「解のない時代」に求められるものとは?【私の雑記帳】
『強くなければ生きてはいけない。優しくなければ生きていく資格がない』─。
作家のレイモンド・チャンドラー(米国)の小説に登場する探偵が口にする言葉。
難題に直面しながらも、それにひるまず課題解決へ向かって立ち向かうタフな探偵。強靭な精神を持つ者が同時に〝優しい心〟を併せ持っているということ。
強さと優しさ。どんな仕事でもリーダーに求められる条件ではないだろうか。一見、相対立する2つの要素だが、両立あるいは共存してこそ意味があるのだと思う。
ビジネスの世界でも、上司との関係で、「厳しい人だが、部下思いの所がある上司」といった評価もよく聞かれる。
要は、生きていく上での均衡感、バランス感覚ではないだろうか。
全体感が求められる時代
そのバランス感覚が崩れたのが今回のロシアによるウクライナ侵攻であろう。
ロシアがウクライナに侵攻したのは今年2月24日。欧州や米国、日本など自由主義諸国はロシアへの経済制裁を科し、ロシアに即時停戦を呼びかけるが、侵攻から4か月経とうとしている今、プーチン大統領はウクライナ攻撃を止めようとしない。
なぜ、ロシアはこれほどの残酷な侵攻を続けるのか? と欧米・日本など西側諸国は思う。そしてさらに制裁を科す。
一方、そうした制裁に『反対』するのが中国や北朝鮮。インドなどは『棄権』に回るなど、国連レベルでも、その対応は国によって違う。何とも複雑、多面的な国際状況の中で、どう生きていくかという命題である。
解のない時代、あるいは解が1つではない時代と言ってもいい。こういう時代こそ、全体感、全体知が求められる。
寺島実郎さんの分析に
本号では、寺島実郎さん(日本総合研究所会長、多摩大学学長)に『ウクライナ危機の本質』について語ってもらった。そのキーワードはギリシア正教である。
ロシアの原型とされるキエフ・ルーシ(公国)のウラジーミル大公がビザンツ皇帝(バシレイオス二世)の妹との婚姻を機に、ギリシア正教の洗礼を受けた時(988)を起点に、寺島さんの歴史認識と現状分析、そして今後の展望を語ってもらった。
ギリシア正教からロシア正教が派生。ビザンツ帝国(東ローマ)と絡まって、欧州や米国、そしてロシアや旧東欧諸国の社会の底に流れる宗教や価値観を含めて、日本人の我々も考えさせられる、ずしりと肝に染みる寺島さんの分析である。
日本の選択は?
米国の利上げで、グローバルな資金の流れが変わり、途上国から米国へ資金が逆流し、同時に株価下落などの混乱が起きている。
日本は日本銀行がゼロ金利政策と金融緩和を維持しており、〝超円安〟状況が続く。
電気・ガス料金も上がり、食料品、雑貨類など全領域で値上げの動きが強まる。超円安は、輸入に頼るエネルギー・食料の値上げを一層加速させる。超円安はどこまで続くのか。金融市場の混乱がこのまま続けば、恐慌前夜に突入するという見方も出てきた。
今後、景気後退はあり得るのか。あるとすれば、どういう動きになるのか?
ソニーフィナンシャルグループのチーフエコノミスト、菅野雅明さんは〝実質金利〟をキーワードに、米国の潜在成長率との関連で「これから少し減速すると思いますが、例えば年内に米国の景気が後退する局面はまだかなり低い」と語る(インタビュー欄参照)。
緊張感のある日々が続く。
