デジタル・ガバメント「先進国」、エビデンスに基づき対話できる社会へ

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 これまでもさまざまな構想や施策が打ち出されてきた行政サービスのデジタル化。ビッグデータをめぐる世界的な潮流や技術革新の波を捉え、日本はどうアプローチするべきか-。国や地方自治体のシステムの実情に詳しいアクセンチュアの程近智相談役は「『デジタルファースト』は国と企業・国民がエビデンスを基に対話できる社会の実現へ向けた『最初の一歩だ』」と語る。

イノベーションが改革迫る
 -日本でこれまでデジタル・ガバメントが進展してこなかった理由をどう見ますか。
 「行政の業務プロセスや組織形態はノウハウの蓄積です。『積み上げ方式』で成り立っているシステムは『非連続』な改革には弱いのです。デジタル改革による抜本的な見直しによって業務効率は高まり、官民のデータ連携による施策効果も期待されます。でも『レガシー』を破壊してまで、新たな価値を生み出す必要性に迫られてこなかったのです」

 「国家存亡の危機が世界最先端のデジタル国家への原動力となったエストニアや国策として膨大なデータをコントロールする中国をはじめとする諸外国と日本は、そもそも歴史的な背景や社会構造が異なります。でもそれだけじゃない。国民性も大きいと思うんですよ」

 ―どういうことですか。
 「国民の側から行政に強く改革を促すケースは日本ではそう多くない。他方、米国ではこんな実例があります。I型糖尿病の子どもを持つ親が血糖値のモニタリングセンサーのコードに少し手を加え、遠隔で血糖値をモニタリングできるようにしました。これがSNSを通じて広がり、オープン・ソースのクラウド管理ソフトも開発されました。本来なら医療機器への変更は認められない。しかし、多くの人を巻き込み、エビデンス(実証データ)が示されたことで、遠隔血糖値モニタリング装置が当局によって再分類され、結果、新型機種の早期承認につながったのです」

 ―イノベーションが行政側に改革を迫ると。
 「そうです。デジタルの世界も同様です。デジタル化によってもたらされる社会の効率化やビジネス環境の向上を国民や企業が積極的に求めるのか、あるいは現状維持の結果、自身に跳ね返ってくる社会コストを受け入れるのか。私たちの覚悟も問われるのです」

 -各国が先進的な施策を相次ぎ打ち出すなか、日本もデジタル前提の行政改革に乗り出しました。
 「試行錯誤を重ね、デジタル・ガバメントの最先端に躍り出た各国の事例を参考にしながら日本独自のデジタル・ガバメントを構築しやすい環境にあるとみています。政府機関の業務システムでは、民間のノウハウを積極的に活用する動きが加速しますが、米中央情報局(CIA)が業務システムを米アマゾン・ウェブ・サービスのクラウドサービスで運用することが話題を集めた当時と比べ、技術の安定度は高まり、使いやすい技術が広がっています」
 
デジタルファーストは最初のステップだ
 -新たに日本が目指すデジタル・ガバメントは、行政のあり方そのものを利用者目線で見直すことも改革の柱です。
 「ひとつのサイトにいけば必要な手続きが完結する『ワンストップ』や一度提出した情報は二度記載する必要がない『ワンス・オンリー』は大切なことだと思いますが、ビジネスの視点からすると必要最低限の条件です。行政手続きの簡素化以上に私たちにとって重要なのは、日本が世界で最もビジネスしやすく、イノベーションが創出される事業環境であることです。とりわけ、新たな技術やサービスを社会に広く普及させるための規制改革においては、前例ではなく、エビデンスを基に国と企業が対話を重ねることが不可欠です。『デジタルファースト』は、あくまでその最初のステップにすぎないのです」