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いつも暮らしをアップデートし、さまざまな気づきを発信している石黒智子さん(71歳)が、今取り組んでいるのが「終活」です。いままで以上にもちものを厳選したら、そのものの記憶から解放され、どんどん身軽になってきたといいます。いつも好奇心旺盛で、発想豊か、ポジティブで探求心を忘れない、石黒さんならではの「終活」について紹介します。

※ 記事の初出は2024年12月。年齢を含め内容は執筆時の状況です。

70歳を迎えた石黒さんの明るい終活

「終活」という言葉はどんなイメージですか? 人生の最期に向けて、財産や持ちものを整理したり、葬儀やお墓のことを考えたり…。「終わり」を意識することなので、重たく感じる方も多いかもしれません。しかし、石黒智子さんの終活はとても軽やかで晴れ晴れ。

「『活動』っていうくらいだから、私にとってはアクティブな印象よ」と話します。

これからの人生を楽しむために必要なリセット

石黒さんが終活を意識したのは、エッセイ『70歳からの軽やかな暮らし』を上梓したあと。執筆活動を一年ほど休むことに決めました。

「さて、『書かない』生活で私はなにをするだろう? と考えたときに、『終活だ』と思い至ったのです」

不要なものは人に譲ったり、寄付したり。必要なものだけを持つ暮らしをしてきたのですから、わざわざ終活をする必要はないと初めは思っていたといいます。ただ、日常の片づけを超え、『終活』とあえて意識することで見えることがあるのでは? と考えたのです。

ものの整理、人づき合いや、健康のことなどをアップデートしていくうちに、ハタと気づきました。

「私にとっての終活は、好きなことを『諦める』『止める』ことではない。これからの人生を始めるために、さまざまなことを一度リセットするためのものなのだと」

今の自分に必要ないものは潔く手放し、頭も気持ちも軽くする

仕事机の前には、付箋メモがたくさんはられています。仕事やプライベートの予定、買い物のメモ、庭の植物の備忘録など。そのメモで最近気づいたことが。

「忘れないためにメモをするつもりでいたけれど、忘れてもいいためにメモを書くのか! って」

その結果、忘れてしまうことが、あまり怖くなくなりました。頭の中にあるあれこれをメモに書き出してアウトプットする。そうすると、脳内メモリはリセットされ、頭は軽くなります。

「70歳を過ぎたころ、これまでの経験や詰め込みすぎた知識を忘れまいとする自分を感じて、気持ちが重くなってきました。サラリと捨てられたらどんなにいいだろう?」。そこで出たキーワードが終活であり、リセットだったのです。

石黒さんは今、もちものや知識をまっさらな状態にして、新しい人生の楽しみに取りかかっています。それは小説を書くこと。今まではノンフィクションのエッセイが専門でしたが、物語への欲求がムクムクと。終活の過程で軽やかになった石黒さんの心身は風とおしがますますよくなり、ワクワク情熱の炎が灯ったのです。

固定化された知識や情報をアップデート

積み重ねてきた植物の知識と経験を再インストール中。「アスパラガスはユリ科と覚えたのに、いまはキジカクシ科になりました。牧野富太郎の植物図鑑で覚えた私の知識はもう古いのです。ときどき、パソコンで調べ直しているのですが、70歳を過ぎるとすぐに忘れてしまう…。だから、頭に入っていた分類表をさっぱりリセット。庭に咲く植物と食べる野菜ぐらいの範囲をパソコンで調べてアップデートすることにしました」

リセットずみの頭の中は、新しい知識の受け入れ態勢が万全です。「知識をリセットすると謙虚になるし、たくさんの発見があります」

料理はますますシンプルに、味つけも軽やかに

年を重ねて変わったのは、日々の料理を夫がつくるようになったこと。石黒さんはそのサポートと、お菓子づくりの担当です。ある日出てきたのは、ゆでたジャガイモを皿に並べて、フチをカリッと焼いた半熟目玉焼きをのっけたとてもシンプルな料理。テーブルで塩・こしょう、パプリカパウダーをふって味つけします。「60代だったら、これにベーコンを添えたり、チーズをたしたりしていたかもしれない。でも、70代にはちょうどいい」

調味料で酒やみりんを使わなくなるなど、どんどんシンプルに塩分控えめに、石黒さんの家の献立はアップデートされています。

石黒さんを始め、大庭英子さん、中野翠さん、山本ふみこさんなど、魅力的な暮らしが詰まった別冊天然生活『歳を重ねて楽しむ暮らしvol.3』(扶桑社刊)は発売中です。