「この子、俺に気があるんじゃ…?」

男は何故すぐに、そう思い込んでしまうのだろうか。

周囲を見渡して見ても、やはり女性より男性の方が“脈あり”を客観的に判断できない傾向にあるように思う。

今この瞬間も、男たちの一方的な勘違いにより被害を被るアラサー女子は後を絶たない。

これまで高級鮨屋での惨劇、勘違い既婚男、車自慢男をお届けした。さて、今週は?




【今週の勘違い報告】

名前:木内希(仮名)
年齢:30歳
職業:広告代理店勤務


勘違い報告Vol.4:どうして男って「女はいつまでも待ってる」と思い込むんでしょう?


火曜、午前10時過ぎ。

代官山『CLEANSING CAFE』の外にある椅子で、一人の美女がクレンズジュースを飲んでいる。

今回の報告者、木内希だ。広告代理店に勤める彼女は、その外見からも東京のど真ん中で働くバリキャリという雰囲気。

品の良い白のトップスにリネンのパンツが涼しげで、合わせたシルバーアクセも洗練されている。

すでに出勤時間を過ぎているが、前夜に深夜残業があったため、今朝は昼までに出社すればいいらしい。

「仕事はハードですが、辞める気はないです。この仕事、色々あってもやっぱり楽しいですから」

そんな風に語る希の横顔は凛として美しく、日々の充実が伝わってくるようだ。

特定の彼氏はいない様子だが、華やかな業界に身を置く彼女のことだ。おそらくデートの相手に困ることもないのだろう。

しかし30歳という年齢で、結婚への焦りはないのだろうか?

「結婚ね…30歳の大台に乗ったら、急にどうでもよくなりましたね。焦っても意味ないって諦めがついたのかな?(笑)私の場合、どうしても結婚しなきゃならない理由もないですし。…ああ、でも1年前は、少しばかり焦っていたかもしれません」


洗練されたバリキャリ美女・希。彼女が苦笑いする、1年前の出来事とは


「29歳って、独身女性にとって魔の年齢なんですよ。そんな必要全くないのに、早く結婚しなきゃ…!って自分を追い込んでしまう。私もまさにそうでした」

1年前、結婚に焦っていた希は、大学時代の友人、会社の先輩・後輩、果ては仲の良い取引先の人にまで「誰かいい人紹介してください!」と頼みこんでいたという。

「私の場合、20代のうちに出会いがなかったわけじゃない。もともと東京出身で知り合いも多いし、食事会の誘いだって山ほどありましたから。でも、結婚したいと思えるほどの人には出会えなかった。だからこそ、焦ってしまっていたんです」

そんなある日のこと。入社当時から可愛がってくれていた先輩から朗報が届いた。

「先輩の学生時代からの友人で、慶應医学部卒で結婚願望のある男性がいると。先輩と同い年だから当時36歳。…いい案件ですよね?先輩が持っていた写真を見せてもらったら、顔もまあ…許容範囲というか。会わせてくださいと即答しました」

紹介されたのは、高橋という男だった。

それぞれに仕事も忙しいので、先輩に連絡先だけつないでもらい、最初から二人だけで会うことにしたという。

そして、初デートの夜。

高橋から指定されたのは、すでに希が過去何度も行ったことのあるイタリアンだった。

ベタな店選びだな…と思いはしたが、結婚相手として考えるなら、遊び慣れていないのはむしろ好都合。

希はここで“決め”にいくつもりで、ボディラインの出るタイトなワンピースを選び、普段よりぐっと女っぽい演出で高橋とのデートに臨んだという。




「36歳で、バツなし独身で、医者。それでいて顔も悪くはないとなると、おそらくコミュニケーションに問題があるんだろうなって。勝手にそんな風に思っていたんですけど…それが意外と、いい人だったんです」

希の予想に反し、高橋は“普通”の男だった。

会話は医学の話、病院の話に偏りがちではあるものの、柔らかな口調だからか嫌味がない。

希のことも一目で気に入った様子で「こんな美人が職場にいるなんて羨ましい」「紹介してもらえて本当によかった」とわかりやすく盛り上がっていた。

「正直に言えば、私の方は彼にものすごく惹かれていたわけじゃないです。ただ、結婚するには好条件に違いない。それまで私が好きになったり付き合ったりしてきた男は揃いも揃って結婚向きではなかったから…結婚向きで、自分を好きだと言ってくれる人を選ぶべきだって。そう、自分に言い聞かせていました」

そうして二人は頻繁にデートを重ねるようになった。

ただ高橋はもともとマメなタイプではないし、初デートの店選びからわかるように都内のグルメ情報にも疎い。

それゆえデートの約束も店選びも、どちらかというと希の方がリードするような形になってしまったという。

「多少の物足りなさはありましたが、彼も仕事が忙しいし、得意なことは得意な人がやればいいかな、と。そんな風に思い直して前向きに考えていたんです。だけど…」

3ヶ月ほどデートを繰り返したあとで、希は高橋から、衝撃の事実を聞かされてしまうのだった。


「最初に言ってよ…!」希が高橋から聞かされた、衝撃の事実とは


「実は僕、来月から九州の離島に行くんだ」

−九州…?離島…!?

高橋から聞かされた衝撃の事実に、希は驚きのあまり絶句してしまったという。

しかもそれは出張でも期限付きの話でもなく、しばらくは東京に戻るあてのない転勤だというのだ。

「付いてきてもらえますか?」

高橋にそう尋ねられ、希は答えに窮してしまった。

「私の覚悟が足りないと言われればそれまでですが、仕事を辞めて彼について行くという選択肢は…正直、私の中にありませんでした。」

−そんな大事なこと、もっと早く言ってよ…!

心の中で、希はそう叫んだという。

しかし逆にこのタイミングで決断を迫られたことは、希にとって、自身の本音を再確認するきっかけとなった。

「私には、結婚より大事なものがあるって気づいたんです。私は仕事を辞める気なんてないし、東京での刺激的な生活も手放したくない。結婚より、そっちの優先順位が上なんです」

仕事を辞める気はない。あなたに付いて行くことはできない。

彼女としては“プロポーズをお断りする”認識で、丁重に言葉を選んで本音を伝えたという。

ところが高橋の反応はというと、こちらが拍子抜けするものだった。彼はいともあっさり「わかりました」とだけ答えたのだ。

「なんか変だな、とは思ったのですが…けれど結局その後、彼の方も転勤準備で忙しかったのか音信不通になったんですよ。あ、東京を離れる日に“これから行ってきます”とLINEが来たけど…それだけです。だから、ああ、終わったんだなって、私の方はそう思っていました」

−勿体なかったかな…。

仕事で嫌なことがあった夜など、そんな風に思う瞬間も確かにあった。

しかし関係が深くなる前に終わったこともあり、希の方も「縁がなかったのだ」とすぐさま割り切ったという。

もともと方々に紹介依頼をかけていたから、新たな出会いにも困らなかった。

ところが。

つい先日、離島に行ったままずっと音沙汰のなかった高橋から、1年ぶりにLINEが届いたというのだ。

しかもその内容というのが、思わず目を疑うものだった。




“バタバタしてて、ずっと連絡できなくてごめん”

まず最初に届いたLINEを見た瞬間、希の頭に「?」が浮かんだ。

−別に私、もう連絡とか待ってないけど…?

彼の真意をまるで掴めぬまま、希は次のメッセージを待つ。

そして、数秒後。高橋が送ってきたLINEは、希の理解の範疇を超えるものだった。

“実は思ったより早く東京に戻ることになりそうなんだ!”
“あと半年くらいかな…長い間、待たせてごめんね”

「…どういう意味?と思いました。1年間も音信不通にしていて、今更何を言っているのかと。待たせてごめんねって…私が彼を今も待っているだなんて、どこをどう解釈したらそんな認識になるんでしょうか?」

当たり障りなく返信しようかとも思ったが、希はあえて既読スルーを決め込んだという。

「まったく…女は待つ生き物だなんて、思い込みもいいところです。賞味期限切れの恋に、興味なんかありませんよね」

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