少子高齢化の波は、我々が望む「きれいなトイレ」の存続にも影響を及ぼす。

「トイレも“目的地”であってほしい。そのためには匂わず、清潔感安心感があることが大切です。現在のサービス水準は高めていく必要こそあれ、下げることはできないというのが我々のスタンスです」

 人は一生のうち約3年をトイレで過ごすという。だからこそ、この小さな個室に、やさしさに導かれたテクノロジーが集まる。トイレのDX化は、必然だったのだ。

◆トイレは人を呼ぶ・トイレはおもてなし

 最後にトイレを町おこしに活用している事例を紹介しよう。長崎市は’10年に市民団体「みんなにやさしいトイレ会議」が設立。その働きかけで、同市は、トイレを使う「市民」、設置する「行政」、トイレの専門家「メーカー」の3者の視点で、トイレの使い勝手に取り組むことになる。長崎市は、市内の公共トイレの改善をソフト」ハードの両面で進めている。
 
 使いやすく誰にでも使いやすい公共トイレをと、「倒れても押せるよう緊急ブザーを上下につける」「ペーパーホルダーを左右両側につける」「男性用トイレへのサニタリーボックス設置」といった基本マニュアルを作成。公共トイレの改修には会議のメンバーも参加し、「浦上駅前公衆トイレ」「長崎市庁舎のトイレ」は、日本トイレ協会の「JTAトイレ賞」を受賞している。市がトイレ施策に注力したそもそものきっかけは、市街地のにぎわい創出プロジェクトの一貫だという。

「街を歩いて回ってもらうにはトイレが必要。プロジェクトの軸のひとつにトイレを掲げたのです」(長崎市まちなか事業推進室)
 
 活動を始めて15年。定量的な効果は出ていないが、「『どこにでも公衆トイレがあるね』『公衆トイレなのにくさくない』という声をいただいている」と、好評を得ている。みんなにやさしいトイレ会議の竹中晴美委員長はこう語る。

「トイレはお出かけ先の安心感そのものなんです。安心できれば、みんなが来てくれ、ひいては街の賑わいになる。ハイテクのトイレ、おしゃれなトイレもすごいし素晴らしい。でも、なにより大切なのはそこにやさしさがあるか。トイレは基本、愛なんです」

 かの、ビル・ゲイツはこう語っている。”テクノロジーは、私たちが他者に対して持つ、生来の思いやりを解き放つ“。世界トイレ機関によれば、人は一生のうち約3年間をトイレで過ごすという。「いやいや、3年では足りない」という人も多いだろう。だからこそ、その空間に愛とやさしさ、思いやりに導かれたテクノロジーが注がれる。トイレのDX化の流れは必然なのかも、しれない。

取材・文/小山武蔵