開幕2戦連発。上田綺世が繰り返したキーワードは「準備」。背後を突く走りが蘇り、プレーの幅に広がりも【現地発】
0−1のビハインドで迎えた22分、MFクインテン・ティンバーの地を這うような強烈なシュートを、エクセルシオールのGKカルビン・ラーツィーが辛うじて止めてボールが宙に浮きかけた。このGKが弾いたボールに、上田が身体を投げ出して突っ込み、ダイビングヘッドでゴールネットを揺らした。
「開幕1試合目のゴール」とは8月9日、NACとのホームゲームで記録したもの。55分にボックス内でMFセム・スタインの打ったシュートがDFにブロックされ、足もとにこぼれてきたボールを上田が振り足鋭いボレーシュートで今季初ゴールを決めた。
シーズンが開幕してから間もないが、今季の上田はディフェンスラインの背後を突く、得意のフリーランニングが蘇っている。エクセルシオール戦では前半、DFアネル・アフメドホジッチのスルーパスを受けた上田がGKと1対1になる絶好のチャンスを迎えた。しかしシュートのコースが甘くストップされた。
さらに後半、左サイドからMFルチアーノ・バレンテが柔らかなタッチで浮き球のスルーパスを上田に出したが、相手DFにうまく身体を入れられてしまい惜しくも届かなかった。その直後、上田はバレンテにナイスパスのシグナルを送っている。
バレンテは5日前の対フェネルバフチェ(フェイエノールトは2−5で負け)の後半にも、上田に絶妙のスルーパスを通した。
「今日もそうでしたが、後半、相手がロングボールを蹴ってきて、うまく拾えた時にスペースが広くなり、うちの40番(バレンテ)はパスを出す感覚をすごく持っている選手なので、意志の疎通ができている。動き出しのところも少しずつタイミングが良くなってきたと思います」
8月2日のプレシーズンマッチ、ヴォルフスブルク戦(4−0でフェイエノールトの勝利)で上田は2ゴールを決めた。共に相手の背後をフリーランニングで突いてから、スルーパスを受けて仕留めたものだった。なかでも2点目は、DF渡辺剛がハーフウェーラインからロングレンジのスルーパスを上田に通して決まった、素晴らしい連係のゴール。
「こんなパスを俺は欲しかった」と思ったのでは? そう尋ねると上田は「準備」というキーワードを繰り返した。
「あれも、手前の選手(スタイン)が受けるシチュエーションでした。それも含めて常に準備するということ。準備のクオリティが上がっていると思います」
渡辺のパスに対して、スタインが触れるかどうかギリギリのタイミングでスライディングしながら足を伸ばした。どのような形で自分にボールがこぼれてくるのか、判断は難しかったはずだが、上田は準備の質を上げることでスムーズな形で渡辺からのパスを受け、ゴールにつなげたのだった。
昨季に27ゴールを叩き出してオランダリーグ得点王に輝いたスタインはこの夏、トゥエンテからフェイエノールトにステップアップし、上田との連係を徐々に構築している。スタインは、これまで一緒にプレーしてきた攻撃的MFと違うタイプなのでは?
「そうですね。ワントップというよりツートップ気味にプレーできているのは良いですね。僕はツートップが好きなので。良い関係でプレーできていると思います」
スタイン、渡辺、バレンテ、アフメドホジッチ――。上田に決定的なスルーパスを送るのは偶然なのか、今夏、新たにフェイエノールトの一員に加わった選手ばかりである。そのことはともかく、フェイエノールトでの2年間でポストプレーを磨いてきた上田は、相手の背後を突く走りが蘇ったことで、プレーの幅に広がりを見せているのではないだろうか。
「今日もゴール前で少し背負うシーンがありましたけれど、もうちょっと要求して(自分がポストになるようなパスを)もらってもいいのかもしれない。そうしたら生きる選手も下(主にMF。さらにサイドから中に絞ってくる選手)にいっぱいいるので、そこを合わせたいと思います」
たとえばエクセルシオール戦の前半終わりごろ、上田がペナルティエリア内右角あたりでポストになり、右ウイングのハジ・ムサに前を向かせてシュートを打たせたシーンがそうだった。
昨季、負傷に悩まされた上田は「今季の目標は怪我なくプレーすることです。怪我なくプレーして、1シーズンを通してチームに貢献したい」と掲げた。エールディビジでの2ゴールは共にこぼれ球への研ぎ澄まされた感覚が光った。ゴールにはならなかったが、NAC戦で放った豪快な反転シュートはパワーとキレがあった。
ポジション争いの激化が囁かれるなか、エクセルシオール戦の上田はフル出場を果たした。コンディションは上々。あとはシーズンを完走し切るだけだ。
取材・文●中田 徹
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