でも、そういう中で「あ、バンド好きなんだ。何が好き?」と話すだけで、一瞬にして友達になれる。音楽や映画は、僕みたいな人間同士を繋げてくれるツールだという気持ちはあります。

――自分自身でいるためのものでもあり、誰かと繋がれるものでもあると。

峯田:会社や学校がつまらないって時に、3分間の一曲を聴いただけで気分が変わる。自分を守ってくれる鎧であり、社会と闘うための武器みたいなものだとも思います。

◆どうせ笑われるなら、自分から派手にぶっ転んで、笑わせてやる

――「武器」というワードが出ましたが、峯田さんには、弱さを隠さない強さを感じます。

峯田:僕の脚のことになるんですけど、子どものときは小児麻痺の症状があって今より脚が悪くて、松葉杖を使っていたんです。運動会のかけっこに参加できたのも小学校2年生からでした。「やっと走れる!」と思いましたが、変な走り方だから絶対にみんなに笑われるなとも想像できました。だから自分の番が来て「よーい、どん」で走り出した瞬間、僕、わざと転んだんです。

――わざとですか?

峯田:はい。そしたら周りが「やっぱり転んだ!」とワーッと盛り上がって。もちろん、指を差されて笑われるのは怖いし嫌ですよ。

 でも、ただゴールしてもビリだし、笑われると最初からわかっているなら、自分から派手に転んでやろうと。2年生のときに自分でそう決意したことを、はっきり覚えています。みんなが思っていた通りの反応をして、「まんまとやってやった」って。

――笑われたのではなく、自分が「笑わせてやった」と。

峯田:そうです。なんだか強くなれた感じがありました。ただ運動会が終わって帰るときに、親友の長岡君から「お前、わざと転んだだろ」と言われまして。彼だけにはバレていたんです(笑)。やっぱりこいつには分かるんだなと。今は頻繁に連絡は取ってないですけど、去年同窓会があって久しぶりに会いました。今でも親友です。

◆不倫に逃げるくらいなら、ロックを聴いたほうがいい

――ステキな関係です。今、この記事を読んでいる読者の中には、「妻」や「母」、「会社員」といった役割に縛られ、「ちゃんとしなきゃ」と疲弊している人もいます。そんな人たちに声をかけるとしたら?

峯田:僕は自分のやり方でやってきちゃったし、結婚もしたことがないから、あくまで僕から見た言葉になっちゃうけど。一生懸命、お母さんやお父さんとしての役割だったり、何かの立場を全うしていても、「本来の私はこんなんじゃない」っていう気持ちが出てくることって、たぶんあると思うんです。

 そこから逃げ出したくて、魔が差して、たとえばギャンブルとかお酒とか、不倫なんかに逃げてしまう人がいるのも、気持ちとしては、わからなくはないんです。

――無理を続けた結果、現実逃避してしまうと。

峯田:でも、それで誰かを傷つけて後でトラブルになるくらいだったら、僕はロックを聴いたほうがいいと思うんです。誰も幸せになれないことに手を出すくらいなら、ロックに夢中になるとか、ライブに行くとか。不倫してバレて何百万円も請求されるくらいなら、レコードを買ったほうがいいですよ。

 人に迷惑をかけないなら、家族や社会は関係なく、自我を忘れるくらい没頭して楽しめるものがあっていいと思います。人によってアイドルだったりアニメだったり、いろいろあると思いますが、僕にとってはそれが音楽だったんです。

◆「何かをやりたい」と思うものがあるって、それだけですごいこと

――『ストリート・キングダム』の本編に、「セッションを止めるな」という印象的なくだりが登場します。自分自身に対しても、周りの人に対しても、「何かを始めたい」という衝動を止めてはいけないと改めて感じました。

峯田:例えば、幼稚園児が楽器を弾くときに、楽譜なんて読めなくても「楽しい!」って気持ちだけで音を鳴らしますよね。それが音楽の始まりだと思うんです。そこから何かが始まるかもしれないのに、誰にもそれを止める権利はない。

 失敗したって「ダメだ」ってことじゃないし、もし目の前の小さな子が失敗しても、止めるんじゃなくて「またやってみよう」でいい気がします。それは大人もそうだし。なるべく、その人が鳴らしたい音、やりたいことを止めないで、やめないでほしいです。

 本人が「何かをやりたい」と思うものがあるって、僕はそれだけですごいことだと思うんです。

<取材・文・写真/望月ふみ>

映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』は3月27日(金)より全国公開中
(C) 2026 映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』製作委員会

【望月ふみ】
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。@mochi_fumi