購買力の高いパワーファミリーは、どんなことにお金を使っているのか。世帯年収1500万円以上の夫婦共働きフルタイム層を対象にしたインテージの調査によると「例えば『タイパ』につながる商品や、自分を磨くためのサービスを積極的に消費する姿が見えてくる」という――。

※本稿は、株式会社インテージ『なぜ日本人は、それを選ぶのか? データで読み解く時間とお金の使い方』(朝日新書)の一部を再編集したものです。

■お金持ち一家のお金のかけどころ

前回述べたように、パワーファミリー(以下パワー層)では、夫婦が協力して家事を行っている実態が見えてきました。

では具体的に、どのような商品を所有し、どのようなサービスを利用して生活しているのか、お金のかけどころを見ていきます。

パワー層と一般層の間で保有率の差が顕著なのは、「ロボット掃除機(23.9ポイント差)」、「ドラム式洗濯乾燥機(21.2ポイント差)」、「食器洗い乾燥機(21.1ポイント差)」でした(図表1)。

出典=『なぜ日本人は、それを選ぶのか?』(朝日新書)

夫婦がフルタイムで働き子育てを行うパワー層では、家事を効率化できる(タイパにつながる)商品を多く所有している傾向があることがわかります。

■「時間をお金で買う」パワー層

さらに、パワー層へ今後欲しい商品/サービスを聞くと、「ロボット掃除機」8.8%、「自動掃除機能付きトイレ」7.9%、「自動掃除機能付き浴槽」6.7%、「電気調理鍋」6.4%といった省力化/自動化ができる商品や、「掃除代行」7.6%、「家事代行」5.8%といった代行サービスが選ばれていました(図表2)。

出典=『なぜ日本人は、それを選ぶのか?』(朝日新書)

家事の負担や時間をさらに短縮できる商品やサービスが望まれていることがわかります。

また、「マッサージ機」7.5%、「美容家電」6.1%など、疲れを軽減し、リラックスするための商品も見られました。

夫婦共働きで収入はあるが、時間が無いパワー層にとって、子どもと触れ合う時間、学びや趣味の時間、睡眠や休息の時間は、かけがえのない価値があるのではないでしょうか。そのために自分たちの時間を創出するための最新家電・設備、代行サービスなどに注目が集まっていると思われます。

「楽をする、手間を省く」の旧来のちょっとサボっているようなネガティブなイメージではなく、「時間をお金で買う」、そしてもっと大事な事に時間を使うというポジティブな考え方がパワー層を中心に今後広がっていくと考えられます。

■パワー層が3日以上の休暇でやりたいこと

では、もしまとまった時間ができたとしたらパワー層は何をしたいのでしょうか。

今後3日以上の休みができたら行いたいことを聞いてみました(図表3)。女性20〜39歳に着目してみると、パワー層では「海外旅行」33.2%、「趣味に没頭する」18.9%、「美容・エステ」14.8%、「コンサート・ライブ・観劇に行く」14.6%、「資格取得に向けてのスキルアップ」13.6%が挙がりました。

出典=『なぜ日本人は、それを選ぶのか?』(朝日新書)

一般層の女性20〜39歳では、「マッサージ」「コンサート・ライブ・観劇に行く」「温泉」「友達と出かける」が上位に挙がり、友人や家族と一緒に過ごす内容が多いことがわかります。

一方、パワー層では“個”での活動が上位に挙がっており「自分に投資する」傾向が見られます。

この傾向は女性で顕著であり、より自分を内面・外見ともに磨き、さらに豊かな生活を手に入れるとともに、仕事でも上位を目指す貪欲なスタイルが見えてきたのではないでしょうか。

■パワー層に有効な「時短」サービス

今まで見てきた“パワー層は時間が無いから「タイパ」を重視する”という姿のほかに、休日を謳歌するだけでなく、自分を磨く積極的な姿が見えてきました。

パワー層は一般層と比較し、レジャー、サービス分野においても支出額が多いことが読み取れます。

パワー層をターゲットとした商品・サービス開発においては「時間」をキーワードにすることが有効です。例えば「時短により今の生活を豊かにする」商品やサービスとして、「タイパ家電」「宅配食」「代行サービス」などが挙げられます。

また、「将来の時間を豊かにする」商品やサービスとしては、「視点を広げるワーケーション」「パーソナルコーチ(仕事、資産、生活)」などが考えられ、幅広いビジネスの発想が広がるのではないでしょうか。

■パワー層が個人で自由に使える金額

パワー層と、一般層のお金事情を比較してみたところ(図表4)、パワー層の1カ月の生活費(税込)平均は44.7万円、一般層は25.6万円であり19.1万円の開きがありました。

出典=『なぜ日本人は、それを選ぶのか?』(朝日新書)

また、パワー層が1カ月に自由に使える個人のお金(税込)平均は18.4万円、一般層は8.2万円であり、こちらも10.2万円の開きがあります。

パワー層は生活費が1.7倍多く、自由に使える個人のお金も2.2倍多いことから、この差が豊かな購買力の高さにつながっていることがうかがえます。

貯蓄に関して、パワー層の収入に対する貯蓄割合は26.0%、一般層は14.4%であり両者に11.6ポイントの差がありました。

貯蓄目的を調べると、パワー層と一般層の差が顕著だったのは「資産運用や投資のための資金(18.1ポイント差)」、「旅行のための資金(11.6ポイント差)」、「老後の資金(9.6ポイント差)」であり、逆に一般層の回答比率が高かったのは、「生活のための資金(生活費の補填)(▲8.5ポイント差)」、「子どもの教育資金(▲5.2ポイント差)」でした(図表5)。

出典=『なぜ日本人は、それを選ぶのか?』(朝日新書)

パワー層では投資や娯楽を目的とした貯蓄、一般層では生活や教育にかかる資金のために貯蓄をしている姿が見えました。

■パワー層が求める商品の価値観

この回ではお金/購買力をテーマとして、生活者調査のデータを基に、日本人の貯蓄・投資傾向、購買力の高い層(富裕層・パワーファミリー)の実態を見てきました。

この10年、日本の家計は「貯蓄から投資へ」。若年層で投資参加が急伸し、年代差は縮小してきています。

全体は“全世代投資”へシフトしたと言えるでしょう。他方では、高齢層の一部は手仕舞い傾向が見え、運用姿勢の二極化が進むと考えられます。

次に購買力の高い層を見ると、富裕層は京浜の都心部集中。招待制のブランドイベントや外商サロン、別荘滞在など“限定性×体験”に価値を置き、商品選択への強い「こだわり」、自分の快楽や成長など「自分軸」への投資、他者との違いや同じ富裕層同士の「ステータス志向」が購買へのスイッチになっています。

パワーファミリーは共働きであるがゆえ、ロボット掃除機や乾燥機、代行サービスなどタイパ投資が進み、余暇は旅行や自己研鑽に配分している姿が見て取れました。

家事や子育ては夫婦協力型で、家電・サービスに“段取りの良さ”を求める傾向が強いことがわかりました。

■富裕層やパワー層へのサービスの決め手

これらの傾向を踏まえ、特に購買力の高い富裕層への打ち手としては、例えば、富裕層にコミュニティ化された限定体験、コンシェルジュ同伴のパーソナル提案、保有体験のアップデート(保守・アップグレードの自動化)などが考えられます。

株式会社インテージ『なぜ日本人は、それを選ぶのか? データで読み解く時間とお金の使い方』(朝日新書)

パワーファミリーに対しては“面倒ゼロ”の設置込サブスク、家事分担に効くUI/UXの提供、ワーケーションや学びと絡めた短期パッケージ等で、時間を買う価値を前面に出すことが有効になると思われます。

このようにマーケティングにおいて、ファーストステップであるSTP(Segmentation〈セグメンテーション〉、Targeting〈ターゲティング〉、Positioning〈ポジショニング〉)の、ターゲティングを行ううえで、購買力が高い層を選ぶことは、成功のためのパラメーターになるのではないでしょうか。「富裕層」「パワーファミリー」はともに、有力なターゲットになりえます。

商品やサービスに対して、「富裕層」「パワーファミリー」の行動や考え方の解像度をさらに上げ、彼らのニーズに沿った提供価値を創出することが重要な課題になっていくと考えられます。

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株式会社インテージ(かぶしきがいしゃ・いんてーじ)
マーケティングリサーチ会社
1960年に創業。インテージグループは、日本のみならずアジアNo.1(*)のマーケティングリサーチ会社であり、生活者の意識・行動データを長年にわたり蓄積・分析している。全国規模の消費者パネルデータや各種調査を通じて、消費・メディア・社会意識の変化を定点観測し、企業・行政・研究機関にも知見を提供。事業ビジョンとして「Create Consumer-centric Values」を掲げ、生活者中心マーケティングの実現・支援に力を尽くしている。本書では、同社が長年培ってきたデータと分析知をもとに、現代社会の実像を読み解く。 *「ESOMAR’s Global Top-50 Insights Companies 2025」に基づく(グループ連結売上高ベース)
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(マーケティングリサーチ会社 株式会社インテージ 文=未来共創センター長 濱賢太郎)