退職代行「モームリ」サービス受け付け再開でも…もう無理な社内の実態(森岡英樹/経済ジャーナリスト)
【経済ニュースの核心】
社内にはケアできる中堅社員が不在…GW明けは新入社員の「五月病」が激増する
退職代行サービス「モームリ」を運営する「アルバトロス」(横浜市)は4月23日、サービスの受け付けを再開したと発表した。
「明日からもうムリです」と、退職願を出せない若者たちの駆け込み寺として急成長してきた「モームリ」。累計4万人の利用者を抱え、メディアの寵児となっていた創業者の谷本慎二氏と、従業員である妻が電撃逮捕されたのは今年2月。
弁護士資格を持たないにもかかわらず、退職希望者を特定の提携弁護士に斡旋し、その見返りとして違法な紹介料(キックバック)を受け取っていた弁護士法違反、いわゆる非弁提携の疑いで警視庁に逮捕された。その後、法人としての同社や提携先の弁護士らも書類送検される事態に発展した。
谷本氏は、YouTubeやSNSで「ブラック企業から救う」と豪語していたが、自ら“ブラックな実態”を露呈する皮肉な結果となった。
「モームリ」は事件後、公式SNSで、「営業時間の縮小に伴い、一旦新規のお申し込み(リピーター含む)および無料相談の受付を停止させていただく」とアナウンス。事実上の休業状態に陥り、業界内では「このままフェードアウトするのでは」と囁かれていた。
そうした中、谷本氏に代わってアルバトロスの新代表取締役に浜田優花氏が4月1日付で就任した。浜田氏は直近まで広報を担当していた若手の女子社員だ。なぜこのタイミングで急転直下の代表交代に踏み切ったのか。
SNS上では、「4月1日。退職依頼が増える前に新代表を立てたということか」「おそらくGW明けにはかなりの依頼が来るからだろう」といった特需狙いを指摘する声や、「広報からの抜擢なら結構な出世だが、不祥事の後だけに完全に火中の栗を拾うようなもの」と新代表を案じる書き込みが散見された。さらに、「株主は前の社長のままだろうから、どうせお飾り社長でしょ」といった辛辣な意見も少なくない。
金融関係者は、「モームリの新社長は表の看板で、その裏でマスコミ対応を仕切っている男性がキーになると思います。次の焦点は株式をどうするのかに移ります」と分析する。谷本夫妻は逮捕されたが、依然として「アルバトロス」の株式を掌握している。
「アルバトロスは22年2月の創業後、23年1月の売上高は1000万円だった。そこから24年1月には9800万円、25年1月には一気に3億3000万円まで売上高を急増させた」(金融関係者)という。
その背景には、谷本夫妻による「恐怖政治にも似た社員の締め付けがあった」(同関係者)とされる。同社の元社員の中には、「他社の退職代行」に依頼し、逃げるように辞めていった社員も少なくないという。
アルバトロスは新規受け付けの再開理由について、「紹介料の受領に関して起訴されたものであり、現時点において、当社が提供する退職代行モームリのサービス自体に関する司法判断が示されたものではありません」としている。
しかし、大手信用情報機関の東京商工リサーチが4月に実施した退職代行に関する企業向けアンケート調査では、弁護士や労働組合以外の「退職代行」業者から連絡があっても、約3割に非弁行為が含まれる可能性があり、取り合わないと回答している。モームリは営業再開してもその前途は“もう無理”かもしれない。
(森岡英樹/経済ジャーナリスト)
