大人になって再び出会うあの日の恋人達。彼女が呟く「別れてよかった」の真意は?

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 じめじめした梅雨の季節は憂鬱になりがちですが、雨音をBGMにして読書に耽る……なんていう過ごし方もいいのでは? おすすめの新刊4冊を紹介します。

『タイム・アフター・タイム』吉田修一/幻冬舎/2420円

 題名は「何度も何度も」の意。高校生の頃に唱えた「大好き」が、大雨の中、一台のタクシーを取り合うという偶然の再会から編み直される。その尾崎颯(既婚)と久遠愛(元夫と同居中)は偶然同じプロジェクトに関わっていた。物語の展開は偶然の大盤振る舞い。でもこれがすごくいい。10代の頃の崖っぷちの純粋さと40代初めの抑制のきいた真情が、光の粒のように全編を彩る。

『新装版 そう書いてあった』益田ミリ/ミシマ社/1980円

 益田さんの人柄や日常が見えるエッセイ。バルセロナで予約していたホテルが満杯で違うホテルに追い出されるも、翌日日本語で傷ついたと抗議。身振り手振りでフラメンコショーを無料で見せるよう交渉、成功したばかりか白ワインが部屋に届いたという顛末には大笑い。新装版ではちょっと嬉しいことが一コマ漫画に。月の夜や新しい歯ブラシなどに"あ、分かる!"と声が出る。

『ゆるふわ天上人と地底人 住む世界が違うのに出会ってしまったあの子と私』ヒオカ/小学館文庫/759円

 旧石器人としては、現代の若年層は違いによる格差にこんなに揉まれて生活してるんだと驚く。実家格差、教育格差、見た目格差、余裕格差。石器人が鈍感でいられたのは経済成長期のおかげで、どんどん貧しくなる日本が格差現象を加速させている。貧困側からその格差線を越境して友人をつくってきた著者。分かると言うのはきっと傲慢。でも、痛みの深さはしかと認識したい。

『東京都同情塔』九段理江/新潮文庫/605円

 建築界にはアンビルドという概念がある。幻の建造物のことだ。現実にはアンビルドだった新国立競技場のザハ・ハディド案。それが現出した並行世界で、建築家の牧名沙羅は対になる刑務所(東京都同情塔)を設計する。本書の主題は崩れゆく日本語。単語は使い手によって意味が違い、塔よりタワーのほうがお洒落で、文章は生成AIが書く。密度の濃い芥川賞作。ぜひご一読を。

文/温水ゆかり

※女性セブン2026年6月25日号