■知られざる女子日本代表〜Beautiful Woman(4)

「相撲は、柔道やレスリングと違って一瞬で勝負が決まるところが、私に一番合っていると思っています。体格差に関係なく、技やスピードで勝つことのできるところに魅かれています」

 爽やかな笑顔で相撲の魅力をそう話す野崎舞夏星(まなほ・20歳)は、高校時代に第4回世界女子ジュニア相撲選手権大会(2014年)の軽量級で、日本人で唯一世界王者に輝いた逸材だ。現在は女子相撲の強豪である立命館大学相撲部に所属。2016年4月に開催された第4回国際女子相撲選抜堺大会では、前回覇者のモンゴルチームや強豪の日本大学を倒しての立命館大の団体戦優勝に貢献した。

 女子相撲は相撲を世界に普及することを目的に、オリンピックの正式競技採用を目指して創設された競技だ(オリンピック競技の認定は、女子への普及実績が評価される)。男子が取る相撲とルールは同じだが、ぶちかまし(前頭部や肩を相手にぶつける)や顔への突っ張り(平手で相手を突いて押す行為。張り手ともいう)は禁止であり、3分以上経っても決着がつかない場合は「取り直し」となる(男子は5分)。

 とはいえ、女子であっても激しい競技であることに変わりなく、取材時の野崎は先日の大会で肩を脱臼して、ぶつかり稽古のような激しい練習には参加できない状態だった。それでも、すり足や四股などの稽古には参加して、10月16日に開催される全日本女子相撲選手権大会に向けて調整してきた。

 ぶつかり稽古が始まると、自身の最大のライバルであり、憧れの先輩でもある山中未久(軽量級2016世界大会優勝)と男子部員の取り組みを真剣なまなざしで見つめる。ケガを負いながら、相撲に熱い情熱を注ぎ続けるのは、人一倍の負けん気を持っているからだ。

「結果が出なかった時、そこまでして相撲を続ける意味はあるのかと思い悩むこともありました。お母さんからも、いつやめてもいい、静岡に帰ってくればって言われています。でもなんせ負けず嫌いなので、言われれば言われるほどやめられず、ここまで続けてきました。目標は、シニアの世界大会に日本代表として出場することです」

 プロレス好きの野崎は幼い頃から相撲を取っており、多くの大会で好成績を収めてきた。小学6年時にはレスリングの全国大会でも準優勝している。

「プロレス好きの家族の影響でレスリングを始めました。小学1年生の時に出たわんぱく相撲(小学生児童によるアマチュア相撲大会)の大会で、自分より大きい選手や男の子に勝てたのがうれしかったために相撲を始めたんです。幼稚園のときは女子プロレスラーになりたかった」

 相撲とレスリングに取り組んだ野崎は、浜松西高校入学後は柔道部に入部して汗を流した。こうして、これまで経験してきた複数の競技が自身の相撲における素地となり、小柄な体格ながら、足腰の強さと多種多様な投げ技で大柄な選手たちを打ち破ってきたのだ。

「私は、レスリングや柔道をやっていたため、相撲の基本スタイルから少し違う技(足取りや投げ技)ができることも強みにできます。身長160cm、60kgは相撲選手としては小柄ですが、スピードを活かした技が持ち味です」

 ひたむきに相撲に取り組む彼女の日常が気になり、普段の学生生活はどのように過ごしているのか聞いてみた。すると野崎は相撲部員の顔から一転して、女子大生の一面をのぞかせてくれた。

「映画、ショッピング、プロレス観戦は大好きです。家族みんなプロレス好きで、お母さんの初恋の人はアブドラ・ザ・ブッチャーでした。私は全日本プロレスの野村直矢選手が好きです。あ、でも先日は綾野剛さんが夢に出てきました(笑)。しお顔が好きなんです」

 学生生活を満喫しながら相撲に情熱を燃やす、メリハリがきいた日々を送っているようだ。

 現在の目標は日本代表だが、野崎には競技者の先に見据える未来がある。

「競技者としては、立命館の4年間で引退しようと思っています。ただ、小学校1年生からずっとやってきた相撲のない生活がどういうものか、正直わからないのですが......。将来はスポーツ番組のディレクターになりたいです。自分がマイナースポーツをずっとやってきたので、競技者の気持ちがわかりますし、スポーツや、女子相撲にはこれからも何らかの形で関わりたいと思っています。

 これからは、相撲がさわやかなスポーツになればいいなあと思います。特に女子相撲はみんな肝も座っているし、土俵際の攻防も面白いので、たくさんの人に見にきてほしいですね」

 名前の由来は「夏の夜空にきらきら輝く星のような女性になってほしい」と母が名付けてくれたもの。その名の通り、彼女は世界一に輝いた。次はシニアの代表となり、ふたたび世界の頂きで、野崎舞夏星という名前をきらきらと輝かせてほしい。

たかはしじゅんいち●文 text by Takahashi Junichi