「イオンっぽくないイオンモール」と言えるかもしれない。

イオンっぽくない!】あまり見慣れない「縦長モール」をじっくり見る

 2026年3月、京成松戸線新津田沼駅の南口、JR津田沼駅からも近い場所に「イオンモール津田沼South」がオープンした。オープンと言っても、いわゆるゼロからの新規出店ではない。イトーヨーカドー津田沼店跡に、居抜きのような形でイオンが出店した商業施設である。新津田沼駅の北側には前からイオンモール津田沼があったのだが、そこはイオンモールNorthと名前を変え、南口ヨーカドー跡がSouthとなった。

 ヨーカドーが出来たのは1977年と約50年も前だ。この時代の総合スーパーは駅前に多層階で建てられたものが多く、このSouthも地上8階・地下1階建てで計9フロアのタテ長のつくりとなっている。

 ショッピングモールと言えば、今では広い駐車場付きで、カートやベビーカー対応もあり、高くても3階建てくらいにしてなるべく上下移動を避ける構造が普通になっている。そのため、当初はこの建物を誰がどうやって再利用するのだろう、と思われた。こうした物件の再生にイオンが手を挙げたことに若干驚いたが、駅前優良立地であること、Northとの相乗効果などを理由に取り組んだという。


イオンモールといえば「郊外・低層」が基本だったが……(写真はイオンモール高崎、公式サイトより引用)

 新津田沼駅の乗降客数は約6万人、JR津田沼駅も9万人ほどあって、郊外駅としては人流規模は大きい(ともに2024年度)。1990年代には20万人規模だったところから4分の3ほどに減少してはいるが、それでも大きな郊外ターミナルではある。

「郊外」から「都市部・駅近」へと勢力図を拡大するイオン

 イオンと言えば、地方で駐車場付きの郊外型大型モールを展開しているイメージであり、これまで駅前で勝負するというイメージはあまりなかった。そんなイオンも、実はここ最近になって大都市圏・駅近という案件が増えている。総合スーパーの運営会社、イオンリテールのここ1年ほどの出店案件を一覧にしてみると、そんな感じがよくわかるかもしれない。

 この1年ほどの新店は、ほとんどが3大都市圏であり、加えてその多くが駅から遠くない場所に位置している。これまでの「地方ロードサイドを主戦場にするイオン」というイメージとはかなり違っている。では、なぜイオンは街中に増えているのであろうか?

なぜ、主戦場だった郊外から都市部へと進出?

 イオンは三重県で創業、中部地方から拡大していった歴史がある。どんどんと全国展開を進めつつ、並行して地域ごとにM&Aでシェアを拡大しながら今では大都市圏以外ではほぼトップシェアを確保するようになった。

 具体的には、2000年代以降に金融危機で経営破綻した総合スーパー(マイカル、ダイエー等)を傘下に入れ、流通大手としての地位を確立。全国各地の食品スーパーの再編も進め、地方におけるシェアを拡大してきた。

 2024年度の地方におけるイオンの存在感は図表2の通りで、概ね地域トップクラスのシェアを確保しており、中でも北海道、中四国、九州ではトップシェアとなっている。

 なおこの推計に地域売上を公表していないイオンリテールは入っていない。その点を加味すると、イオンは中部地方でもトップシェアを確保していると思われる。

 図表2で触れなかった首都圏、京阪神といった大都市圏においては、地方と比較してシェア獲得が遅れていたが、それでも2010年代以降は着実に資本関係を強化してきた。首都圏にUSMH(ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス)をつくり、京阪神でもイオンリテール、ダイエー、光洋を併せるとトップクラスに位置づけられるところまで拡大している。

 最近では首都圏、京阪神でも地域子会社を再編し、首都圏ではUSMH+ダイエー(関東)+ピーコックストアなどを統合すること、京阪神ではダイエーとその子会社である光洋を統合することを発表した。トップシェア獲得を宣言しているなど気合いは十分だ。

 地方での存在感を確立したイオンは、全国制覇の総仕上げとして、大都市圏でのトップシェア確保を加速する、というステージのようだ。前段の図表1も、そんなイオンの大都市攻勢を裏付けるような出店だとみていいのだろう。

 ただ、首都圏、京阪神といった人口規模が大きく、かつ減少度も少ない大きなマーケットは強力なライバルも多い。イオンがM&A、再編を進めるだけで簡単に制覇できるような場所ではないようだ。

首都圏でイオンを待ち受ける「強力すぎるライバルたち」

 再編で言えば、首都圏地盤の西友を買収したトライアルは、融合を進めつつ西友の「トライアル化」を進めている。小型店のトライアルGOも投入して、急速なキャッチアップを狙っている状況だ。

 中部からはバローが横浜に初出店して話題を呼んだが、生鮮売場の集客力は凄まじい。中でも特徴的なのは鮮魚売場だ。以前の記事でも触れたように、さながらアトラクションのようでオープン直後には客でごった返していた。バローは「首都圏本格参戦」を宣言しており、目が離せない。

 そもそも、首都圏の有力食品スーパー(オーケー、ロピア、ヤオコー、ベルク、マミーマート、ベイシアなど)は、国内最強と言われるほどの競争力でしのぎを削り合っており、店舗ベースではイオンといえども勝っているとは言い難い。そんな中、イオンは規模とインフラといった総合力を投入した最終決戦に臨もうとしているのである。

 図表3は首都圏を地盤とするスーパーの売上と、近年の売上増加額(2018年度〜2024年度)を示したものだ。

 2024年、USMHにいなげやを迎えたイオンはグループとして首都圏でも既にトップシェアになっている。ただ、M&Aの結果として大きくなってはいるものの、傘下の個社を見るとちょっと見え方は変わる。というのも「売上をどれだけ伸ばしているか」、つまり個々の勢いという点では決して優位に立っているわけではないことが分かる。

 首都圏で大きく数字を伸ばしているのは、ヤオコー、オーケー、ベルクといったスーパーだ。これらのチェーンは1000億円単位で成長しているのに対して、USMH各社も業績を伸ばしてはいるが、1桁違い・数百億円の実績でしかない(ロピアは全国ベースなので参考値)。このうち、まいばすけっとが1300億円増と存在感を示すが、USMHの老舗銘柄は明らかに見劣りする。イオンがやっと築き上げた大都市圏でのトップシェアは必ずしも安泰とは言えないのだ。

イオンの「強力なライバル」になりそうな存在とは?

 さらに、今回のような駅前などに多い高層フロアを持つ総合スーパーの再生はこれまで「イオンの独擅場」と思われていたが、近年は強力なライバルも登場している。続く記事では、これからイオンと激しいバトルを繰り広げそうなそのライバルを中心に、今後の業界を展望をしてみる。

ドンキはイオンに勝てるのか? 新業態「ロビン・フッド」がスーパー業界にもたらしそうな“劇的変化”〉へ続く

(中井 彰人)