「生徒のプレッシャーはゼロ」⋯形骸化した大阪の中学「チャレンジテスト」の不毛な実態

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大阪府の公立中学生全員が受験する「中学生チャレンジテスト(以下、チャレンジテスト)」。教員の匙加減に左右される内申点の問題を解決するために導入された一斉テストだが、紆余曲折の末に、個人ではなく学校全体の学力によって評定が上下するという、理不尽な仕組みになってしまった。いわば「団体戦」ともいえるチャレンジテストだが、今となってはすっかり形骸化してしまったという。関係者の取材をもとに実態をみていこう。

【前編を読む】【大阪】クラスメイトの点数次第で内申書の評定が下がる?22万人の中学生が受験「チャレンジテスト」のいびつな仕組み

生徒の3割が「成績調整」に

現在は団体戦として運用されているチャレンジテストだが、当初は「個人戦」。個人のテスト結果が内申点に影響するという仕組みだった。例えば、国語で83点以上取れば教師が「4」とつけていても「5」に、35点未満なら「3」以下にランクダウンする。塾側も対策教材を作り、対策授業を実施していた。

「導入初年度には、校内の30%もの生徒が成績調整の対象となってしまった学校もありました。成績が上方修正される分には良いのですが、下方修正された中学生の落胆ぶりやそれを伝える教師の心理的負担は重かったはずです」(前出公立中学教師)

導入初年度の混乱を受け、府はまず問題の難易度を下げることで事態の沈静化を図った。基準点を超えられずに成績が下がる生徒を減らすため、テスト問題を徐々に易化させていったのだ。

しかし、これがかえって制度の根幹を揺るがすことになる。問題が易化するにつれ平均点は上昇し、やがて満点が80%を超える状態が続くようになった。点差がつかなければ学校間の補正もできない。不本意な成績変更の混乱は収まったものの、その代わりに内申点の公平性を担保するという制度本来の目的が失われていった。

さらに大阪府教育委員会は2020年度、仕組みそのものを根本から変える2度目の改正に踏み切った。

制度が導入された当初は、個々人のテスト結果が直接内申点に影響する方式だった。そのため、学校の成績がいかに良くてもチャレンジテストの結果次第で成績が大きく上下する可能性があった。

プレッシャーがなくなってしまった

しかし、大阪府は「授業態度や提出物など日々の積み重ねが評価されやすくなる」こと、そして「テスト当日に欠席した生徒も学校平均に合わせて内申点が変動するため、個人の欠席による不公平がなくなる」といった主張をし、チャレンジテストの結果を直接個人の内申点に反映する仕組みを廃止した。

代わりに学校全体の平均点を府全体の平均と比較し、その差に応じて「4や5をつけられる生徒の人数枠」を学校ごとに決める方式に切り替えたのだ。

しかし問題が易しいまま据え置かれている以上、どの学校も似たような平均点になってしまう構造は変わらなかった。学校間で平均点に差がつかなければ枠の増減も起きない。2度の改正を経て、チャレンジテスト制度は完全に形骸化した。

では現在、チャレンジテストはどのように運用されているのか。

「現在、チャレンジテストを受験する中学生たちに“これで成績が変わる”という緊張感はありません。学校側が生徒に“頑張って受けないと、成績が下がるかもしれない”とプレッシャーを与えていますが、正直あまり効果はないようです」(開成教育セミナー講師の藤山正彦氏)

易化で平均点が上がったことにより、成績上位の生徒にとっては内申点調整の影響がほとんど出なくなっている。

私立人気で形骸化する制度

「北野高校や天王寺高校といった上位校ほど当日試験の比重を高めに設定しているため、仮に内申点の枠が多少変動したとしても合否への影響は限定的です」(同)

また、「私立人気」も制度の形骸化に追い打ちをかけている。

「大阪府が私立高校の授業料を実質無償化したことで、かつては経済的な理由から公立を選んでいた家庭が私立に流れるようになりました。私立高校は独自の学力試験で合否を決めるため、チャレンジテストは関係がありません。設備や部活の充実度でも私立が優位に立つケースが増え、公立高校の定員割れが深刻化している地域もあります」(同)

内申書の不公平感を解消するために生まれたチャレンジテストは、2度の制度改正を経て形骸化し、今や生徒からも保護者からも顧みられない制度になりつつある。そのうえで、内申点そのものが抱える問題--「教師の評価が学校によってばらつく」「1回のテストで成績が左右される」--は、何ひとつ解決されていない。

公立離れが進む中、22万人が毎年強制受験するこの統一テストは、内申点制度の矛盾を抱えたまま、10年後も変わらず続いていくのだろうか。

「チャレンジテスト」のように、都道府県が中学生向けに実施している独自テストは他にもある。その制度の問題点を指摘している記事も、合わせてご覧いただきたい。

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