スマホ普及が追い風?オンキヨー・パイオニアのデジタルオーディオプレイヤー復活で目指すエコシステムとは【Turning Point】

今や、ハイレゾオーディオもスマホで楽しめる時代。
なぜメーカーは単体製品であるDAPを投入するのだろうか?
●スマートフォン登場で、市場の一部が衰退したカメラ、オーディオ市場
スマートフォンのカメラ機能の向上は、コンパクトデジカメ市場に大きな影響を与え、低価格市場の縮小をもたらした。
スマートフォンの登場で影響を受けたのはカメラ市場だけでない。
オーディオ機能もまた、スマートフォンの登場で大きな影響、打撃を受けたといってもいいのではないだろうか?
普段持ち歩くスマートフォンは、オーディオプレイヤーとしても使いやすい。
そのため専用オーディオプレイヤー、いわゆるDAPを持ち歩く必要がなくなる。
さらにスマートフォンの場合、音楽の管理も
・PCからの転送
・音楽配信サービスでの視聴
・音楽配信サービスからダウンロードして視聴
などが可能なため使い勝手も良い。
もともとアップルのスマートフォン「iPhone」シリーズは、同者のDAP「iPod Touch」に、通話・モバイル通信を搭載した進化型モデルだ。
iPhone登場後、今やiPhoneの方がオーディオプレイヤーとしてメジャーになった感もある。
一方で、Androidスマートフォンは、ミュージックプレイヤーがルーツではない。
しかし、ハードウェアやソフトウェア設計の自由度から、いち早くハイレゾオーディオに対応している。
今や、Androidスマホを持っていると言うことは、ハイレゾーオーディオプレイヤーも所有していると同意といってもよい状況だ。
こうした背景もあり、便利なオーディオプレイヤー機能を持つスマホユーザーのDAP離れは必至と、誰しもが思っている。
しかしながら現在の市場はどうだろうか?
今でも家電量販店では、DAPやイヤホンおよびヘッドホンのための広いスペースを確保されているし、DAPやその関連商品を専門に取り扱うショップも人気があり、健在だ。
これは。どういうことだろう?
現在の売り場をみると、オーディオ好きをメインターゲットとしていた市場に、スマホで使うためのイヤホン・ヘッドホンを購入する層が加わり、以前とは客層が変わっている。

iPhone 7シリーズではイヤホン端子が廃止に
こうした変化や流れがおきた理由としては、
「iPhone 7」シリーズにおけるイヤホン端子廃止により、ワイヤレス機器のニーズや、DAPへ興味を持つ層を、改めて掘り起こしたと思われる。
●ハイレゾ、音質重視の波に上手に乗れているオンキヨー
さて、そんなDAP売り場は、
・高音質を追求した海外製品
・エントリーモデルからハイエンドまで揃えるソニー製品
といった人気製品が並んでいる。
そして最近、もうひとつ製品を着実に進化させているメーカーがある。それがオンキヨーなのだ。
オンキヨーは、2015年にDAP「DP-X1」を発売。
OSにAndroidを搭載した音質重視のモデルを世に送り出した。
また、子会社となったパイオニアは、シナジー効果とも言うべきモデル「XDP-100R」発売。それぞれが持つオーディオに対するブランド力で、着実にユーザーにアピールしてきた。
昨年2016年は、後継機である「DP-X1A」(オンキヨー)、「XDP-300R」(パイオニア)を発売。
そして2017年は、SIMフリースマートフォンとなったDAP「GRANBEAT(DP-CMX1)」を発売した。
GRANBEATの特徴は、「DAPがスマートフォンに寄っていく」という、これまでとは異なる進化スタイルであることだ。
もともとスマートフォンと同じAndroid OSを搭載していることもあり、
・常時接続可能なモバイル通信環境の獲得
・音楽配信サービスの視聴にも対応
など、DAPがスマートフォン化するメリットは、十二分にあるというわけだ。
オンキヨーおよびパイオニアのDAPの特徴は、
・ハイエンドオーディオ向けのDAC(デジタルオーディコンバーター)とアンプを搭載
・通常の3.5mmφのアンバランス出力に加えて2.5mmφのバランス出力を標準でサポート
など、単体でも充分過ぎる程の高音質・低ノイズを実現している点だ。
こうした特徴は、同社のスマートフォンである「GRANBEAT」にも受け継がれている。
「GRANBEAT」は、スマートフォンであるにも関わらずバランス出力が利用できるという他モデルにはない強みを持つ。

パイオニアのXDP-30Rは、2色のカラー展開を行うなど個性付けをしている
そして今年、2027年3月には。一つ下のクラスのモデルとなる「DP-S1」と「XDP-30R」を投入した。
この製品は「GRANBEAT」とはまた違ったアプローチで、スマートフォンと2台持ちできる価格帯でありながら高音質を実現するという特徴を持つ。
これまでオンキヨーとパイオニアのDAPは、若干ハードウェアの構成が異なり、
・ハード構成でワンランク上のオンキヨー
・価格が若干安くDJ機器にも強いパイオニアらしい低音重視
という棲み分けが成されていた。
最の「DP-S1」と「XDP-30R」は、ハードウェアの構成は両社ともに同じで上位機種に匹敵する性能を持つ。大きく異なるのはそれぞれのメーカー意匠を反映した外観と、メーカーごとのキャラクターを持たせたサウンドチューニングだ。しかしながらこのチューニングは、オンキヨーの方が原音の雰囲気をそのまま再生するナチュラル嗜好に対して、パイオニアは少しだけメリハリを付けた聴き心地の良い音にしている。
低価格化による画面表示の粗さやソフトウェア面の煮詰めの甘さなど、妥協せざるを得ない部分もあるが、価格を抑えつつもバランス出力など上位機種と同じ機能は維持しており、オンキヨーおよびパイオニアのDAPに対する高音質への取り組みはブレてはいない。
FLACおよびWAVE形式などのハイレゾオーディに対応するのはもちろんだが、DSD(2.8/5,6MHz)のネイティブ再生に対応している。
大容量データをストアするための最大200GBに対応するmicroSDカードスロットも2つあり、本体内蔵の16GBストレージと合わせると最大416GB相当のデータへアクセス可能だ。
DACやアンプも上位機種と同様に2基ずつ搭載、ボリュームはオーディオ機器らしいノブによる操作としている。
また、Wi-Fi機能を内蔵しており、本体のファームウェアアップデートは単体で行うことができる。さらに「radiko」や「tunein」などのストリーミング音源サービスへの接続も可能としている。
ここまでの性能をみていくと、ひとつ疑問が湧く。
オンキヨーおよびパイオニアは、上位機種をも喰ってしまいかねない全部入りのDAPを何故出せるのか? ということだ。
その理由は、オンキヨーが目指すエコシステム、それがあるのではないだろうか。
同社はハイレゾ音源配信サービス「e-onkyo music」を運営している。
このサービスの利用を促進するための絶対条件が、ユーザー数の拡大なのだ。
つまり、スマートフォンや他社も含むDAPの普及が大前提なのだ。
利用できる機器の増加によって利用者も拡大していく。
また、スマホやDAPにダウンロードした音源をより「良い音で聞きたい」と言うニーズに応えるべく受け皿も用意している。
イヤホンやヘッドホンのブランドに、オンキヨー、パイオニア、フィリップスのブランドを取り扱っているだけでなく、オーディオ機器やスピーカー分野でも本格的な製品群を持っているのだ。
こうした高音質オーディオの総合環境を受け皿として、価格を抑えて機能を全部入りしたDAPをユーザーに提供にすることで、ユーザーがステップアップする「気付き」と「準備」の提供を実現しているのだ。
一般的なエントリーモデルは購入しやすい価格設定にするために、機能を省略する。
これではステップアップするためには、本体の買い換えが必須となる。
しかしならが、最初から機能を封じたローエンドモデルでは、ステップアップするというモチベーションは生まれてこない。
壊れたから同じレベルの機種、より低価格な機種へ買い換えるという流れになってしまうケースが多い。
そういった意味では、エントリーモデルこそ、
次への可能性を気付かせるための高機能
を持たせることが重要なのだ。
「DP-S1」および「XDP-30R」を入門機として体験したユーザーは、これより下の機種は物足りないと感じるだろう。必然的に、次は、よりハイエンドな機種を選ぶ。
オンキヨーが目指す、オーディオの復活、オーディオのエコシステムは、そこのあるのだろう。
オンキヨーには、こうしたユーザーの次の受け皿となるハイエンドモデルの登場も期待したいところだ。
執筆 mi2_303