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すべての人が敵に見えた──。

死刑制度に関する資料をまとめているNPO「CrimeInfo(クライムインフォ)」が、死刑確定者の家族7人にインタビュー調査を実施し、その概要を公表した。

調査では、メディアスクラムや近隣住民からの嫌がらせ、刑執行への恐怖など、死刑囚に近しい人たちが直面する孤立や苦悩の実態が浮かび上がった。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)

●2023年〜24年にインタビュー調査を実施

調査は、2023年9月から2024年6月にかけて、クライムインフォがモナッシュ大学(オーストラリア)との共同研究として実施した。

対象となったのは、死刑が確定した受刑者の家族7人。死刑確定者との関係は、親、きょうだい、子、孫などで、中には養子縁組を通じてきょうだいとなった人も含まれている。

●「いつ執行されるかもと恐れる生活になった」

調査によると、インタビューの対象者はいずれも、死刑確定者が逮捕されるまで良好な家族関係を保っていたという。

死刑判決が確定したことによる影響について、ある人は「弁護士も含め、すべての人が敵に見えた」と語った。

別の人は、諦めの気持ちを抱えながら「なぜこのようなことになってしまったのか」「家族としてもっとできることがあったのではないか」と悔しさをにじませたという。

また、「いつ死刑が執行されるかもしれないと恐れる生活に変わった」と話した人もいた。

ほかにも、「死刑という文字が一番怖い」「(死刑確定者との)面会が終わりドアを閉めるとき、いつまでこの手を振れるのかなと思う」といった声が寄せられたという。

●勝手にドア開けられ撮影…メディアスクラムに苦慮

苦しかった経験として、対象者が口をそろえたのが「メディアの対応」だった。

逮捕当時、自宅などに多数の報道機関が押しかけ、承諾なく玄関ドアを開けられ、自宅内に入られてカメラを向けられたという証言も複数あった。

買い物先まで追いかけられたり、どこからか電話番号を入手した記者から携帯電話に連絡がきたりするケースもあった。

さらに、ソーシャルメディア上で家族を中傷する情報が流される被害も報告された。

●親族や地域との関係も悪化

親族や地域住民との関係に亀裂が生じることも珍しくないようだ。

ある死刑囚の家族は、親が逮捕されたため、養育者を失った子どもの引き取りを親族に頼んだものの、断られたという。

近隣住民から転居するよう何度も要求されたり、人目を避けるために他県に引っ越さざるを得なくなったりした人もいた。

また、甥が結婚後、その妻宛てに事件に関する新聞記事の切り抜きが匿名で送りつけられたケースや、きょうだいが学校でいじめを受けたケースも報告された。

●「家族とわかると解雇される」「支援者への支援が必要だ」

事件が、家族の人生を長期的に狂わせる現実も明らかになった。

逮捕時点ですでに就職していた大人と異なり、死刑確定後に就労年齢に達した家族の中には、「死刑確定者の家族であることを理由に就職できない」「就職できても家族であることが発覚すると解雇される」といった経験を繰り返した人がいたという。

また、死刑確定者と関わり続ける負担について語る人もいた。

ある人は、差し入れや面会などへの対応と自身の仕事で手一杯になり、子どものケアが十分にできなかったと振り返り、「死刑確定者の支援をする人に対する支援が必要だ」とうったえた。

さらに、死刑確定者の健康状態やどんな医療を受けているかについて拘置所側から十分な説明がなく、差し入れた物品が本人に届いているかも確認できないなどといった不満の声も上がった。

逮捕直後、「率直に話せる知人や相談相手がいた」と答えた人は一人もいなかった。

中には、第一審の弁護人に助けを求めたところ、「あきらめてください」と言われた人もいたという。

●周囲の支えに助けられたケースも

一方で、周囲の理解や支援に助けられたケースもあった。

地域のつながりが強い地域に暮らしていたという人は、事件後、近隣住民が心配して食べ物などを持って自宅を訪問してくれた。

また、事件後に家に引きこもっていたが、職場から「気にせず出勤するように」と励まされ、仕事に復帰できた人もいた。別の人も、職場に事情を説明して、仕事を続けられたという。

●死刑囚の家族は「自由が制約されている」

クライムインフォは、今回の調査から浮かび上がった家族像について、次のようにまとめている。

「信頼して相談できる相手もなく、メディアからの攻撃や周囲の人々からの差別的対応などの苦痛に耐え、これらを避けるために社会との関係を避けることを余儀なくされ、『孤立し』、『様々な苦痛に耐えながら』生きる死刑確定者家族像」

そのうえで、次のように指摘した。

「社会的な圧力や差別のなかで、自分自身の『生』を能動的に選び取って生きていくことが阻まれているという点で自由が制約されているといってよい。

本調査が、死刑確定者の家族のおかれた状況の一端を市民社会が情報として共有し、取り組むべき社会的課題として認識するための役割を果たすことを望む」