適切なポジティブ思考を持つにはどうすればいいか。禅僧の枡野俊明さんは「ポジティブな生き方をして、たとえ挫折しても、悔やむ必要はない。大切なのは、心を『後悔』から『検証』へ振り向けることだ」という――。

※本稿は、枡野俊明『「し過ぎない」練習』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/Diamond Dogs
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Diamond Dogs

■ポジティブにとらえて取り組むことは禅の教えにかなっている

私は「ポジティブ思考」をテーマにした本を何冊か上梓しています。

ポジティブに生きることのメリットはたくさんあります。

ポジティブに生きることは第一に、自身の幸福度を高めます。

「できる」と信じることで行動力が増し、目標達成の可能性が高まります。

たとえ困難な状況にあっても、ものごとをポジティブにとらえることで、ストレスを感じることが少なくなります。また、ポジティブな人は、周囲にもポジティブ感をもたらして人間関係が良好になり、手助けを得ることもできます。

何ごとにも前向きに、ポジティブにとらえて取り組むことは、禅の教えにかなっています。「禅即行動」は、ポジティブ思考の最高の教えです。

禅即行動とは、「あれこれ考えず、すぐに行動することが、今を大切に生きることである」という意味です。

禅即行動を実践するには、ある程度の開きなおりが必要です。

私自身、新たな挑戦をするときには、「どうにかなるさ」という気持ちで即行動に移します。たとえ失敗しても、後悔することはありません。かならず再チャレンジのチャンスはめぐってくるものです。

■ポジティブも度が過ぎると、自分も周りも不幸にする

そうは言っても「どうにかなるさ」と開きなおりの気持ちで即行動に移すというのは、やや思い切り過ぎではないかと思われるかもしれません。しかし、何の準備もしないで見切り発車しなさいと言っているのではありません。

たとえば、あなたは仕事で初めてプロジェクトリーダーに抜擢されたとしましょう。右も左もわからない新人が指名されるわけはありません。あなたには少し荷が重いかもしれませんが、「これまでの経験を生かして挑戦してみてはどうか」という上司の配慮でしょう。

「どうせやってもうまくいかないので」と辞退するようではいけません。そんなときこそ「なんとかなるさ」と挑戦するのです。

かといって、ポジティブ思考も過ぎてしまうと、さまざまなデメリットが生じます。

まず、現実を直視しなくなります。過度に楽観視することで、重要な問題点を見落とすリスクが高まります。たとえば、「このままやっていけば何とかなるさ」と信じ込み過ぎて、軌道修正を行わずに失敗してしまいます。

ネガティブな感情を無理に抑え込むことで心のなかに不満やストレスがたまります。たとえば、「こんなことで落ち込んではいけない」と自分を鼓舞しているつもりでも、心のバランスを失ってしまいます。

そして、他者に過度なプレッシャーをかけてしまう場合もあります。

写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

「頑張ればできる」「もっと前向きにならないとダメだ」といった言葉は、相手を追い詰めることになりかねません。ポジティブ思考の人をウザいと感じる人の多くは、このタイプでしょう。

あるいは、過度なポジティブ思考によって、自分次第ですべてうまくいくと信じ込み過ぎると、失敗したときに失望のあまり、自分を責める危険性があります。失敗は自分の力不足、努力不足だったと大きな責任を感じてしまうのです。

■心を後悔から検証へ振り向ける

結果が良ければ万々歳。しかし、うまくいかなかったときは「やっぱり引き受けなければよかった」「まだまだ自分は力不足だ」と、引き受けたことを後悔する人もいるでしょう。後悔しても結果は変わりません。

ポジティブな生き方をして、たとえ挫折しても、悔やむ必要はありません。失敗したときこそ成長のチャンスです。

大切なのは、心を「後悔」から「検証」へ振り向けることです。

失敗をどうすれば自分の成長につなげられるのか、あるいは、どうすれば二度と同じ過ちを繰り返さないですむのか――。禅とは、その術を教えるものでもあるのです。

たとえば、自分の不用意な言葉によって、上司に大変な迷惑をかけたとしましょう。そんなとき、後悔にさいなまれて、もう発言はよそうと口をつぐむようになったら、成長はできません。自分の失敗の原因をしっかりと検証するのです。

言葉を発する前に「この言葉は相手を傷つけないだろうか」「相手にどう受け止められるだろうか」と一拍置いて、心で考える癖をつけたなら、それはあなたにとって大きな成長であり、かけがえのない財産になります。また、それをきっかけに、上司との関係もこれまで以上に良好になるでしょう。

■100%失敗することはない

そんなに都合よく失敗の検証はできるかな?

枡野俊明『「し過ぎない」練習』(クロスメディア・パブリッシング)

疑問に思う方もいるでしょう。大丈夫、誰でも容易にできるのです。

何かに取り組んだときに、うまくいかないことは多々あると思いますが、100%失敗ということはまずありません。

ポジティブになり過ぎず、ネガティブになり過ぎず、冷静に検証してみれば、たいていの場合、「ここまではうまくいっていたけど、あそこで判断ミスをしたからダメだったんだ」と何かしらの答えが見つかるものです。それに自分で納得できれば、次からは失敗しないでしょう。

それがあなたにとって大きな財産になり、自信にもつながります。

----------
枡野 俊明(ますの・しゅんみょう)
曹洞宗徳雄山建功寺住職、庭園デザイナー
1953年、神奈川県生まれ。多摩美術大学環境デザイン学科教授。玉川大学農学部卒業後、大本山總持寺で修行。禅の思想と日本の伝統文化に根ざした「禅の庭」の創作活動を行ない、国内外から高い評価を得る。芸術選奨文部大臣新人賞を庭園デザイナーとして初受賞。ドイツ連邦共和国功労勲章功労十字小綬章を受章。また、2006年『ニューズウィーク』誌日本版にて「世界が尊敬する日本人100人」にも選出される。
----------

(曹洞宗徳雄山建功寺住職、庭園デザイナー 枡野 俊明)