資料づくりの肝「ターゲティング」で相手を動かす

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「仮説立案」「構成・文章化」「ビジュアル化」の3ステップ構成。各ステップの講義&練習問題であなたの資料作成力がぐんぐん伸びる。

■ターゲティング

「目的設定」(http://president.jp/articles/-/17578)の次はターゲティングです。ターゲットは、報告・提案する相手。ターゲティングとは、資料を見せ、行動を起こしてもらう必要性のある相手の人物像を明確化すること。つまり、人物研究です。

ターゲティングは一見、資料をつくることから遠い行為のように思えます。しかし、資料づくりにおいて、実は最も重要です。にもかかわらず、ほとんどの人に軽んじられている作業だといえるでしょう。ターゲティングのよし悪しが、相手に行動を起こさせることができるかどうかの決め手となります。

私はターゲットをよりよく知るために、ターゲットプロファイルというものを作成します。これは、特定の人物の行動履歴を心理的な側面から分析し、行動特性を明らかにするものです。

ターゲットプロファイルでは、まずターゲットとなる相手の「人物像」と「保有情報・知識」を分析します。そのうえで相手の「期待値」と「理解レベル」を明らかにし、提案・報告書で「何をどのように伝えると最も効果的か」という方針=「仮説」を構築します(図を参照)。

ターゲットの「人物像」「保有情報・知識」を深く知るには、ターゲットの生い立ちや仕事の略歴、現在の業務内容、1日の主なスケジュール、多忙度、月間・年間の仕事のピーク、趣味などをリサーチしましょう。

例えば、相手はどんなビジネス書を読むのか。経営哲学としてどんな人を信奉しているのか。もし、ドラッカーが好きなら、資料内にその言葉を引用してみると効果的かもしれません。また、データ数値(売り上げなど)とエモーショナルな言い回しのどちらを好む傾向にあるかを知っておくと、資料の表現を考えるうえで役立ちます。

相手の「人物像」や「保有情報・知識」は、「ポジション」「バックグラウンド」「スタイル」「人間関係」の4つにまとめて視覚化しましょう(図を参照)。

「ポジション」「バックグラウンド」は、面会での本人への聞き込みから入手します。相手が経営者などの重要なポジションにいる場合は、会社のウェブサイトやメディア記事などもチェックしましょう。

「スタイル」を知るには、周囲の人への聞き込みを行いましょう。「オレについてこい」タイプなのか、それとも理詰めタイプなのか……ターゲットの部下や秘書などから、社内でどのような仕事の進め方をするのかをリサーチします。

社内の「人間関係」の情報も意外に役立ちます。ターゲットと対立関係にある人の主張と被ってしまうと、それだけでノーと突き返されてしまうことがありますので、きちんと押さえておきましょう。

営業部長がターゲットであれば、他社の営業部長に聞くというのもいい作戦です。役職やポジションなどが似た立場にある人は同じような悩みを持つことも多く、それを事前に知れば、「よく理解してくれる」と好感を持たれやすいのです。

■プロファイリング

「人物像」「保有情報・知識」を整理したら、「期待値」「理解レベル」を明らかにするプロファイリングにとりかかりましょう。

ターゲットの「期待値」に応えるには、まずは顕在化した期待を捉えます。そのうえで背後に隠れたまだ言語化できていない潜在的な期待を推し量ることができるか。ここが資料作成の出来・不出来に大きな影響をおよぼします。

わかりやすい資料をつくる人は、必ず相手の期待を超えた何かを提供します。期待を把握したうえで、「こうお考えかもしれませんが、少し違います。実は……」と相手にとって意外性のある内容にすれば、前のめりのアクションに結びつきやすくなります。

実際によく見受けられるのは、相手の顕在化した期待さえも把握せずに「自分の言いたいこと」に終始してしまう資料です。自分の思い込みで「きっとこれが聞きたいに違いない」と強引に進めても相手を納得させることは難しいでしょう。

相手が何をどうしてほしいのか。相手の優先順位の高いものは売り上げか、利益か、あるいはスピード感か革新性か。その見極めが重要です。

例えば、業界のリーディングカンパニーの場合、概して安定性より独自性の優先順位が高く、平凡な提案では満足しません。逆に、フォロワー企業では独自性よりも、収益性のほうを優先するかもしれません。

また、ターゲット側が期待することの優先順位を持っていない場合もあります。新任者で何が重要かまだ自分でも把握しきれていないケースです。こうした場合には、資料の中で「重要なことはこれです」と、相手の優先順位を決めていくような啓蒙的な内容にすることが有効になります。

ターゲットの「理解レベル」を知ることも、わかりやすい資料をつくるうえで避けて通れない作業です。例えば、コンサルティング業界では横文字や専門用語を使った資料を作成することが多く、しばしば他業界の人に「よくわからない」と言われます。相手がその言葉になじみがないためです。

コンサルティング業界に限らず、業界や会社特有の言葉や言い回しは存在します。資料の中で使う言葉や説明する概念を考えるにあたって、相手が保有している情報を最初に想定することが大切です。

もっとも、何でもかんでも使わなければいい、というわけではありません。ターゲットの業界内で大勢が知っている言葉であれば、むしろそれを使ったほうが共感を呼び、話がスムーズに進むこともあります。

広さを表す際の「東京ドーム○個分」という表現など、資料に比喩を使う人も多いでしょう。その際は、相手の業界や年齢などを考慮しないと効果が半減することも覚えておきましょう。

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&Create(アンド・クリエイト)代表 清水久三子
1969年、埼玉県生まれ。お茶の水女子大卒。日本IBMグローバル・ビジネス・サービス事業部、ラーニング&ナレッジ部門リーダーを経て、2013年独立。著書に『プロの課題設定力』『プロの資料作成力』などがある。

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(&Create(アンド・クリエイト)代表 清水久三子 構成=大塚常好(プレジデント編集部))