《交代で子育てを担う事情も?》玉木宏&木南晴夏、波瑠&高杉真宙、小雪&松山ケンイチ…民放各局で俳優夫婦の連ドラそろい踏みが相次ぐ背景とは
春ドラマのラインナップが出そろったが、最近の連続ドラマのキャストに興味深い傾向が見られるという。俳優夫婦の同クール出演とリレー出演が増えているのだ。その背景についてコラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
【写真】二の腕がムキムキ…公園でピクニックをする玉木宏と木南晴夏。他、“お揃い”のデニムパンツを履いて、出かける白セーター姿の波瑠と黒ジャケット姿の高杉真宙なども
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4月も終わりが近づき、ようやく春ドラマがそろいましたが、ネット上でチラホラと話題になっているのが俳優夫婦の出演。前期の冬ドラマから今期の春ドラマにかけて、俳優夫婦に関するちょっと興味深い傾向が見られます。
今春は、波瑠さんが日本テレビ系水曜22時の『月夜行路―答えは名作の中に―』、高杉真宙さんがフジテレビ系木曜22時の『今夜、秘密のキッチンで』に出演。
小雪さんがフジテレビ系月曜22時の『銀河の一票』(カンテレ制作)、松山ケンイチさんがTBS系火曜22時の『時すでにおスシ!?』に出演。
高橋一生さんがテレビ朝日系火曜21時の『リボーン〜最後のヒーロー〜』に出演するほか、5月4日放送のNHK総合スペシャルドラマ『泉京香は黙らない』で飯豊まりえさんと共演。
山口智子さんがTBS系日曜21時の『GIFT』、唐沢寿明さんが4月18日放送のテレビ朝日系スペシャルドラマ『無垢なる証人』に出演。
さらに前期も、反町隆史さんがフジテレビ系水曜22時の『ラムネモンキー』、松嶋菜々子さんがテレビ朝日系木曜21時の『おコメの女―国税局資料調査課・雑国室―』に出演。瀬戸康史さんがテレビ朝日系火曜21時の『再会〜Silent Truth〜』、山本美月さんが日本テレビ系金曜24時30分の『おとなになっても』に出演。同クールでの俳優夫婦のそろい踏みが続いています。
また、フジテレビ系木曜22時は、前期が玉木宏さんの『プロフェッショナル 保険調査員・天音蓮』、今期が木南晴夏さんの『今夜、秘密のキッチンで』と同枠主演リレー。TBS系では前期は西野七瀬さんが火曜22時の『未来のムスコ』、今期は山田裕貴さんが日曜22時の『GIFT』へ同局出演リレー。さらに前期は菊地凛子さんがフジテレビ系日曜23時の『嘘が嘘で嘘は嘘だ』、今期は染谷将太さんがTBS系金曜22時の『田鎖ブラザーズ』にリレー出演しました。
ここにきてなぜ俳優夫婦の同クール出演とリレー出演が増えているのか。各局はどのような戦略で俳優夫婦を起用しているのか。その背景を掘り下げていきます。
ターゲットの上限拡大で需要アップ
現在、民放各局が目指すのは幅広い世代のリアルタイム視聴。
スポンサーの意向を踏まえると、最も訴求したいのはコア層(主に13〜49歳)であることは変わっていません。しかし、配信視聴が多いこの世代で視聴率を獲得していくことは至難の業。50代以上を含む全年代の個人視聴率を獲得していくことが現実的な目標に変わりました。それはこれまで若者向けの恋愛ドラマを制作してきたTBS系22時の火曜ドラマで55歳の永作博美さんが主演を務める『時すでにおスシ!?』を放送していることからもわかるでしょう。
だからこそ中高年層にも訴求できる俳優夫婦の重要性が増しています。幅広い年代からの知名度がある上にもちろん実力は申し分なし。美男美女で夫婦仲のいいイメージや、子育てと両立している好印象などが、夫婦そろって活躍することで相乗効果のように上がっています。
前述した俳優夫婦はそのほとんどが広告業界での評価が高く、かつてのように「結婚でファンが減って視聴率が取れない」のではなく、「むしろ結婚していたほうが好ましい」というムード。もともと40代以上の中高年層は子どものころからテレビで芸能人同士のスターカップルを見て育ってきた世代だけに、令和の今でもそれを好ましく見ると言われています。「芸能人のスターカップルは俳優同士の組み合わせくらいしかいなくなった」と言われることも起用を後押しする理由の1つでしょう。
また、民放各局としては、2020年代に入ってドラマ枠が増えてキャスティングの難しさが増したことも俳優夫婦へのオファーが相次いでいる理由の1つ。
「人気の俳優夫婦には少なくともどちらかはドラマに出てもらって所属事務所も含め縁をつないでおきたい」などの思惑があります。実際、あるドラマプロデューサーは「理想を言えば1年のうちに夫婦両方。でも難しいので現実的には2年くらいの間でどちらかは押さえたい」と言っていました。
交替で子育てを行う俳優夫婦も
一方、俳優夫婦の事情としては、「制作サイドの理解が進み、プライベートを配慮したスケジュールが組まれることが多くなった」という背景があります。
特に幼い子どもを持つ俳優夫婦は「どちらかが活動ペースを下げる」か、「受ける役柄の幅や出演クールを調整する」という選択が主流。出産や子育て中も「技術やニーズを保つ」などの理由から、できるだけ俳優としてのブランクを作りたくないと考える俳優夫婦が少なくありません。「作品に集中したい」という意味でクールごとに順番でドラマ出演し、交替で育児と家事を担うという俳優夫婦もいます。
特に近年は30代から50代のパパママ俳優が充実。前述した人以外でも、前期の『リブート』(TBS系)に出演した戸田恵梨香さんと来年の大河ドラマ『逆賊の幕臣』(NHK総合)を控える松坂桃李さん、今期の『田鎖ブラザーズ』(TBS系)主演の岡田将生さんと公開中の映画『ウィキッド 永遠の約束』の日本語吹き替え主演を務める高畑充希さん、今夏に2クールドラマ『VIVANT』(TBS系)の主演を控える堺雅人さんと公開中の映画『90メートル』で主演を務める菅野美穂さんなど、人気と実力を兼ね備えた俳優夫婦がそろっています。
さらに上戸彩さん、蒼井優さん、北川景子さん、石原さとみさん、多部未華子さんら幼い子どもを育てながら活動している女優が多く、「自分も頑張りたい」「私だけ休んでいられない」などと刺激を与え合っているようなニュアンスが感じられます。
スポンサー企業にとっても人気の俳優夫婦は「現在CMに出演中」、または「過去に出演していた」、あるいは「今後出演してほしい」という存在。民放各局がその意向を汲んでキャスティングするというケースをよく聞きます。
民放各局、俳優夫婦本人、スポンサー企業、それぞれの状況や希望が一致したウィン―ウィン―ウィンの関係性だけに、今後もこの状態は続いていくのではないでしょうか。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。
