「追いついて勢いがあるわけですから、『PK戦にしては勿体ない』と。だから『緩めるな、行け、行け』と選手たちを鼓舞しました。明らかに試合の流れが来た状況下でゴールを目指すのは当然ですよね。ちなみに、この試合ではピッチ外で面白い出来事がありまして。残り5分、負けている時にベンチ要員の谷口(哲朗)が私のところに来て『先生、1分でもいいから出してください』と言うわけですよ(笑)。長い指導者人生の中で、こんなアピールをしてきた選手は彼ひとり。仕方ないから『アップしておけ』と告げましたが、その直後に追いついて、もう交代どころじゃなかった(笑)」[編集部・注/試合は帝京が2‐1で勝利]
 

──当時と比べて、近年の高校サッカーはどうでしょうか。Jリーグのユースチームにリードされている印象もありますが。

「決してそんなことはないと思います。(高円宮杯)プレミアリーグを見ても、青森山田、大津(熊本)あたりの戦いぶりは素晴らしいです。むしろ、高校以上に施設も資金面も充実しているだろう『ユースチームは何をやっているんだ』と言いたい(笑)。

まあ、どこでサッカーをやるにしても、高校年代で重視すべきは人間形成の部分。いわゆる人間力が後々の人生でなによりものを言います。サッカーが上手いだけで、生きていけるわけではありません。(現在20歳の)久保(建英)が何かと騒がれていますが、私に言わせれば『まだまだこれから』。彼が25歳、26歳になった時に日本代表でどんな立ち位置にいるか。選手として、そしてなにより、人としてどう成長しているか。そこで判断すべきだと思います。ただ単にサッカーの技術を追求しただけでは一流になれません」

──最後に、高校年代の選手たちにメッセージをお願いします。

「大切なのは毎日出し惜しみせずにプレーをすること。『そんな馬鹿な』と思う練習でも、まずはしっかりやってほしいです。昨日よりも明日、明日よりも明後日のほうが上手くなれるように頑張る。その過程で苦しんでもいいんです。『ダメだ』と落ち込まずに、できること、できないことを整理する。それだけでも見えてくる何かはあるはずです」

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<プロフィール>
古沼貞雄(こぬま・さだお)/1939年4月25日生まれ、東京都出身。1964年に帝京高の教員となり、翌年よりサッカー部監督に就任。全国優勝は、選手権6回、インターハイ3回を数える。2003年で退任し、以降は東京Vユースや流経大柏でアドバイザーを務め、08年からは矢板中央のアドバイザーをしている。

<コーディネーター>
鹿内幸治(しかうち・こうじ)/アメリカと日本を拠点とし、サーフィンの国際ジャッジとサッカー指導者としても活躍。ITを駆使する最先端のアナリストとして数チームをサポートするかたわら、講義・講演も行なっている。恩師でもある古沼監督のマネージャーの様な役割も。

取材・文●白鳥和洋(本誌編集長) 協力●?ジェイ・エス