コロナ対策で浪費された3900億円超…「“科学の軽視”と中抜きが原因」と元官僚

写真拡大

今年2月までに、新型コロナワクチンが少なくとも7783万回分、金額にして2000億円超が有効期限切れで廃棄されていたーー。

3月18日の毎日新聞の報道によって、こんな衝撃的な事実が明らかになった。政府のずさんな施策によって、本来、有効に使われるべきコロナ対策費用の多くが“ムダ”にされているという。

多くの人が、コロナのムダと聞いてまっさきに思い浮かべるだろう例が、約540億円もの血税を注ぎ込んだものの、ほとんどつけている人を見かけなかった“アベノマスク”だろう。マスク不足解消のため、安倍晋三首相(当時)の肝いりで、政府は2020年春から布マスクを各世帯に配布。しかし、国民に行き渡ったのはマスク不足が解消した6月末というお粗末さだった。

しかも、虫入りや汚れなどの不良品が多数見つかり、約31億円が検品代や、余ったマスクの保管料に消えてしまったのだ。

「コロナ禍が始まった当初、なにかの記事で読んで、布マスクはほとんど効果がないことを知ったんです。つまり、安倍さんは税金を使って非科学的なことをしようとしていた。裏を返せば、本来すべきことができていないことになります。これは裏に利権などが絡んでいる可能性もあると思ったのが、国に情報公開請求をしたきっかけです」

そう話すのは、国が開示を拒否した“アベノマスク”の単価開示を求める裁判を起こした、神戸学院大学法学部教授の上脇博之さん。大阪地裁は2月28日、国に開示を命じる判決を下した。国は控訴を断念。

3月15日、参議院予算委員会で辻元清美議員の質問に対し、国は単価や枚数を開示した。だが、依然として契約の経緯は不透明であるという。

■“やってる感”演出がいちばん大事

本誌の試算では、一連のコロナ政策で、結果として不必要だった出費や、避けられた出費は少なくとも3900億円にものぼる(表参照)。

「極端な話をすれば、単年度77兆円といわれるコロナ対策予算は、すべてムダだったんじゃないかとさえ思えます」

そう斬り捨てるのは、コロナ禍の取材を続けてきた元朝日新聞記者の佐藤章さん。ムダだと思う理由のひとつが、前出の上脇さんも指摘していた“非科学的”な政府のコロナ対策だという。

「コロナウイルスの感染経路は、ほぼ空気感染であることがわかっています。WHOは2021年4月、〈空気感染は一般的な感染経路の一つ〉と認め、その年の8月には米国の世界的な科学誌『サイエンス』にも論文が載りました。もはや世界の常識だったのに、日本では2022年1月になっても国立感染症研究所(以下、感染研)は『空気感染は増えていない』というレポートを出していたんです」

感染研とべったりでコロナ対策を進めてきた政府も、認識を改めようとはしなかった。

「だから日本では、あまり効果のないアクリル板ばかりが設置され、世界の標準対策になっていた、空気感染を防ぐための空気清浄機設置という基本的なコロナ対策が決定的に遅れました。そのために、どれほど多くの飲食店が倒産し、学生たちがキャンパスライフを失ったか……」(佐藤さん)

なぜ日本のコロナ対策は、これほどお粗末なのか。元経産省官僚で政治経済評論家の古賀茂明さんは、こう分析する。

「いちばん大事にしていたのは、“やってる感”です。つまり、コロナ対策でも何が科学的か、何が効果的かなんて中身はどうでもいい」

ワクチンも「1日100万回接種」という数字が最優先。数字こそ達成したものの、完全に統制を失い、結果として大量のワクチンをムダにすることになった。

「ここ数年は、コロナ対策という大義名分のもと、打ち出の小づちのようにジャブジャブと予備費が使われていきました」

さまざまな名目で“支援事業”を生み出していった。その結果、各省庁はおのおのの事業を精査できず、おのずと電通など政府と近しい企業に事業を丸投げすることに……。

「その結果、潤ったのは“お友達企業”ばかり。そこから、さらに複数の下請け企業に投げられるので、政府のチェック機能はますます働かなくなります。結果的に、お金に群がって集まってくる企業の、やりたい放題に」(古賀さん)

リストを見ると、政府に近い企業が“中抜き”し、そこからいくつもの下請け企業に流れるという構図ができあがっているのがわかる。

ほとんど機能しなかった接触確認アプリCOCOAの開発も同様だった。実質的な開発を担ったのは、受注した企業ではなく、再委託先や再々委託先だ。

「当時、私はCOCOAのシステムを調査した、あるSEを取材しました。彼が言うには、〈素人に毛が生えたような簡単な作り方。これではトラブルが起きるのも当然〉と。つまり、やっつけ仕事のレベルだったんです」(佐藤さん)

緊急時を言い訳に、これ以上、国民の税金を食いつぶすようなことは許してはならない。