発生したのだ。

◆中国人が利用する「花唄」とは

 いずれにせよ、このような方向性のオンライン金融サービスは今後増えることはあっても、減ることはないだろう。スマホを使った消費者金融サービスも、国外では既に確立している。ユーザーが手軽に融資を利用できれば、問題になるのは「審査の手間」だ。その審査をどうやって省くか、ということすらも思案されている。

 中国のスーパーアプリ『Alipay』に『花唄』というサービスがある。これはクレジットカードのように分割払いもできる個人向け融資機能。Alipayのキャッシュレス決済残高が足りない場合、花唄からそれを即座に調達できるという仕組みだ。この花唄が、Alipay加盟店の世界的拡大につながったことは否定できない。同時にそれは、「人類全員がクレジットカードを持つ未来」につながる。

◆日常の無駄遣いが巨額負債に?

 やや飛躍した表現で恐縮だが、現代に生きるヒトであれば誰しもがクレジットカードを、しかも審査不要で入手できる時代が到来しかけているということだ。Alipayの場合は個人に対して信用スコアを設定している。要はその人の返済能力を数値化する仕組みだが、これがあれば新しい融資を申請する際の審査を簡略化(または完全省略)することができる。

 だが事前の信用スコアはどうあれ、中には借金を返せない人も出てくる。しかもそれは、自分の所得額を超えた大型の買い物をしてしまった結果……ではなく、日常の「数百〜数千円の散財」が積もり積もって大きな負債になるというパターンも考えられる。

 スマホで手軽に決済ができるからこその落とし穴とも言えるが、従来の審査ではサブプライム(低信用)と見なされた人に融資枠を与えるという現象も当然ながら発生する。

◆知らぬ間に消費者金融を利用してしまう!?

 PayPayを始めとした日本のキャッシュレス決済アプリにオンライン融資機能が実装されるのは、もはや時間の問題だ。キャッシュレス決済自体が社会インフラとなる中、ユーザーは自分が今利用しているアプリの機能や仕組みについて、最低限のことは知っておく必要がある。でなければ「自覚のないうちに消費者金融機能を使っていた」ということも起こり得る。

 スーパーアプリの後払い機能を「消費者金融」と表現すると、反発する人が出てくるかもしれない。だが、「後払い」とは借金以外の何ものでもない。支払いが遅れれば遅延損害金も発生するし、利息も加算されていく。クレジットカードがカードレスになったに過ぎない。それを理解しなければ、スーパーアプリの手軽さや利便性に振り回されて思わぬ負債を抱えてしまう可能性もある。<文/澤田真一>

【澤田真一】
ノンフィクション作家、Webライター。1984年10月11日生。東南アジア経済情報、最新テクノロジー、ガジェット関連記事を各メディアで執筆。ブログ『たまには澤田もエンターテイナー』