柏の強さは本物。小泉佳穂に訊く“リカルド・レイソル”の神髄。浦和時代と何が違うのか「一番はハイプレスとトランジション」
横浜F・マリノスとのアウェーゲームで2−0と勝利した試合後、決勝ゴールとなる先制点を決めた小泉佳穂は、浦和レッズでのリカルド1年目と、現在の柏レイソルでの完成度を聞かれた時に、そう答えた。
「一番違うのはハイプレスとトランジション。そこが大きな違い」と小泉。なぜ変わったのかを、小泉が指揮官から説明されたわけではない。ただ、日本を離れている時期に、リカルド監督がアップデートしていること、そして何よりJリーグの潮流が数年間で大きく変わったことも、その選択に影響を与えていることは想像に難くない。
そうした潮流のなかで、昨シーズンは最終節に残留を決めた柏に、これまでと異なるポゼッションのスタイルを標榜するリカルド・ロドリゲス監督が来ると聞いて、危うさを感じたサッカーファンは少なくなかったはずだ。
実際にリカルド監督はポゼッションをベースに、自陣から丁寧にボールを動かすスタイルを押し出してきたが、前からプレッシャーをかけて、高い位置でボールを奪うディフェンスにもトライしてきた。
もうひとつ、小泉が言うように、攻守のトランジションに対する意識も、4シーズンを率いた徳島ヴォルティスや、天皇杯を制した当時の浦和よりも強く表われており、それが現在のJリーグでもポゼッションを軸に戦いながら、守備の安定と相手を心身ともに疲弊させる攻撃を可能にしていると言える。
横浜FM戦でも、ボールを動かして相手ディフェンスを困らせるだけでなく、相手ボールになってもハイプレスでパスカットやセカンドボールを回収して、ハーフコートに近い状態を長い時間で作れていたことを指摘すると、小泉は「ポゼッションのところとハイプレスのところがチームの生命線だと思うので。ハードワークが根幹にあって、そこは続けていけたらいいなと思います」と語った。
浦和時代の教え子である小泉をはじめ、徳島からの縁があるFW垣田裕暉やMF渡井理己など、いわゆる“リカルド・チルドレン”が多いことや、そうした縁がなくても右センターバックの原田亘やGK小島亨介のように、いかにもスタイルにマッチした選手をリカルド監督のリクエストで獲得できたこと。そして従来のトップチームと違い、つなぐサッカーをベースにしてきたレイソルユース出身の古賀太陽、田中隼人、熊坂光希、山田雄士らが融合することで、早期に“リカルド・サッカー”が形になった背景は間違いなくある。
それに加えて、高強度に適応した新たなポゼッション・スタイルを構築していることが、リカルド監督が率いる柏の強みと言える。インテンシティ(強度)というと、“当たりの強さ”をイメージされやすいが、専門的にはテンポの早さが大きな要素になっている。
かつて日本代表で指揮を執ったアルベルト・ザッケローニ監督は、それをプレーの“回転数”と表現したが、そういう基準で見れば、ポゼッションをベースにした現在の柏も高強度のサッカーに他ならない。
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ただし、攻撃に関しては良い意味で、縦に攻め急がないこともリカルド監督の流儀であり、再現性のある攻撃を相手の守り方に応じてタイミングや角度などを変えながら、焦れることなく繰り出していく。
前半より後半の方が、得点数が多くなるのはJリーグの傾向だが、柏に関してはここまでの20得点のうち、15点が後半であり、実に3倍の数字になっている。それでいて失点は前半も後半も5であり、それだけ後半に強さが出ているのだ。
もちろん、リカルド監督がベンチの選手たちを把握し、的確な選手交代ができていることもあるが、理由はそれだけではない。
小泉は「うまくいってるから当然ですけど、チームの中で点が入ってない時間帯も、これが後々効いてくるなって思えていて。それがあるから点が入っていない時間帯でも、焦らずにボールを動かし続けて、相手の穴が空くのを待つみたいなことができてるのかなと。すごくチームとして、良い成功体験を積み重ねられてるから、そういう良い循環になってるのかなと思います」と語る。
それが象徴的に出たのが、終盤の2得点で2−0と勝利した第16節のファジアーノ岡山戦であり、同じく2−0で勝ち切った横浜FM戦も、同じことが言える。
そんな柏に対して、相手はあの手この手で良さを出させないように対策を立ててくるはずだが、小泉は「相手のやり方を見て、万能なやり方ってないじゃないですか。だから、こうやってやってきてるってことは、ここが空くよねとか。こういうリスクを負ってるよねっていうところを、ある程度みんなで、共通認識を持てるようになってきた」と主張する。
リカルド監督が提示した形を機械的に実行するのではなく、自分たちにある引き出しのなかで、相手を見ながら効果的なプレーをチョイスしていく。それをチームとして共有している柏の強さは本物と言える。
取材・文●河治良幸
