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もくじ

ー BTCCで活躍したエステートボディ
ー 鮮烈なクリームイエローに250ps
ボルボ850シリーズの中古車 購入時の注意点
ー オーナーの意見を聞いてみる
ー 知っておくべきこと
ー いくら払うべき?
ー 掘り出し物を発見

BTCCで活躍したエステートボディ

熱烈なファン層を構成するような、クラシックモデルの部類に入ってくるクルマの中でも、1990年代の半ばに登場した、2.3ℓの直列5気筒ターボエンジンを搭載したボルボ850 T5やT-5R、850Rは、間違いのない存在だといえる。歴史を持つ同社が生み出してきたクルマの中で、当時最も強力だったモデルなだけでなく、1994年から1996年にかけて英国ツーリングカー選手権(BTCC)へ、5ドアのエステートと4ドアのサルーンが出場していたことが人気を下支えしている。

ツーリングカー選手権に出場していたクルマに搭載されていたのは、290psを発生させる自然吸気の2.0ℓエンジンで、6速シーケンシャル・トランスミッションを介してフロントタイヤを駆動していたから、メカニカルな部分では実際は異なる。量産モデルの方は5気筒ターボエンジンで、5速マニュアルか4速ATだったのだから。

しかし、それは問題ではない。ボルボは単に安全なクルマを作るメーカーではなく、エキサイティングなモデルも生み出すことができることを証明した事実が大きい。さらに究極ともいえるモデルは、黄色いボディーカラーをまとっていたことも鮮烈だった。現在でも、エステートのボディに黄色い塗装、5速マニュアルという条件は、ホットな850シリーズの中でも一番人気となっている。

当然、英国の輸入業者も人気の高まりには気づいており、この記事を書いているタイミングでも、1995年式のT-5RやRが日本から数台輸入されてきたところだった。価格は7000ポンド(99万円)くらいからだという。

鮮烈なクリームイエローに250ps

ここで、T5やT-5Rなどを整理しておこう。初めに850のホットバージョンとして登場したクルマはT5。サルーンとエステートそれぞれが用意され、1993年に発表された。2.3ℓの直列5気筒ターボエンジンは225psを発生させ、0-100km/h加速も当時としては充分速い7.3秒。1速ではトルクリミッターが作動していたが、ホイールスピンを許しており、比較的落ち着いて運転してもフロントタイヤは1万6000kmも持てば良い方だった。ちなみに850は前輪駆動車だ。850 T5は速いクルマだったものの、控えめなトランクリッドのスポイラーを除いて、見た目は標準モデルと大きな違いはなかった。

しかし1994年に登場したT-5Rは、フロントスポイラーの付いたバンパーにサイドスカート、チタングレーに塗られた17インチのアルミホイールを装備し、アピアランスも「速く」なった。ボディカラーは、グリーンやブラックの他に、クリームイエローも選択ができ、ボルボに対するイメージを大きく変えるきっかけとなったバージョンだといえる。エンジンはオーバーブースト機能で240psを発生させ、サルーンだけでなくエステートでも、0-100km/h加速を6.9秒でこなす事実に、そのイメージはさらに強く印象付けられることになる。

またサスペンションの設定の他に、インテリアデザインの面でポルシェ社(ポルシェ・デザイン)が協力しており、ダークグレーのレザー内装に合成スエードとウッドパネルなどが特徴。英国に輸入されたのはわずか400台で、それに続くクルマへの注目を高めることになった。1995年に登場した、さらにパワフルな「R」だ。

2.3ℓのエンジンにはギャレット製の一回り大きなターボが組み合わされ、エンジンマネージメントも見直し、ターボラグを削り、インタークーラーの効率を向上させることで、250psを発生させた。リミテッド・スリップデフと5速マニュアルが走りを支え、0-100km/h加速を6.7秒に短縮している。ボディは変わらずサルーンとエステートが用意されていた。

見た目で損だったカリスマ性で劣るT5の残存個体は少ないものの、T-5RとRは今でも比較的多く残っている。錆も少ない日本からの輸入車は魅力的だと思う。それでも、整備記録やスペックが申し分ないか確認しておきたい。手に入れたなら、XC90に俊足ぶりを見せつけてほしいところだ。

ボルボ850シリーズの中古車 購入時の注意点

エンジン

クランクケースの圧力を逃がすPCV(ポジティブ・クランクケース・ベンチレーション)システムが詰まっていると、リアのメインオイルシールが破損する恐れがある。オイルフィラーキャップを開けて、補充口にゴム手袋などをかぶせた状態でエンジンをかけると、詰まっているかどうか確認できる。ゴム手袋が膨らんだ場合は、PCVが機能していない証拠。

エンジンオイルの点検用のディップスティックを引き抜き、スティックの刺さっていたチューブから白煙が上がるかどうかも確認する。ディップスティックに乳白状のオイルが付いていても、心配はいらない。オイルクーラーやリターンパイプ周りからのオイル漏れも確認しておく。エンジンオイルは10W-40の半合成タイプが純正指定。1万6000km毎にオイルフィルターも交換しておきたいところ。カムベルトとウォーターポンプは9万km毎に交換しておくと良い。

冷却系

ヒーターマトリックスは故障しがち。クーラントの減りや匂いが車内からしないか、ヒーターをオンにして確かめておくと良い。

トランスミッション

トランスミッション・フルードが定期的に交換されているか、確認しておきたい。

サスペンションとブレーキ

セルフレベリング機能が付いている場合は、リアサスペンションの不自然な下がりがないか観察する。リアのトレーリングアーム・ブッシュがヘタっていると、異音がして、走ると不自然に軽い印象がする。

ボディ

ウインドウ・ウオッシャー液が漏れていると、フロントフェンダーが錆びる場合がある。リアバンパー・マウントも錆やすい。

インテリア

運転席のサイドサポートは割れやすいが、修復は可能。オンボードコンピューターの不具合は、コネクターの接触不良による原因が多い。プラスティック製のギアが欠けることで、オドメーターが動かなくなることが多い。

オーナーの意見を聞いてみる

リチャード・エルソン:ボルボ850Rのオーナー

「交通警察に所属していた父が、ある晩にボルボT5エステートを買ってきたのです。わたしもひと目でその車が気に入って、BTCCでの走りを見る度に、さらに好きになっていきました。わたしがT-5Rを手に入れたのは7年前で、それからレストアを続けています」

「履歴は悪くなく、沢山の整備工場の請求書が付いていたのですが、整備をしていたひとが適当な性格だとすぐに分かりました。木ねじを使っていたりしたんです。しかし今ではコンクールデレガンス並みの状態です。ATからMTに載せ替えましたし、ギャレットのターボもG15からG16へとアップグレードしました」

「このT-5Rはとても気に入っています。ボルボの堅苦しいイメージを打ち破った初めてのモデルですし、羊の皮をかぶった狼的なところも良いです。1990年代のプレミアムモデルとして、信頼性や製造品質も確かだと思います」

知っておくべきこと

850 T-5Rのような古いハイパフォーマンスモデルのエンジンの場合、スペアパーツの用意がないと充分に楽しむことは難しい。幸い、英国の場合ならクラシック・スウェーデなどスペシャルショップがパーツを供給してくれている。正規ディーラーでも部品は手に入るが、ボルボは販売終了後15年間しか部品の供給を行っていないため、現在では残った部品頼みとなっている。

いくら払うべき?

3000〜4999ポンド(42万〜70万円)

修復歴を持つ1996年式Rエステートで、23万3000kmの走行距離のクルマが4495ポンド(64万円)で見つかった。整備記録も揃ってはいるようだ。

5000〜6999ポンド(71万〜99万円)

エステートのT-5RのMT車で、走行距離31万5000kmのクルマが、5995ポンド(85万円)。整備もされたばかりとのこと。

7000〜8999ポンド(100万〜128万円)

輸入された錆も少ないエステートのR。走行距離は6万5000kmから12万kmほど。

9000〜1万3000ポンド(129万〜184万円)

輸入されたクルマが中心ながら、英国仕様の1995年式のT-5Rで、走行距離は19万3000km、ボルボのサービス履歴が揃ったクルマが1万2950ポンド(183万円)で出ていた。

掘り出し物を発見

ボルボ850 2.3R エステート 登録1996年 走行22万5000km 価格3000ポンド(42万円)

前オーナーがATからMTに換装し、ターボもギャレット製のG16に乗せかえているそうだ。ビルシュタイン製のサスペンションと、パワーフロー・エグゾースト、18インチ・アルミホイールなどカスタマイズされているが、整備記録もしっかり残っている。販売店によれば、素晴らしい走りが味わえるとのこと。