【環境激変の時こそ、 “土を耕し、種を播くこと” から─】 味の素社長・藤江太郎の「根っこは共通のアミノサイエンス」論
そうした内外の諸状況を勘案しながら、グローバルに経営を展開する味の素グループのトップとして、製品価格問題にどう取り組んでいくのか─。
「ウクライナインパクト、(原材料価格のアップなどの)コストアップ、これを肉体改造までつなげていこうと。それはこれまでも取り組んできたんですが、まだまだ十分ではなかった。味の素グループで使う原料にどういうものがあって、それはトータルでどの位使っていて、予算単価がいくら位か、そして毎月のその値段はどう変わっているのかを明確にさせてきました」(インタビュー欄参照)
当初立てた予算に対して、全体でどの位のマイナスインパクトがあるのかをしっかり把握。そして、コストアップに対しては、最大限の企業努力をしながら、「値上げも一方でさせていただく」という姿勢。
ともあれ、製品値上げ問題は、賃上げとも絡み、「社会課題の解決の1つでもある」という藤江氏の問題意識。
同社は2年前から、この問題に取り組んできた。当初は、「何言ってるんだ、味の素は」と反発も強く受けた。食品界のリーディングカンパニーであるだけに、尚更であった。
しかし、世界の原材料コストの上昇、それに伴い欧米など各国の主要企業も製品値上げへと一斉に動いており、国内の空気も変わってきた。
「わたしどもも大分叩かれましたが、いつかわかっていただける時が来るなというふうに思っていましたし、社内でもやはりこのままの社会ではいけないなと強く感じてくれるメンバーも結構多く、一生懸命この問題に取り組んでくれましたね」
だからと言って、そう簡単に値上げは浸透しないのも事実。
「ええ、1週間位経って会うと、『藤江さん、やはりしんどいです。でも頑張ります(笑)』ということでね、そういうふうに言ってくれるメンバーが多くて、非常に頼もしかったです」
いろいろな事を体験して今、思うことは何か?
「そうですね、強い製品だとか、その価値をお客様に認めていただけない製品はやはり値上げできない。そういう面でも、自分たちが強くなり続ける、磨き続けることが大事だよねと」
社長に就任して1年一番嬉しいこととは?
まさに、今は時代の激動期。そうした時に社長となり、1年が経過した。この中で一番嬉しかったこととは何か?
「味の素は1909年(明治32年)の創業以来、挑戦し続けてきた会社だったと思います。それがどちらかというと、ちょっと挑戦しづらい企業になっていたと思うんですね」
藤江氏は、特に国内の食品事業で、挑戦があまりできてこなかった事情を踏まえ、次のように続ける。
「ここ5年位、国内の食品を見ると、挑戦があまりできてなくて、トップライン(売上)も利益もあまり伸ばせてなかった。一方で海外の調味料とか電子材料、バイオファーマサービスなどは伸びている。これはやはり挑戦し続けてきたから、そうなっているんですね」
同社の売上比率を見ると、海外対国内は58対42という比率。その中で、国内の食品部門、特に調味料や加工食品の領域で大きなヒット商品が出ていない。
そういう状況下、この現実を踏まえて、「挑戦していこうと多くのメンバーが感じてくれている。一番そこが嬉しいですね」と藤江氏が野球に喩えて語る。
「バッターボックスに立って、大谷(翔平)選手も4割は打てない。毎回ホームランを打てるわけじゃないと。ただ、しっかりと日頃から練習してバッターボックスに立って、前向きに捉えていこうよということです。その手応えを感じるのが一番嬉しいですね」
