熱を残した空が少しずつ色を変え、ゆっくりと次の季節へと向かっている。移りゆく日々の中で、新しい味との出合いが、日常を豊かにしてくれる。

東京に生まれたばかりの“とっておき”を、このタイミングでこそ味わってほしい。


1.白金から南青山へ。“三ツ星”という頂へ挑む星付きシェフの新天地
『mærge(マージ)』@南青山



2025/6/20 OPEN



壁面や床、家具類は“完結しない美”をイメージして構成。弧を描き、規則的ではない印象の壁面がそれを象徴している

柔らかなアースカラーの空間で、比類なき美味に浸る特別な時間を


この店がオープンしたというニュースは、のちに東京のレストランシーンの歴史に残る一大事として記録されるかもしれない。

そんな予感を抱かせる大物ルーキーが、今年6月南青山の一角に出現した。



2016年に開いた『La Clairiére』は「ミシュランガイド東京」6年連続で一ツ星を獲得。「ゴ・エ・ミヨ」の<明日のグランシェフ賞>も受賞した


陣頭指揮を執るシェフ・柴田秀之さんは自身の最初の店『La Clairiére』を2024年に閉店し、この1年間は『mærge』の開店準備に専心してきた。

この店を開くにあたり目標に掲げたのは、ずばり「三ツ星を獲って世界へ行く」。荒唐無稽にも思えるスケールの大きな夢を叶えるべく、すべてにおいて圧倒的な完成度を目指す。


目に舌に、美しく満ち足りる。珠玉の11品が紡ぐ渾身のコースを


高級食材のみに頼らず、無名ながら優れた食材に光を当て、高い技術で昇華した料理。




シェフパティシエ・奥村充也さんによる美しいデセール「Perfume」。桃、ローズゼラニウム、フランボワーズetc.の味と香りが重なり合う。




「パンデロロメインのグラデーション」。

薪で焼いたロメインレタスにホヤのリゾットやパッションフルーツのソースを合わせた個性的なひと品。




芳しいソースに高揚する「キスのクレープ 黒トリュフとバニラ」では、南半球から届く冬のトリュフを盛夏に味わう愉悦を。




産卵を終えた老鶏を食材に、という取り組みから生まれた「荒間鶏のバロチンヌ」。


美味を詰めた宝石箱のようなひと品


四角く焼き上げたバターが香るブリオッシュにキャビア、リエット、チョリソなどの具材を選んで挟んでもらう「キャレドブール」。




熟練のメートル・ドテルによる流麗なワゴンサービスは、レストランならではの楽しみだ。

料理はすべてコース(¥36,300)からの一例。



アッシュカラーで統一され、さりげなく見えて贅が凝らされた空間。

そしてフランス料理とレストランを知り尽くしたベテランのサービススタッフ……と、実に隙がない。いち早く体験すべき一軒だ。



2.熱気、香り、ざわめき……。アジアの夜市を彷彿とさせる“食の旅”へ
『Night Market』@渋谷



2025/7/1 OPEN



鮮やかな幾何学模様の“暖簾”が目を引くファサード。ロゴマークに描かれているのは、オリジナルキャラクターの“ナイクマ”

鮮烈なハーブの香りや香辛料の刺激が、夏の夜を盛り上げるアジアンダイニング


高い人気を保ち続けるレストランもあれば高感度な酒場もあり、と常に注目を集めているグルメエリア“渋二”こと、渋谷2丁目界隈。

今年7月、ここにまた1軒ブレイク必至のホープが誕生した。



厨房から漂う香りや調理中の音に心躍るカウンター席の他、寛げるソファ席や円形のターンテーブルの席も


その名も『Night Market』はタイ、ベトナム、インドネシアなど東南アジア諸国の料理と、新鮮な食材や日本ならではの調味料、発酵技術などを融合させた鮮度の高いエスニックと出会えるダイニングだ。



内藤さんの料理は、香りや味わいの重ね方や美しい盛り付けからフレンチでの経験が垣間見える


オープンキッチンで腕を振るうシェフ・内藤千博さんは、フレンチレストラン『L'Effervescence』を経て、『Ǎn Ði』では料理長として独自のモダンベトナミーズを確立した人物。



「ズッキーニとココナッツミルクの冷製フォー 山利のしらす」¥1,500。フォーとココナッツミルクが出合って生まれた新鮮な美味しさを


ベトナムのフォーやタイのソムタム、マレーシアのサテなど各国が誇る伝統的な料理を、味の骨格は守りつつ日本人の感性にフィットするよう、より軽やかに。




「ラムときゅうりのサテ ヨーグルトソース」¥1,600(1本)。

サテには石臼で叩いたオリジナルスパイスを、ヨーグルトソースにはコブミカンの香りを添えて。



「BBQ Duckとケチャップマニス」¥6,800(3〜4名分)。炭火焼きの鴨はインドネシアの甘い調味料をイメージしたソースと合わせていただく


内藤さんが選んだアンティーク家具が並び、南国のリゾートを思わせる空間で、ワインを片手に舌鼓を打ちたい。



3.中目黒の人気店が港区へ。出汁を主役に据えたイノベーティブの新機軸
『kiso』@麻布十番



2025/6/27 OPEN



店は、今年注目のニューオープンが相次いでいる二の橋エリアに。外階段を上った2階にある

多彩な旨みで魅了する料理の“kiso”は出汁。移ろう四季をその一滴に封じ込めて


素材コンシャスな創作料理を楽しめる『nou』と四季折々の食材を使った和食×和酒の店『iro』。

中目黒で名を馳せるふたつの人気店が手掛けるニューフェイスが、麻布十番に誕生した。



落ち着いた質感のカウンターは長さ6m超の一枚板。しかも樹齢200年の桧だ


その名も『kiso』は、味わいの“基礎”ともいうべき「出汁」にフォーカスした料理を提案している。

古くから伝わる“乾物類=出汁”の色調を落とし込んだという空間は、極めてクール。



コースの「お椀」は、真空調理してからだし醤油を塗って焼いた黒舞茸、ポルチーニの揚げリゾット、黒トリュフを鶏のブイヨンと昆布だし、干し椎茸だしをあわせた吸い地と


かつお、昆布、煮干しなど出汁の定番素材はもちろん、肉や魚介類、きのこ類の旨みも、料理に巧みに盛り込む。

¥16,500のおまかせコースの品書きには、料理名に出汁の素材が併記され、その幅広さに興味をそそられる。




コースの前菜「雲丹 とうもろこし そうめん カボチャ」は食材の組み合わせの楽しさと目を引く盛り付けが魅力。



「唐墨とキャビアの温かいビーフン」(¥3,500)は、アサリだしで戻したビーフンをアサリだしと太白ごま油を乳化させたソースで和え、からすみやキャビアを添える贅沢な一品


またアラカルトメニューには「唐墨とキャビアの温かいビーフン」など中国料理のエッセンスを加えた品もあり、目移りしてしまう。



「毛蟹といくらの贅沢土鍋ご飯」¥6,500(2名分)は、カニだしとかつおだしで炊き上げる


¥10,000のアルコールペアリングではワイン、日本酒、シェリーなどを少量多種で楽しめる趣向。

食べ込んだ大人も満ち足りる新星だ。



4.『京都