スマホのアンダーディスプレイカメラは普及するのか? ゲームも映画も快適な全画面表示を実現

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スマートフォンのディスプレイ上部にはフロントカメラやセンサーが内蔵されている。そのためディスプレイの内側に、
・非表示エリアが大きい「ノッチ(切り欠き)」
・小さい円形だが黒い丸の目立つ「パンチホール」
が存在する。どちらもディスプレイを全画面の表示とするために、フロントカメラを目立たなくするための工夫で生み出されたものだ。

しかしコンテンツによってはフロントカメラがどうしても気になることもある。そこで海外ではノッチをもなくしたスマートフォンが少しずつ増えている。
そんな先進的なディスプレイ技術を積極的に採用しているのがZTEだ。

ZTEが2022年5月9日に発表した「AXON 40 Ultra」の画面は6.8インチ。
iPhone 13 Pro Maxの6.7インチよりも大きいディスプレイを搭載するハイエンドなスマートフォンだ。

このディスプレイにはノッチやパンチホールが無い。
6.8インチの面積をすべて表示エリアにできるのである。
Netflixで映画を見るときや、オンラインゲームをするときなどに画面を遮る邪魔なものは一切ない。


全画面を表示エリアにできるAXON 40 Ultra


ZTEのこの技術は、「アンダーディスプレイカメラ」と呼ばれている。
なんとディスプレイの下(本体内側)にフロントカメラを内蔵しているのだ。
スマートフォン本体を正面から見ると、一枚の大きなディスプレイに見えるが、実際は上部中央のフロントカメラが埋め込まれているディスプレイ部分の密度が低くなっている。普段はディスプレイに見えるが、フロントカメラを使うときにその部分だけ表示がOFFになるのだ。
またフロントカメラで撮影した画像はAI処理を行いより鮮明に、また美顔フィルターをかけることもできる。

ZTEの「AXON 40 Ultra」は、実はアンダーディスプレイカメラとしては3世代目になる。

世界で最初にアンダーディスプレイカメラを搭載したスマートフォンは、日本の楽天モバイルから発売されたZTEが開発した「Rakuten BIG」だ。
そのベースモデルとなるのがグローバル向けのZTE「AXON 20 5G」で、どちらも2020年に発売されている。
さらに2021年にはフロントカメラのセンサー性能を高めたZTE「AXON 30 5G」を発売した。

しかしこれまでのアンダーディスプレイカメラ搭載スマートフォンは、どうしてもカメラが埋め込まれている部分が目立ってしまった。


アンダーディスプレイカメラの構造図。カメラの上のディスプレイ部分は密度が低い


そこで最新モデルのAXON 40 Ultraでは、フロントカメラ部分上を覆うディスプレイを1ピクセルごとに駆動させることで、全画面表示を行った時のディスプレイのカメラ部分の不自然さを解消し、まるでカメラが内蔵されていないかのような美しい表示を可能にした。

つまりAXON 40 Ultraはアンダーディスプレイカメラを実用レベルまでに引き上げた製品なのである。

しかし、そもそもフロントカメラをなくしてしまえばディスプレイの全画面表示は可能になる。
だがフロントカメラは、セルフィーだけでなく、指紋認証よりも手軽な顔認証でも多く使われているため、外すことは難しい。
コロナ禍でマスク着用する人が増えたが、iPhoneもフロントカメラ横にFaceID用の複数センサーを内蔵しており、今やマスク越しでも顔認証を可能にしている。
さらに昨今はテレワーク、リモート学習が当たり前となり、スマートフォンのフロントカメラを使ってビデオ会議に参加するケースも増えている。

つまりフロントカメラを搭載しないスマートフォンは逆に利用者ニーズを満たさないのだ。

ZTEのような技術を使わず、ソニーのXperiaシリーズは21:9という縦長ワイドディスプレイ採用により、上部ベゼル部分に余裕を持たせて旧来の画面内ノッチを無くすことを実現している。
Xperiaと同じ方式は中国メーカーの一部(Meizuなど)も採用している。


Xperia PRO-I。フロントカメラは従来のスマートフォン同様に、上部の画面外に配置


数年前には、フロントカメラを可動式にして本体に収納する「ポップアップ式」や、スマートフォンを表裏に2分割してスライド式の構造とし、本体をずらすことでフロントカメラが出てくる形状のモデルもいくつか発売された。
しかし可動部分があることから故障の原因になりやすく、製造コストもかかるため近年ではこうした方法のモデルは市場から消えていった。
いまではASUS「Zenfone 8 Flip」の回転式フロントカメラくらいだろう。


Zenfone 8 Flipは回転式フロントカメラを内蔵し、全画面表示を実現している


こうした状da況の中、今後、アンダーディスプレイカメラ搭載スマートフォンは増るのだろうか?

ZTE以外ではサムスンの折りたたみモデル「Galaxy Z Fold3 5G」がアンダーディスプレイカメラを搭載している。しかしフロントカメラを使わないとき、ディスプレイ上にアンダーディスプレイカメラの存在が目立っている。ZTEの製品でいえば、まだ第一世代のレベル相当といえる。

最大手のサムスンですら、アンダーディスプレイカメラのレベルはこの程度。
ZTEの最新モデルのアンダーディスプレイカメラは、まだコストや技術的にも普及させるにはハードルが高いのかもしれない。

ところで今や少数派となった「ノッチ」採用のiPhoneが、数年内にアンダーディスプレイカメラを搭載するのでは? という噂もあるが、真偽は定かではない。いずれにせよスマートフォンのカメラはメインカメラだけではなく、フロントカメラの技術進化も進んでいるのだ。




執筆 山根康宏