身長148cmのお笑い芸人が語る“イジりといじめ”の境界線 素晴らしき人生・りょうちゃん 「芸人の世界でイジりは信頼の証」
お笑いコンビ「素晴らしき人生」のりょうちゃんさん(37)は身長148cmという体格ゆえ、「小さいころからいじめに直面してきた」と明かす。近年はテレビ番組などでドッキリを仕掛けられる芸人に対して「かわいそう」といった声が上がることもあるが、本人はそれをどう受け止めているのか。
学生時代の「いじめ」の対応策、お笑い芸人になって気づいた「イジり」と「いじめ」の境界線について聞いた。
「小さいと、人として下に見られやすい」
──ご自身で「ナメられやすい」と語っておられますが、その自覚はいつからあったのでしょうか。
素晴らしき人生・りょうちゃん(以下同) 小学校に入ってからですね。ずっと背の順は一番前で、僕の感覚でいうとチワワを見て怖いと思わないのと同じで、背が低いと人として下に見られやすいんです。小学生のときは、気も弱かったので、いじめられたこともありますし、スポーツでも不利でコンプレックスでした。
でも、負けず嫌いでもあったので、「デカくなりたい」という気持ちはずっとあって。牛乳を毎日飲んだり、背伸びしたり、できることはひと通りやっていましたね。
──中学生になっても身長が伸びなかったとのことですが、「小さいこと」へのコンプレックスや意識に変化はありましたか。
「小さいからってナメられたくない」という気持ちが強くなりましたね。もともと目立ちたがりでもあるので、整髪料で髪を立てて、入学初日に学校で一番恐れられている先輩に「ウイーッス!」って挨拶したんです。でもそれで目をつけられちゃって。
──かなり無茶な行動な気がします。
そこから、“リアル鬼ごっこ” が開催されるようになって。登校すると「今から10秒数える。捕まらないように逃げろ」って言われて、そこからは放課後まで逃げ続けないといけないんです。
マンガ『クローズ』みたいなヤンキーの多い学校で、保健室は常にケガ人でいっぱいだったので、捕まったら本当に終わりだとはわかっていて。授業に出られない日もあり、3か月くらい必死に逃げ続けました。ほかにも「ちょうどいい高さだから」と、野球部の先輩が僕の頭すれすれで素振りをすることもありました。
──日常的に標的にされるような状況で、どうやって乗り切ったのでしょうか。
あのころは、立ち回り方を覚えた時期だったと思います。
当時は自分の顔がめちゃめちゃ可愛かったので、女子が守ってくれたんです。「やめなよ、この子にそんなことするの」と間に入ってくれたり。小さいなりの処世術というか、女子に甘えるのがうまかったんです。中2で転校するまで大きなケガもなく過ごせましたね。
ヤンキーのプロレス技を“腕ひしぎ”で返した高校時代
──高校に進んでから、状況は変わりましたか?
進学した高校もあまり治安が良くなくて。でも相変わらず目立ちたい気持ちがあったので、自己紹介で変顔をしたり声色を変えたりしたら、それがきっかけでまた目をつけられてしまって。休み時間になるとヤンキーからプロレス技の練習台にされるような日々でした。
中学のころと違って、もう顔はそんなに可愛くなかったので、今度は完全に自力で解決策を探すしかなかったですね(笑)。
──どうやって状況を打開していったのでしょうか。
あまりこれといった解決策はないのですが、精神的に折れたらそのままやられ続けるだけだとわかっていたので。腹パン(お腹を殴られること)とかされても、「効かない」と言い張って、家では腹筋を続けて暴力に耐えられるように訓練していました。
そのうえで、ずっと反撃のタイミングをうかがっていて。
ある日、技をかけられた瞬間に隙ができたので、家で練習していた腕ひしぎ十字固めを決めたんです。そしたらクラスから歓声が上がって、そのあとしばらくはチヤホヤされるようになりました。
──そこから関係性は変わっていきましたか?
一時的には変わるんですが、みんなすぐに飽きてくるんです。それでまた「やっぱ、お前だ」とターゲットにされる。次はハイキックの練習台にされて、今度は回避の練習をして、蹴ってきた足をつかんでまた歓声が上がる、という感じで笑いを取っては標的を回避するという繰り返しでした。
──報復への怖さはなかったのでしょうか。
僕の経験ですが周りが盛り上がっちゃえば、報復につながることはないんです。あと、高校1年のときに、友達とふざけていただけなのに、僕の見た目のせいで先生にはいじめに見えてしまって、友達が停学になってしまったことがあって。
それ以来、「小さいからこそ弱いところを見せてはいけない」とどこかで思うようになりました。だから、気持ちを強く保つことは意識していましたね。
あと最終的には、“何を考えているかわからない存在になる”のが一番効くと気づいたんです。感情を出さずに、相手の目を見て無言で一歩前に出る。そんなことをしていたら、自然と距離を取られるようになりました。結果的に、誰も関わってこなくなって平和になりました。
いじめてきたクラスメイトの顔は一切覚えていませんし、誰にでもできる方法ではないかもしれないですが、今現在いじめられている人にも「気持ちを強く保ってほしい」ということは伝えたいです。
芸人の世界で気づいた「イジり」と「いじめ」の境界線
──学生時代、“身長が小さい”というだけで大変な経験をされています。現在では自身の見た目にどのように向き合っていらっしゃいますか?
芸人になってからは大きく変わりましたね。大学では「ツッコミがうまい」って言われていて、自分のことを面白いと思って芸人になったんですよ。でも、人力舎のお笑い養成所に入ったら自分よりツッコミうまい人もいるし、「全然センスないじゃん」って思い知らされて。
入学してから4か月後くらいに、はじめてお客さんの前でネタをやるライブがあるんですけど、それまで授業で面白かった人でもいざ本番になると全然ウケないんです。自分も不安だったんですが、舞台に出ただけで、僕の見た目だけでドッとウケて。
──ナメられたときの対処も、変わってきましたか?
かなり変わりました。今はもう「ナメられること前提」で、その状況をどうひっくり返すかを考えています。
たとえば、バイトしている芸人BARで、お客さんに1万円を見せながら「何か面白いことしてよ」と言われたとき、1時間近く「ちょーだい!」と叫び続けたことがあって。最終的に「もういいからやめてくれ」と2万円もらいました。
相手に下に見られたときほど、「この人、普通じゃないな」と思わせたほうが勝ちなんですよね。急に頭を叩かれたときに「10点!」と返すとか。反応が早いと、リスペクトに変わることもあるんです。ナメられることは、僕にとって仲良くなれるチャンスでもあるんです。
──最近は「イジり」と「いじめ」の線引きが難しくなっているとも言われます。『水曜日のダウンタウン』出演時のドッキリの演出でも「かわいそう」という声があったそうですが、ご自身の経験から、一般的な「いじめ」と芸人の世界の「イジり」はどんなところが違うと感じていますか?
僕が思う芸人の世界の「イジり」と一般的な「いじめ」の一番の違いは、そこに信頼関係があるかどうかです。
芸人の世界では、相手をナメているときではなく、「この人なら面白くしてくれる」と信頼しているときにイジるんです。だから、ドッキリも含めてイジられるというのは、僕にとっては信頼の証だと感じています。
僕は見た目的に保護対象になりやすいんですけど、こう見えて気が強いですし、性格が悪いらしくて同期の大半から嫌われてます(笑)。小さくてナメられてきた経験が、芸人の世界ではそのまま強みになるなんて最高なんです。
ただでさえイジられやすいのに、テレビの演出で「かわいそう」と思われるだけで仕事がこなくなるなんて、僕の人生、めちゃくちゃ損じゃないですか。
まだテレビにもほとんど出られていませんが、どんな形でもウケたらうれしいので、僕を見たときは安心して笑ってください!
取材・文/福永太郎
※本記事はりょうちゃんさん個人の経験に基づくものです。いじめを受けている場合は、ひとりで抱え込まず、学校・保護者・公的相談窓口など周囲に助けを求めてください。
