【磯部 孝】古着業界が激変「セカンドストリート」がチェーン店なのに”イケてる個人店”を駆逐している理由
物価上昇が長期化し、家計防衛意識が強まるなか、衣料品や家電、ブランド品など中古(リユース)市場への注目が一段と高まっている。
新品価格の上昇に対し、品質と価格のバランスを求める生活者が増えたことに加え、サステナビリティ意識の浸透も追い風となった。国内リユース市場規模は2024年時点で約3.3〜3.5兆円(リユース経済新聞推計)に達し、15年連続で拡大。2030年には4兆円規模に達するとの見方もある。
かつては“節約消費”の代替手段と見られていた中古市場が、いまや成長産業として再評価されている。
ゲオ=「セカスト」が収益の柱に
リユース市場の象徴的存在が、業界首位のゲオホールディングスである。祖業であるレンタル事業から事業構造転換を進め、現在はリユースが収益の柱となった。
2025年3月期売上高4276億円のうち、衣料・服飾雑貨は1021億円と実に約4分の1を占める。今年10月には社名を「セカンドリテイリング」へ変更予定であり、主力業態「セカンドストリート」、通称“セカスト”への経営資源集中がより鮮明になりつつある。
セカンドストリートの国内店舗数は2026年2月末時点で928店。1年間で48店増加し、2027年3月期には“1000店体制”を視野に入れる形だ。
なかでも注目すべきは単なる多店舗化ではなく、立地特性に応じて業態を細分化する緻密な出店戦略である。衣料専門店、総合リユース、ブランド専門、買取専門、アウトドア特化など、商圏人口や物件面積、競合環境に応じて最適フォーマットを投入し、空白市場を埋めてきた。
さらに、同一商圏内で複数店舗を展開する場合も、取扱カテゴリーを変えることで自社競合を回避する。成熟市場におけるドミナント戦略の高度化と言えるだろう。
そんなセカンドストリートの戦略が垣間見えるスポットとして、まず挙げられるのが古着の聖地、東京・下北沢だろう。
“古着の聖地”シモキタでも個人店を圧倒
いまや下北沢は国内有数の古着集積地として知られる。北沢2〜3丁目を中心とした半径1km圏内には、大小163店舗(『シモフル』掲載ベース、2026年3月末時点)が集積する。
このエリアにセカンドストリートは、下北沢店・下北沢東店・下北沢南口店(開業予定)・楽器専門店の計4店舗体制を構築。とりわけ下北沢東店はメンズ・ヴィンテージ古着特化型とし、近接立地でも明確な差別化を図っている。
ちなみに、競合するトレジャーファクトリーも「トレファクスタイル」という業態を2店舗展開しており、個人店主体だった古着市場に大手資本が本格参入する構図が鮮明になってきた。
かつて古着店は、店主の審美眼や買い付け力によって成立する、いわば「属人的ビジネス」だった。しかし現在は、物流網、在庫回転率、価格データベース、SNS発信力を備えたチェーン企業が優位性を持ち始めている。
古着市場もまた、日本のアパレル小売業と同様に“優勝劣敗”の局面へ入りつつあるのだ。
古着市場に起きている「ある変化」
一方で、古着市場の中身が変化していることをご存じだろうか。
かつて古着人気の中心は「安くて一点モノ」「人と被らない個性」にあった。しかし店舗数増加と流通量拡大により、単なる低価格訴求だけでは差別化が難しくなった。
その結果、現在注目されているのが希少性モデルである。たとえばLevi’s(リーバイス)のファーストモデル、通称506XXのTバック仕様(スプリットバック)はその最たるもの。状態次第では数百万円から数千万円規模で取引されている。
復刻やレプリカモデルも即完売するなど、ヴィンテージ市場は独自の熱量を保っている。つまり古着市場は、「節約需要」と「投資・収集需要」の二層構造へ進化した。
日常着としての中古衣料と、資産価値を持つコレクターズアイテムが同時並行で拡大しているのである。
つづく【後編記事】『外国人の間で「日本の古着」が絶賛されている明快な理由…《ユーズドインジャパン》が世界的に評価される時代に』では、古着ブーム第2章を支えるインバウンド需要の潮流、そしてセカンドストリートが推し進める海外展開について詳しく解説していく。
【つづきを読む】外国人の間で「日本の古着」が絶賛されている明快な理由…《ユーズドインジャパン》が世界的に評価される時代に
