「乳がんの骨転移」を疑う時に行われる”4つの検査”とは?医師が解説!

乳がん骨転移の診断に用いられる検査法とは?メディカルドック監修医が、骨シンチグラフィやPET検査のほか、全身療法と局所療法の組み合わせを解説します。

※この記事はメディカルドックにて『「乳がんのステージ1でも骨転移」する可能性はあるのか?検査法も医師が解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
石橋 祐貴(医師)

【経歴】
奈良県立医科大学卒業
2013年に東大病院整形外科・脊椎外科教室に入局。
整形外科の腫瘍領域である『骨軟部腫瘍』を専攻し、都立駒込病院、東京大学病院助教・特任臨床医として勤務。

【診療科目】
整形外科全般、がん骨転移、骨軟部腫瘍領域、緩和ケア領域など

【資格等】
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医
がん治療認定医
認定骨軟部腫瘍医

乳がんのステージ分類


乳がんのステージは、がんの進行度を示す指標であり、治療方針を決定するうえで重要です。ステージは、以下の3つの要素を組み合わせて決定されます。1)

T(Tumor:腫瘍の大きさ)
原発巣である乳房内のがんの大きさや、周囲組織への広がりを示します。 N(Node:リンパ節転移)
がん細胞が近くのリンパ節(特に腋窩リンパ節)に転移しているかどうか、転移している場合のリンパ節の数や大きさを示します。 M(Metastasis:遠隔転移)
がん細胞が乳房やリンパ節から離れた臓器(骨、肺、肝臓、脳など)に転移しているかどうかを示します。

これらのTNM分類に基づいて、乳がんはステージ0からステージIVまでの段階に分けられます。

ステージ0(非浸潤がん)
がん細胞が乳管や小葉の中にとどまっており、周囲に浸潤していない状態です。 ステージI
腫瘍が小さく(2cm以下)、リンパ節転移や遠隔転移がない状態です。 ステージII
腫瘍がやや大きいか(2cm超5cm以下)、リンパ節転移があるが遠隔転移がない状態です。 ステージIII
腫瘍がさらに大きいか、広範囲のリンパ節転移がある、または胸壁や皮膚に浸潤しているが、遠隔転移がない状態です。 ステージIV
遠隔転移が確認された状態です。骨、肺、肝臓、脳など、乳房から離れた臓器にがんが転移しています。

乳がん骨転移の検査方法


乳がんの骨転移が疑われる場合や、定期的なスクリーニングのために、さまざまな検査が行われます。

骨シンチグラフィ

骨シンチグラフィは、骨転移のスクリーニングに広く用いられる検査です。放射性医薬品を静脈注射し、それが骨の代謝が活発な部位(骨転移巣など)に集積する様子を画像化します。全身の骨を一度に評価できるため、多発性の骨転移や、症状が出ていない部位の転移を発見するのに有用です。ただし、骨折や炎症など、がん以外の原因でも集積が見られることがあるため、ほかの検査と組み合わせて診断します。

PET検査(PET-CT)

PET検査(陽電子放出断層撮影)は、ブドウ糖に似た放射性薬剤(FDG)を注射し、がん細胞が活発にブドウ糖を取り込む性質を利用して、全身のがん病変を検出する検査です。骨転移だけでなく、ほかの臓器への転移も同時に評価できるため、全身のがんの広がりを把握するのに役立ちます。PET検査は、骨シンチグラフィよりも小さな転移巣を発見できる可能性がありますが、費用が高く、すべての施設で実施できるわけではありません。

画像検査(CT、MRI、X線)

主な画像検査は下記のとおりです。

X線検査

CT検査(コンピュータ断層撮影)

MRI検査(磁気共鳴画像)

X線検査は、骨転移の有無や形態を簡便に確認できますが、小さな病変や骨の重なりがある部位では見逃されることがあります。CT検査では、骨の破壊の程度や、周囲の軟部組織への広がりを詳細に評価できます。特に、病的骨折のリスク評価や、手術の計画に有用です。
MRI検査は骨髄内の病変や、脊髄・神経根への圧迫の有無を評価するのに優れています。神経症状がある場合や、脊椎転移が疑われる場合に特に有用です。

血液検査

血液検査では、骨代謝マーカーや腫瘍マーカーなどを測定し、骨転移の有無や活動性を間接的に評価します。

骨代謝マーカー

骨が破壊される際に放出される物質(例:ALP、TRACP-5b、NTXなど)や、骨が形成される際に放出される物質(例:BAP、PINPなど)を測定することで、骨の代謝状態を把握し、骨転移による骨破壊の程度を推測します。4)

腫瘍マーカー

乳がんの腫瘍マーカー(例:CEA、CA15-3など)の数値が上昇している場合、がんの活動性が高まっている可能性があり、骨転移の存在を示唆することがあります。5)

これらの検査は、患者さんの症状や病歴、これまでの治療経過などを考慮して、主治医が適切に選択・組み合わせて行われます。

乳がんについてよくある質問

ここまで乳がんを紹介しました。ここでは「乳がん」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

初期の乳がんも骨に転移することがあるのですか?

はい、まれにですが、初期の乳がん(ステージ1など)と診断された後でも骨転移が判明することがあります。これは、診断時に画像検査ではとらえきれない微小な転移がすでに存在していた場合(潜在性転移)などが考えられます。そのため、ステージが早期であっても、治療後も定期的な経過観察と、体調の変化に注意を払うことが重要です。

乳がん骨転移の治療法を教えてください。

乳がん骨転移の治療は、大きく分けて乳がんそのものに対する全身療法と骨病変に対する局所療法の2本柱で行われます。全身療法としては、ホルモン療法、化学療法(抗がん剤)、分子標的治療、免疫療法などがあり、がんの進行を抑制することを目的とします。
骨病変に対する局所療法としては、痛みの緩和や骨折予防のための放射線治療、骨の安定化や神経圧迫解除のための手術、骨の破壊を抑える骨修飾薬(ビスホスホネート製剤、デノスマブなど)の使用、痛みを和らげるための鎮痛薬などがあります。

骨転移した乳がんの余命はどの程度ですか?

骨転移した乳がん(ステージIV)の余命は、患者さん一人ひとりの状態によって大きく異なり、一概に〇年と断定することはできません。がんのサブタイプ、転移部位の数と広がり、これまでの治療歴と効果、全身状態、治療への反応性など、さまざまな要因が影響します。

まとめ


乳がんの骨転移は、ステージ1と診断された後でも起こりえる可能性があり、その症状は痛み、病的骨折、神経症状、高カルシウム血症など多岐にわたります。骨転移の診断には、骨シンチグラフィ、PET検査、CT、MRI、X線検査、血液検査などが用いられます。治療は、乳がんそのものに対する全身療法と、骨病変に対する局所療法を組み合わせることで、がんの進行を抑制し、痛みを緩和し、QOLを維持することを目指します。
骨転移と診断された場合でも、現在の医療では病状をコントロールし、がんと共存しながら生活できる期間が延びています。不安や疑問があれば、主治医や医療チームに積極的に相談し、適切な情報に基づいて治療を進めることが、充実した日々を送るための鍵となります。

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参考文献

1)日本乳癌学会編:乳癌診療ガイドライン1治療編2022年版第5版.金原出版,2022

3)深田 一平ら: 【骨転移の画像診断】骨転移を伴う乳癌の臨床(解説). 臨床画像 2020; 36: 911-917.

4)柴田 浩行ら: 【骨転移の診療】骨転移の病態と診断(解説). 癌と化学療法 2023; 50: 283-286.