政権発足から半年…高市首相が支持されるのは「特定の政策ではなく“威勢のよさ”」…保守層の支持を左右する最大の関門が「8月15日」と指摘される理由
第2回【「堂々と大臣が」発言も「竹島の日」閣僚派遣を見送り、外国人政策は「ゼロベースで」…「高市首相」高支持率でも懸念は“保守層の失望”】からの続き──。首相の高市早苗に対し、保守派の識者や有権者が批判を強めている。2月22日に行われた島根県主催の「竹島の日」記念式典では閣僚派遣を見送った。外国人労働者問題でも「特定技能2号の上限は設定していない」と国会で答弁し保守派の不興を買った。【村田純一/時事通信社解説委員】(全3回の第3回:一部敬称略)
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そして東京・九段北の靖国神社が4月21〜23日に行った春季例大祭に合わせた参拝も見送った。閣僚在任中を含め高市は春と秋の例大祭中の参拝をほぼ欠かさなかった。

自民党の保守グループ「保守団結の会」共同代表の衆院議員・高鳥修一は、高市が初めて総裁選に出馬した時に推薦人をかき集めて支援してきた「縁の下の力持ち」的な存在だ。
旧安倍派に一時所属し、裏金問題の影響もあって2024年衆院選では落選したが、先の衆院選で返り咲いた。その高鳥に「高市首相は保守強硬派か」と単刀直入に問うと、「いや、決して強硬派ではない」とあっさり答えた。
「少なくとも私に比べれば、高市首相はリベラルだと思う。どの世論調査を見ても、内閣支持率は6〜7割ある。高市さんへの支持が離れてしまったら、やりたい政策もできなくなる。まずは安定した長期政権にしなければならない。ここで高市政権がつぶれたら、どうなるか。野党がばらばらで政権交代はないとはいえ、自民党内で政争が始まるのは望ましくない。今、穏健な保守層、若い人たちも含めて保守層は確実に増えている。だけど、その人たちは離れていく可能性もある。もっと安定した力をつけないといけない」

首相を支持する原因は「威勢の良さ」
「もっと安定した力をつけないといけない」と高鳥は繰り返した。幅広い保守層の支持を失わない政権運営や政策実現が大事だということだろう。そのためには高市の立ち位置は保守強硬派というより穏健保守のほうが望ましいということかもしれない。
では元自民党事務局長で選挙・政治アドバイザーの久米晃は高市の政治姿勢や今後の行方をどう見ているのだろうか。
「保守、保守といっても、(高市を支持する)岩盤保守層なんてものはないと思っている。自民党全体の支持層が保守であって、保守層も(右から左まで)いろいろあって、ふわっとしたものだ。高市さんへの支持も、憲法改正、防衛力増強といった特定の方針・政策が支持されたわけじゃない。政策の中身というより、高市さんの『威勢の良さ』『勇ましさ』が支持されたと思う」
「高市さんの場合、安倍さんより一歩踏み込んで、威勢のいいことを言う。竹島問題にしたって、式典に閣僚を必ず出すようなことを言っていたけど、出したのは政務官。総裁選の時に勇ましいことを言っても、実際にできないと、つまずくことになる」
「高市さん的な“暴支膺懲(ぼうしようちょう)”路線は必ずつまずくと、僕は前から言っていた。暴支膺懲というのは日中戦争時、日本政府が掲げた『暴れる中国(暴支)を懲らしめよ(膺懲)』という意味のスローガン。『中国をやっつけろ』みたいな姿勢を続けていたら、必ずどこかでつまずく」
政権を襲う“期待外れ感”
「総裁選の時にいろいろ言ってきたことが今、景気対策を含め実現不可能になっている。“アメリカ・イラン戦争”とか外的要因があるけど、結果として何もできなければ、高市さんに対する期待外れ感がこれからどんどん出て来る。今までは、期待値が高いから内閣支持率も高かったけど、これからは結果に対する評価だ。期待値が高い分、実現できなかったら落胆も激しいだろう。これからが大変だ。8月15日の靖国参拝はどうするか。終戦記念日は関門だね」
高市の首相としての靖国参拝について、高鳥は「そりゃ、ぜひ行くべきだと思う」と述べた。
ただ、「私は行ってほしいと思うけど、根回しはちゃんとしないといけない」とも語る。この「根回し」とは、中国に対するものではなく、米国の理解を得るための根回しだという。
「中国は(靖国参拝を)賛成とは言わない。安倍さんは(首相就任後)靖国参拝したけど、その後は参拝を思いとどまった。米国の反対があったからだろう。しかし、どこの国でも、戦没者に対して敬意を表するのは当たり前の話。いろいろ理屈をつける人はいるけど、多くの日本人が望んでいることだ。戦没者の遺族の人は、何が何でも首相に行ってほしいと思っている」
参拝を見送る可能性
高市が中国・韓国などへの外交的配慮で靖国参拝を見送った場合、高市を支持する保守層は失望するのではないか。高鳥にそう聞くと、「心ある人は理解すると思う」と述べた。
高市がどう判断しようと尊重し、一部を除き、多くの保守層は理解してくれるとみているようだ。高市は夏の靖国参拝について、改めて決断を迫られるが、現状では参拝しない可能性の方が高いとみる。
高市首相が4月の靖国参拝を見送ると、ネット上では批判が殺到して炎上した。同じことが8月15日に起これば、より大規模に炎上する可能性は否定できない。第1回【「皇室典範」「憲法」改正に意欲も支持層の“高市離れ”じわじわと…勇ましいアピールのウラで囁かれる「高市早苗首相は本当に“保守政治家”なのか」】では、「ビジネスエセ保守」との誹謗中傷すら飛び出した高市氏の政治姿勢について詳細に報じている──。
村田純一(むらた・じゅんいち)
1986年、時事通信社入社。90年から政治部。海部政権で首相番。平河クラブで自民党の小渕恵三幹事長、小沢一郎竹下派会長代行らを取材。民社党、公明党を担当後、羽田政権、村山政権で首相官邸を取材。96年経済部で経団連など財界担当。97年政治部に戻り、山崎拓政調会長番。選挙班長、防衛庁担当などを経て、2001年8月からワシントン特派員。05年2月帰国。外務省キャップ、政治部次長、福岡支社長などを経て20年7月より時事総合研究所代表取締役。23年6月より現職(時事総研研究員兼務)
デイリー新潮編集部
