「これって給料出るんですか?」…現場の「ベテラン職人」を大激怒させた19歳「新卒社員」からのまさかの要求

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労務相談やハラスメント対応を主力業務として扱っている社労士である私が、企業の皆様から受けるご相談は年々多様化しています。近年、特に増えているのが、「若手社員との距離感がわからない」という、建設業の経営者や現場責任者からの声です。「怒鳴ればパワハラと言われる。でも危険な仕事だから、出来ないなら言い続けないといけない」……。そんな戸惑いを抱えた“現場のおじさんたち”は、いま確実に増えています。

今回は、社員30名規模の建設会社で起きた、ある新卒社員をめぐる相談事例をもとに、「Z世代との価値観のズレ」の本質について考えてみたいと思います。(なお、ご相談事例は個人の特定を防ぐため、複数のエピソードを組み合わせて再構成したものです)

ベテラン職人と新卒の職場のひずみ

「悪い子じゃないんです。でも、正直なところどう扱えばいいかわからないんですよ」

定期面談の際にそのように打ち明けてこられたのは、50代の男性社長でした。祖父が創業した建設会社の3代目である社長は、ご自身も多くの現場経験を持つ元・とび職。その人柄もあってベテランの職人を多く抱え、地域の現場に欠かせない人材を数多く育ててきました。

一方で同社も近年は慢性的な人手不足が悩みでした。職人の高齢化も進んでおり、そろそろ事業承継も視野に入ってきた50歳のタイミングで、「若手を育てなければ会社が回らない」と考えたとのこと。今までは実質的には知人の紹介でまかなえていましたが、去年本当に久しぶりに縁故採用でもリファラルでもない求人を出したとのことでした。

とはいえ、この人材難です。スムーズに採用ができるのかは微妙なところでしたが、求人を出した工業高校から2名の応募があり、無事1名を採用することができました。

採用したのは、この春高校を出たばかりのAさん。面接では礼儀正しく、挨拶も感じが良い。受け答えも素直です。まだ19歳という年齢から頼りなく感じたものの、社長にとっては息子よりも若いこともあって、その印象もむしろ好ましいものとして写りました。「これならうちのベテランたちにもかわいがられるに違いない」。社長としてはそんな風に青写真を描いていたのです。

しかし入社後、その予想は大きく裏切られることになりました。

「うちの場合は、職人が3人1組のチームで動きます。現場が日ごとに違うこともあって、朝会社に集合して、社用車に乗り合わせて現場に向かうんです。運転はリーダーがするのが基本ですが、移動時間に簡単に打ち合わせしたりとか、前回の申し送りの確認というか、雑談も含めつつ情報交換をしておくことが多いんです」

「移動時間だけど、仕事の話もするということですか?」

「仕事の話って言っても、本当に図面を見てどうこうということはなくて、こないだこうだったよな、みたいな確認が多いんですよ。単純計算なら、仕事の話は5分くらいです。早朝から現場に入るときはリーダー以外寝ているときもあります。一緒に移動しているので、眠気覚ましもかねて雑談しながらお互いの状況とか、他のチームの話とかもしている感じです」

なるほど。聞いていないと仕事に支障が出るわけではない?」

「ええ。現場でもブリーフィングはしますし、社内の会話がほぼ雑談ですから。でも、……Aはこういう時間、一人だけイヤフォンをしてスマホを見ているらしいんです。昼休みも輪に入らず、スマートフォンでゲームをしている。たぶん、みんな最初は若い子だから、とか、まだ学生気分が抜けていないんだろう、と思って大目に見ているというか、協調性がないことについては気にしつつ、そもそも注意することか? みたいな疑問も出てきたようで」

社長はため息をつきました。この会社では移動時間は運転をしている社員を除き休憩時間扱いとしています。休憩時間は自由利用が原則ですし、仕事の必要事項は現場でされるのですから、会話の輪に入らなくても特に問題はないはずなのです。

「でも、Aは仕事をなかなか覚えられなくて。うちは現場仕事ですから、小さなミスが重大事故につながります。だから、他の職人の指導も厳しくなるし、危ないときは声も荒げることもあります。でも、みんなそうやって仕事を覚えてきたんです」

ベテランの職人が激怒した「一言」

社長の話では、現場でミスを連発するAさんに対して「そこ危ないって言っただろ!」「何回同じことやるんだ!」といった怒声が飛ぶこともたびたびだったそうです。Aさんはそのたびに「はい」と素直に返事をするものの、また同じミスをする。おなじ作業を一度見せて、本人にやらせて、と教えてもなかなか覚えられず、翌朝になるとすべて忘れてしまったかのようにまごついている……。

「決定打は、Aのチームに着けていたチームリーダーの申し出を断ったことです」

チームリーダーのBさんは、Aさんが入ってくるまで同社で一番若い28歳の社員です。会社における「末っ子」としてベテラン職人からもかわいがられてきた存在でした。素直でやる気に満ち、技能士の資格取得などが近づくと先輩社員に熱心に質問し、着実にその技術を磨いてきました。

Bさんは自分より若いAさんが入社したのが嬉しかったのか、よく世話を焼いていたそうです。ベテランの輪と距離ができてしまったAさんのことも気にかけ、ベテランとの橋渡しも担っていたBさん。実技試験が近づいても一向に技能が向上しないAさんに、「見てあげるから持っておいで」と声をかけていた姿を多くの社員が見ていました。

「ところが、Bと約束した日にAは行かなかったんです。それも2回も……。無断ですっぽかされてもBは告げ口めいたことは言わなかったんですが、休みの日にBが一人で待ってるのを見た職人がAに電話で聞いたら、休みの日に出勤して給料出るんですかって聞かれたらしいんですよ。それでかえってベテラン勢が怒ってしまって。自分のために時間割いてるBの気遣いがわからないのかって」

徐々に、しかし確実に、Aさん、Bさんとともにチームを組んでいるベテラン職人はAさんに厳しくあたるようになりました。この段階になって社長も問題に気が付き、職人たちをたしなめましたが「俺が悪いっていうんですか。Bが可哀そうでしょう」と、かえって逆効果になる始末でした。

Aさんと面談をしたところ、直接一人で現場に直行したい、と申し出があり、社長も少し距離をおけば状況が改善する可能性も考えて、とそれを受け入れたのです。

「でも、そこから遅刻が増えてしまって。理由を聞いてもいろいろなんです。道路が混んでたとか、体調が悪かったとか」

当然、勤怠不良が続けばチームからの評価はまた下がります。さらに、遅刻の連絡を入れたのに欠勤してしまう日も増えました。Bさんが時間を作って話そうとしても、Aさんは俯いて謝罪をするばかりだったそうです。会社としても放置はできず、社長が再度本人と面談を行ったところ、Aさんはこう言いました。

「集団でパワハラを受けている気がする。現場に行かなくてはと思うと、本当に具合が悪くなってしまって……社長、少し休職させてもらえませんか」

【後編】→「休憩時間は自由ですよね?」建築現場でまさかのの職人が絶句…パワハラを訴える「19歳新卒」に社長が下した、解決の一手

【つづきを読む】「休憩時間は自由ですよね?」建築現場の職人が絶句…パワハラを訴える「19歳新卒」に社長が下した、解決の一手