スポニチ

写真拡大

 ◇セ・リーグ 阪神9―3中日(2026年4月11日 バンテリンD)

 バンテリンドームでのチーム4本塁打は17年8月18日以来(当時はナゴヤドーム)だという。当然ながらホームランウイングが存在しなかった9年前のその試合でアーチを描いたのは、今も現役で、この日も一発を放った大山、後はOBの糸井嘉男氏(球団スペシャルアンバサダー)、北條史也内野手(三菱重工West)、もう1人が秋山拓巳BA(34、球団ベースボールアンバサダー)だ。

 他の3人よりも秋山BAの放物線が脳裏に焼き付いている人も多いのではないか。「投手のホームラン」という希少性に加えて何より、その“弾道”がすさまじかった。右翼スタンドの上段に突き刺さる野手顔負けの一発。当時の金本知憲監督もベンチ前で“たまげた”とばかりに驚きの表情を浮かべて出迎えていたのを覚えている。この日の中軸そろい踏みの計4発で試合後から「秋山の衝撃弾」がXなどで再びクローズアップされていた。秋山BAもファンの投稿に反応し「ばり飛ばしてるやん…ひくわ」とユーモアを交えて懐かしんだ。

 ただ当時、本人は打撃の話題を好んで記者に話すことはほとんどなかった。愛媛・西条高時代に通算48本塁打を放った「伊予ゴジラ」は投手一本でプロに挑んだ経緯があった。ある年のキャンプで投手の打撃練習でサク越えを放った際には「僕の打撃のことは書かないで欲しいんです。お願いします」と取材後に本人からLINE(ライン)が届いたこともあった。「投手・秋山」としてのプライドがにじんでいた。

 この日の先発・伊原は4回にプロ初の適時打を記録。9人目の野手としての活躍は打線に勢いをもたらすが、やはり本業の輝きが大前提。9年前の秋山も7回2失点で白星をつかみ、伊原も6回1失点で見事な投打の活躍で今季2勝目を挙げた。

 来季からセ・リーグにもDH制が導入され、こんな景色は消える。「野手顔負け」という表現も無くなるのはちょっと寂しい気もする。そんな意味でも秋山拓巳が記録した9年前の“衝撃弾”はプロ野球ファンの間でも永久保存されそうだ。