―6万円大台乗せは大相場の序奏か、それとも崩落の足音に耳を澄ます時?―

 2026年の東京株式市場は、干支の「丙午」よろしく年初から春先にかけて燃え盛る火を彷彿とさせるような上昇相場へと突入。3月に調整を入れたものの、4月に入ってからは再び強烈な上値追い態勢に移行した。問題はここからである。ゴールデンウィークを通過して年後半相場へと向かうなかで、日経平均株価はどのような軌道を描くのか。更に、この先どういったセクターや銘柄が投資対象として人気を博すのか。26年の年央から年末にかけての相場展望について、鋭い考察力とコメントに定評があり、個人投資家動向にも詳しい松井証券の窪田朋一郎氏に見通しを語ってもらった。

(聞き手・中村潤一)

●「秋口にかけて7万円台視野も年末にかけて調整」

窪田朋一郎氏(松井証券 理事 チーフマーケットアナリスト)

 今年後半の東京株式市場では秋口にかけて日経平均が上値追い基調を強める公算が大きいとみている。日経平均は、短期的には中東情勢を巡るニュースフローなどに左右され下値を探る場面があっても、基本的に上値指向で9~10月ごろに7万円台に乗せても不思議はないと考えている。

 中東情勢については(4月末現在で)依然として着地点が見えず、ホルムズ海峡が完全に開放されるまでにはまだ時間がかかる可能性がある。また、仮に米国とイランの間で和平交渉が成立し、中東有事が収束に向かったとしても原油価格がすぐに低位で安定するかどうかは定かではない。製油工場の再稼働に時間がかかるため、供給側にタイムラグが生じてしまうからである。企業業績への影響は少し長いタームで見極めていく必要がある。

●インフレ環境下で株価はトルコ型の上昇へ

 4月の日銀金融政策決定会合で政策金利の現状維持(0.75%)は織り込み済みであったが、政策委員9人のうち3人が反対票(利上げの必要性を主張)を投じた。これを同日の株式市場は嫌気したとはいえ、インフレ圧力が意識されるなか、3人が反対票を投じたこと自体にサプライズ感はない。今回、日銀の展望リポートでは26年度の消費者物価指数(CPI)の見通しについて前回予想から大幅に引き上げた。従前は上昇率を1.9%としていたが、これを2.8%に大きく引き上げている。更に27年度についても、これまでの2.0%から2.3%に上方修正した。次回7月以降の展望リポートで、物価見通しは一段と上振れする余地がある。

 こうした状況下で日銀による利上げの蓋然性は高まるが、それでも利上げは多くて6月と12月の年内2回にとどまるとみている。インフレに対し金融引き締めが後手後手に回る状況が予想されるのだが、これは東京市場に「トルコ型の株高」をもたらす背景となり得る。つまり、物価上昇が恒常的にトレンド化していくなかで中央銀行の金融引き締めが思うように進展せず、株式市場はインフレに連動もしくはそれに輪をかけて上げ足を加速させるというパターンである。6月の利上げについてマーケットはおおむね織り込んでおり、これは株価上昇の足かせとはなりにくい。したがって、秋口に日経平均7万円台乗せというシナリオが本線となる。

●秋口以降は調整圧力が顕在化する可能性も

 もっとも、年末まで日経平均の上値追いが続くとも考えていない。その後は原油価格の推移がカギを握るなか、モメンタム相場の流れが一服すれば企業業績への影響が意識されやすくなる。現状は26年度の企業業績に関して全体で増益を見込んでいるが、原油価格が一向に低位安定しないケースでは、これが覆る可能性も十分にある。WTI原油先物価格で1バレル=100ドル前後の水準で高止まりするケースが想定され、消費マインドが冷え込んだなかでの物価上昇、いわゆるスタグフレーション的な経済環境は完全には払拭できず、くすぶり続けることになりそうだ。