ジムトレと自宅トレ、どっちが効率的か 「自宅は意味がない」は陥りやすい罠?
連載「骨格筋評論家・バズーカ岡田の『最強の筋肉ゼミ』10限目」
「THE ANSWER」の連載「骨格筋評論家・バズーカ岡田の『最強の筋肉ゼミ』」。現役ボディビルダーであり、「バズーカ岡田」の異名でメディアでも活躍する岡田隆氏(日体大准教授)が日本の男女の“ボディメイクの悩み”に熱くお答えする。10限目のお題は「ジムトレと自宅トレ、どっちが効率的か問題」について。
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Q.鍛えたいという友人をジムに誘いましたが「忙しいからとりあえず自重トレーニングから始める」と断られました。ジムで鍛えた方が良くないですか?
筋肥大だけを考えれば、自宅でのトレーニングよりもジムの方が、圧倒的に効率良く鍛えられます。
例えば大胸筋を鍛える場合、自宅トレならばプッシュアップ、ジムであればベンチプレスをします。この2種目の効果を比較した時、正直、ベンチプレスと同等の効果をプッシュアップに求めるのは難しいです。
プッシュアップで、ベンチプレスに近い効果を出そうとしたら、「限界までの回数×3セット」をこなすのが絶対条件です。1セット55回が限界であれば、それを3セット繰り返す。しかし、これはかなり、精神的につらい。私でも、キツイ。心の中で50回というキリの良い回数で終わるようにしてしまいます。でも、筋トレは限界がきてからの苦しい4回、5回を乗り越えられるか否かが、仕上りの明暗を分けます。この「最後の数回」をいかに大切にできるか。妥協すれば、最大限の効果は得られず、その回数までの努力は水の泡です。
一方、ベンチプレスであれば、10回でつぶれる重量設定ができるので、上記の方法よりも限界まで達しやすいです。しかも「10回しか挙がらない重量で限界まで」というのは、筋肉が大きくなる条件を満たしやすい。したがって10回×3セットがトレーニングの基本回数になります。重たいバーベルを扱うツラさはあるものの、「10回」であれば先が見えます。8回、9回で限界を感じたとしても、「あと1、2回だ!」と思えば、何とか心を奮い立たせ、クリアできるのです。
以上のことから、ジムの方が一部位にかけるトレーニング時間は短く、精神的にも楽ですし、結果的に効率がいいといえます。
ジムは移動、着替えに時間を取られて時間に非効率性を感じることも
ただしこれは、“1種目の筋トレで効率良く筋肉をデカくする”という観点だけからみた効率の良さです。別の角度からも、2種目を比較してみましょう。
プッシュアップでは大胸筋を刺激するだけでなく、同時に肩甲骨を閉じたり開いたりという動きが生まれます。また、肩甲骨が体幹から上方に離れないよう(厳密には体幹が肩甲骨から落ちないよう)、前鋸筋や小胸筋で体幹に固定しておく必要があります。一方、ベンチプレスでは、大胸筋だけに負荷を集中できますが、肩甲骨はベンチ台に支えられており、しかも一切動きません。つまり、プッシュアップの方が肩甲骨周囲の筋肉も使えるという、プラスの効果があります。
また、ジム通いは移動や着替えなどに時間がとられます。1分でも有効に時間を使いたい、少しでも1日の生産性を下げたくないという人は、そこに非効率性を感じる場合もあります。
それから、ジムに行くと、動きをコントロールしきれないほどの高重量ベンチプレスに果敢に挑戦し、全身の力を振り絞って、勢い良く挙げている人をよく見かけます。これでは、重りに振り回され、精密なフォームでトレーニングできません。結果、狙った筋肉に刺激を集められず、非効率です。
ウエイトを使ったトレーニングに取り組む際、ウエイトに振り回されるのではなく、コントロールするために、まずは自分の体重ぐらいは動きをコントロールできるようにしておきたい。そういう意味では、プッシュアップはファーストステップになります。そこを丁寧に、正確にできるようになればその先、ウエイトトレーニングの良さをより一層味わえるようになります。
以上のことから、大胸筋を短時間で、1ミリグラムでも大きくしたいのであれば、ベンチプレスに軍配が上がり、大胸筋だけでなく肩甲骨周囲の細かな筋群も鍛える、自分の体の動きをコントロールする技術を習得する、さらに移動時間の短縮などを考えればプッシュアップに軍配が上がります。つまり、ジムがいい、家トレがいいとは、単純には言えないのです。
どこでもできるトレーニング、「家は意味がない」と断じるのは陥りやすい罠?
トレーニングを頑張ろうかなと思うならば、場所はどこでも、できることをやればいい。家トレは意味がないと断じるのは、とてももったいないです。ジムでウエイトトレーニングを始めて、イキっている頃に陥る罠です。視野が狭い、思考が硬い、心が未熟、です。
僕も、ジムに行く時間がなかったりすると、家でプッシュアップを1セットだけ、筋肉の限界までやります。これだけでも、ちゃんとパンプするので、終わった後はいつも「ああ、やって良かったなあ」と思います。これだけトレーニングをやりこんでいる私ですら、達成感を得られるのだから、皆さんはもっと、充実感を得られると思います。
家トレから始めて、物足りなくなったり、時間の余裕ができたりしたら、その時にまた、ジム通いを考えればいい。「トレーニングは自由」です。(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)
長島 恭子
編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビューや健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌などで編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(共に中野ジェームズ修一著、サンマーク出版)、『つけたいところに最速で筋肉をつける技術』(岡田隆著、サンマーク出版)、『カチコチ体が10秒でみるみるやわらかくなるストレッチ』(永井峻著、高橋書店)など。
岡田 隆
1980年、愛知県生まれ。日体大准教授、柔道全日本男子チーム体力強化部門長、理学療法士。16年リオデジャネイロ五輪では、柔道7階級のメダル制覇に貢献。大学で教鞭を執りつつ、骨格筋評論家として「バズーカ岡田」の異名でテレビ、雑誌などメディアでも活躍。トレーニング科学からボディメーク、健康、ダイエットなど幅広いテーマで情報を発信する。また、現役ボディビルダーでもあり、2016年に日本社会人ボディビル選手権大会で優勝。「つけたいところに最速で筋肉をつける技術」「HIIT 体脂肪が落ちる最強トレーニング」(ともにサンマーク出版)他、著書多数。「バズーカ岡田」公式サイトでメディア情報他、日々の活動を掲載している。
