「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今回の漢字は「賢い」、「賢者」「賢人」の「賢」。学びの秋、さまざまな知識を身につけて少しでも賢くなりたい……、そんなあなたも知って驚く、残酷な成り立ちをもつ漢字です。



「賢」という漢字の上半分は、大臣の「ジン」「臣民」の「シン」という字の右側に「又」と書きます。

「臣」は大きな瞳の形、「又」は指を出している右手の形。

この二つの漢字を並べることで、瞳に右手で傷をつけ、視力を失わせている様子を表しているというのです。

このような方法で目が見えなくなった者は、神に捧げられ、奉仕する者として扱われます。

こうして神に仕える臣下となった者の多くは、普通の人々とは異なる、すぐれた才能を備えていました。

つまり、もとは「臣」と「又」を並べて書いた文字だけで、「かしこい」という意味を表していたようです。

さらに、その下に書かれた「貝」という字は、甲骨文字が生まれた古代中国・殷の国では手に入らない、貴重な子安貝の形を描いたもの。

遠い南方の海でしか採れない貝は貴重なものであり、貨幣としても使われていました。

そこで、「臣」と「又」という字を並べて書いたその下に、この「貝」という字を書いた「賢」という漢字が生まれ、「まさる・すぐれる」という意味でも使われるようになったといいます。

ところでなぜ、多芸多才で貴重な人材が、瞳に傷をつけられ、盲目の状態で神に捧げられたのでしょうか。

一説には、当時、目には呪力があるとされていたため、その力を封じ、神や当時の国王に服従させるのが目的だったともいわれています。

ではここで、もう一度「賢」という字を感じてみてください。

「賢」という漢字の成り立ちの向こうに見えてくるのは、盲目的に仕える者たちだけを身近に集め、価値の高い人材として評価する為政者や指導者の姿。

どうやら、三千年以上も前からずっと、似たようなことが繰り返されているようです。

「かしこい」の「かしこ」は「かしこし」という古語がその語源。

すぐれた力に対して畏れ多い、尊い、有難い、と感じる心がもとにあるのです。

たとえ相手が部下や後輩であれ、また、教え子や我が子であれ、互いの立場を尊重し、目を見ながら話を聞きあえる関係を築く。

それこそが真の賢さであるということを、肝に銘じておきたいものですね。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。

その想いを受けとって、感じてみたら……、

ほら、今日一日が違って見えるはず。

*参考文献

『常用字解 第二版』(白川静/著 平凡社)

10月6日(土)の放送では「鮪」に込められた物語を紹介します。お楽しみに。



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<番組概要>

番組名:感じて、漢字の世界

放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット

放送日時 :TOKYO FMは毎週土曜7:20〜7:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)

パーソナリティ:山根基世

番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/kanji/