OpenAIの元研究者で2年間にわたりAIモデルの構築や価格設定、安全性の策定に携わってきたゾーイ・ヒッツィグ氏が、広告の導入がユーザーの信頼を損ない、かつてFacebookが辿った過ちを繰り返すリスクがあるとして、ニューヨーク・タイムズ紙の寄稿を通じてOpenAIがChatGPT内での広告テストを開始したのと同じ日に辞職したことを明らかにし、警鐘を鳴らしています。

Opinion | I Left My Job at OpenAI. Putting Ads on ChatGPT Was the Last Straw. - The New York Times

https://www.nytimes.com/2026/02/11/opinion/openai-ads-chatgpt.html

OpenAI researcher quits over ChatGPT ads, warns of "Facebook" path - Ars Technica

https://arstechnica.com/information-technology/2026/02/openai-researcher-quits-over-fears-that-chatgpt-ads-could-manipulate-users/

OpenAIはアメリカにおいて、無料ユーザーおよび月額1500円のChatGPT Goプランユーザーを対象に、回答の下部へラベル付き広告を表示するテストを開始しました。

OpenAIが月額1500円のより安価な有料プラン「ChatGPT Go」を正式に提供開始、広告を表示するテストもスタート - GIGAZINE



OpenAIのサム・アルトマンCEOは、広告モデルをサブスクリプションを支払えない人々にもAIを届けるための手段だと主張していますが、内部資料によれば過去のチャット内容に基づいたパーソナライズがデフォルトで有効になっています。これに対し、競合のAnthropicはClaudeに広告を入れない方針を堅持し、スーパーボウルで「広告はAIにやってくる。しかしClaudeには来ない」というCMを放映するなど、対照的な姿勢を見せています。

AI企業のAnthropicが「広告入りのAIはこんなひどいことになる」というスーパーボウルCMを公開、OpenAIのサム・アルトマンが長文反応 - GIGAZINE



そして、OpenAIがChatGPTでの広告テストを開始した2026年2月9日に、ヒッツィグ氏はOpenAIを辞めたことを明らかにしました。ヒッツィグ氏は「かつてはAIを構築する人々がAIの生み出す問題に先んじて対処できるよう力になれると信じていました。しかしChatGPTへの広告搭載によって、自分がその答えを見つける手伝いをするために入社したはずの問いを、OpenAIはもはや問いかけるのをやめてしまったようだという、時間をかけて募らせてきた実感を確信しました」と述べています。

ヒッツィグ氏は、広告自体は不道徳なものだとは考えていないとのこと。しかし、健康上の不安や人間関係の問題、宗教的信念といった極めて個人的な情報をChatGPTに語るユーザーが多い中で、そういった個人情報の蓄積がChatGPTの広告に利用されることが危険であると主張しています。



また、ヒッツィグ氏はFacebookがかつてユーザーへのデータ管理権を約束しながら、最終的にはエンゲージメントを最優先する広告モデルの圧力によってポリシーを形骸化させていった点を指摘しています。アメリカの連邦取引委員会(FTC)も、Facebookがユーザーの管理権を強化すると謳ったプライバシー設定の変更が、実際には逆に個人情報を公にしていたと主張しました。ヒッツィグ氏はOpenAIも同様の軌道を辿ることを危惧しており、OpenAIが構築しているエコシステムは自ら定めた安全ルールを覆すような強力なインセンティブを長期的に生み出すという考えを示しました。

さらにヒッツィグ氏は、OpenAIがすでに1日あたりのアクティブユーザー数を最適化しており、モデルがよりユーザーに媚びるような「お世辞」を言うように促されている可能性を指摘しました。このような最適化はユーザーのAI依存を強め、精神疾患や自殺念慮の助長といった深刻な事態を招く恐れがあり、実際にOpenAIは複数の訴訟に直面しています。

「ChatGPTが10代の青年の自殺を助長した」としてOpenAIが訴えられる、ChatGPTの安全策は長い会話では機能しないとOpenAIが認める - GIGAZINE



ヒッツィグ氏は広告か有料化かという二者択一を避け、企業がAIによる高価値な労働で得た利益で無料アクセスを支える「相互補助」や、データの利用を法的に監視する「独立委員会」、ユーザー自身がデータ共有を管理する「データ協同組合」といった構造的な解決策を提案しています。