フジが社運をかけた10月期ドラマの主演を坂口健太郎に…「そんなお金があるの?」その中身と評判

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“これ本当に撮れるのかな?”

4月21日、フジテレビは、都内で「FUJI FUTURE UPDATE 海外共同製作プロジェクト発表会&10月期連続ドラマ制作発表」を行い、新作ドラマ『kiDnap GAME(キッドナップ・ゲーム)』を製作していることを発表した。

このドラマは香港の『MakerVille』、韓国の『Sim Story』という海外プロダクションと共同で制作されており、地上派では全11話で10月期に放送されるほか、18の国と地域で放送、配信を予定している。

そして5月14日には、坂口健太郎(34)が主演を務めることも発表された。それに合わせて、ティザービジュアルも公開されている。革のジャケットを着て、呆然と立ち尽くす口髭姿の坂口は、ワイルド感たっぷり。“好青年”というイメージとはまったく違う姿を披露している。

「同作は、東京、ソウル、シンガポール、バンコクなど、アジア7都市で同時多発誘拐事件が発生するところから始まります。事件が報道される中、それぞれ被害者の家族のもとにメールが届きます。その指令に従い、家族の命を救うため、ほかの出場者よりも先に試練を達成しなければいけない、というデスゲームが描かれます。

坂口は正義感が強く、優秀な刑事・新出敏郎(にいで・としろう)役。彼の妻も誘拐されますが、事件の首謀者を逮捕することを命じられ、そのジレンマの中で必死に戦う男を演じています」(テレビ誌ライター)

5月14日配信の『オリコンニュース』のインタビューで、同作の出演オファーを受けた際の心境を聞かれた坂口は、

〈正直なことを言うと、最初は規模感やドラマの世界感を聞いて、“これ本当に撮れるのかな”と思いました〉

と、正直な思いを口にしている。

「確かに、坂口さんがそのような疑問を感じるのも無理はないし、まさかクランクインできるとは思ってもいなかった」

そう口にするのは、民放テレビドラマ制作関係者だ。

「同ドラマの企画が立てられたのは3年前ですが、その当時、フジテレビのドラマ制作費はかなり削られていました。『そんなことができるはずがない』とフジテレビ内部でも囁かれたそうです。さらに、’24年12月に元SMAPの中居正広氏(53)の性加害問題が公となり、フジテレビから多くのスポンサー企業が撤退するという事態が起き、これにより、さまざまなプロジェクトがいったん棚上げすることになりました。

当然、同ドラマも撤退か、少なくとも延期になるのではと言われていました。それでも昨年11月にクランクインし、プロジェクトが進んでいるという噂は聞きましたが、『規模を縮小して進めているのではないか』『あれだけの規模の企画をやるほどの力が今のフジテレビにあるとは思えない』と話す関係者は少なくありません」

「そんなお金があるの?」

『フライデーデジタル』は、4月上旬に東京都庁前(新宿区)の路上で坂口が撮影を行っている様子を目撃。

公開されたティザービジュアル同様、短髪に口髭を生やし、革のジャケット姿の坂口は、スタッフから渡された白い薔薇の花束を手に路上に立ち尽くしていた。目は血走り、大きく深呼吸をする姿は、鬼気迫るものを感じさせた。

演出・プロデュースを担当する加藤裕将氏は、

〈イカゲームみたいなものを立ち上げたかった。アジア7都市で同時誘拐事件が発生する規模の大きい話。クランクイン前に脚本作り上げて、アジアのスターを集めて半年撮影している。スケール感も自信を持ってお送りする〉(『デイリースポーツ』4月21日配信より)

と話し、予算についても、

〈かなりあります。フジテレビだけでなく、海外のパートナーと協力してやっている〉(前出『デイリースポーツ』より)

と語っていた。フジテレビの社運をかけたと言っても過言ではない同ドラマ。こうなると、期待値は上がるばかりだ。テレビドラマに精通するコラムニストの田幸和歌子氏に話を聞いた。

「正直、最初に話を聞いた時は『今のフジテレビにそんな金があるの?』というのが率直な感想でした。ただ、従来の地上波ドラマというよりは“アジア市場前提の国際共同制作プロジェクト”として組み立てている印象です。つまり、『今のフジが単独で巨額予算を投じている』というより、海外パートナーとリスクや販売を分散することで成立させているのでしょう。坂口さんが〈“本当に撮れるのかな”と思った〉と語っていますが、逆に言えば、主演俳優がそう口にするくらい、かなり大掛かりな企画だったのだろうと思います」

同ドラマへの期待値については、次のように話す。

「かなり難易度の高い挑戦だと思います。というのも、海外共同制作は映画では成功例が多い一方、連続ドラマになると途端に微妙になるケースが少なくありません。理由は、ドラマは各国で“視聴文法”がかなり違うからです。日本の地上波ドラマは人物描写や感情の積み重ねを重視しますが、韓国ドラマやNetflix系作品は、テンポ、強いフック、映像の圧、毎話の引きをかなり重視します。そこを両立しようとすると、逆に“誰向けかわからない作品”になりやすいのです。

しかも今回は、制作側が『イカゲーム』をかなり意識していることを公言している。これは話題にはなりますが、同時にかなり危険でもあると思います。『イカゲーム』が世界的ヒットになったのは、単なるデスゲーム設定ではなく、韓国社会の格差や競争社会のリアリティが世界に刺さったからです。今回の『kiDnap GAME』も、『アジア7都市で撮影しました』だけでは成立しない。それぞれの都市の空気や社会性をどこまで描けるかが重要になると思います」

フジテレビの強い危機感

さらに“設定そのもの”も気になると田幸氏は話す。

「現時点で公開されている情報を見ると、『アジア7都市で同時誘拐事件が発生』『愛する人を救うためゲームに参加』『救われるのは1人だけ』という構図で、かなり既視感の強いサバイバル/デスゲーム系ではあります。なので、世界観や映像スケールだけではなく、『なぜ誘拐ゲームなのか』『そこにどんな社会性を乗せるのか』が弱いと、既存作品との差別化は難しくなる気がします」

一方で、坂口のキャスティングはかなり理にかなっていると分析する。

「韓国を含めたアジア圏での知名度が高く、OTT作品とも相性が良い。静かな芝居や、中性的で国境を越えやすい雰囲気もあるので、“日本の地上波芝居”から少し外れた作品には向いている俳優です」

最後に、フジテレビの現状について、次のように話す。

「フジテレビのかなり強い危機感が出ている気がします。つまり『従来型の日本の地上波ドラマだけではもう戦えない』という認識です。だから単なる海外ロケではなく、最初から香港・韓国の制作会社と組み、共同出資・共同制作・共同販売という形を取っている。これは日本の民放連ドラとしてはかなり異例で、フジテレビとしても“新しい生存モデル”を探しているように見えます。しかも興味深いのは、今回かなり『ルック』『スケール感』『グローバル基準』という言葉を前面に出していることです。

これは裏を返せば、近年、日本の地上波ドラマが海外配信作品に比べて“画が弱い”“スケール感が小さい”と言われ続けてきたことへの危機感でもあるのでしょう。ただ、そのぶんハードルは極めて高い。“イカゲーム級”を掲げた瞬間、視聴者はNetflixレベルのテンポや映像、脚本精度を期待するので、もし演出や脚本が従来型の日本ドラマの延長線上に見えた場合、一気に厳しい評価になる可能性もあります」

日本の地上波ドラマの文法からどこまで踏み出せるか。そこがこの作品の最大の見どころではないだろうか。