NASA(アメリカ航空宇宙局)は2026年1月30日、火星探査車「Perseverance(パーシビアランス)」が、AIによって計画された“別の天体で初”の走行(ドライブ)を完了したと発表しました。2025年12月8日と10日に行われたデモンストレーションはJPL(ジェット推進研究所)が主導し、Anthropic社との協力のもと、大規模言語モデル(LLM)「Claude」を用いたとしています。


【▲ NASAの火星探査車「Perseverance」が2025年5月10日に撮影したセルフィー(Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS)】

NASAによると、Perseveranceは12月8日に約210m、12月10日に約246mを走行しました。場所はいずれもジェゼロ・クレーターの縁に沿うルートで、従来は人間が手動で行っていた複雑なルート計画作業の一部をAIで担った点が特徴です。


今回のデモでは、視覚情報も扱える生成AIの一種である「ビジョン言語モデル(VLM)」が用いられました。AIはJPLの地表ミッション用データセットに含まれる既存データを分析し、人間のプランナーが普段利用するのと同じ情報をもとにウェイポイント(探査車が次の指示を実行するための区切りとなる地点)を生成。Perseveranceが安全に走行できるよう、連続した走行経路を作成したといいます。分析に用いられたデータには、火星周回機「Mars Reconnaissance Orbiter(MRO)」搭載カメラ「HiRISE」による高解像度の軌道画像や、デジタル標高モデル(DEM)から得られる地形傾斜データが含まれ、岩盤やむき出しの岩石、危険な岩だらけの地帯、砂の波紋などの地形特徴を識別したとされています。


【▲ AIによって計画されたルート(ピンク)と実際のルート(オレンジ)。円はウェイポイントを示してる(Credit: NASA/JPL-Caltech/UofA)】

NASAは、地球と火星は平均で約2億2500万km離れており、通信遅延が大きいため探査車をリアルタイムで操作することは不可能だと説明しています。このため過去28年間、複数のミッションでルート計画は人間の「ドライバー」が担い、危険回避のためウェイポイントは通常100m以内の間隔で設定され、深宇宙ネットワーク(Deep Space Network)経由で探査車に送られてきました。


また、AIが作成したウェイポイントをもとに作られた走行コマンドは、JPLの「デジタルツイン」(探査車の仮想レプリカ)で飛行ソフトウェアとの互換性を確認した上で火星へ送信されました。NASAは送信前に、50万以上のテレメトリ変数を検証したとしています。



NASAは今後、生成AIなどの自律技術がキロメートル規模の走行を支援し、オペレーターの負荷を抑えながら運用効率や科学成果を高める可能性があるとしています。さらに、膨大な探査車画像から科学的に興味深い地形特徴を抽出し、科学チームへ提案するといった活用も視野に入れているとのことです。


 


 


文・編集/sorae編集部


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