本の表紙などを投稿する行為、法的には?

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「この本買いました!」「オススメの一冊です」などのコメントとともに、本の表紙や中身を写した画像がSNS上に投稿されているのを見かけることがあります。最近では、漫画家の故さくらももこさんの訃報を受け、お気に入り作品の書影やページを撮影し、SNSで紹介する人が続出。中には数万リツイートされた投稿もあります。

 投稿が購買のきっかけとなる可能性がある一方、SNS上で漫画やエッセイが「タダ読み」できる状態となっているため、「立派な営業妨害」「悪意がないとしても許されない」「表紙の写真ならよいのでは?」「宣伝になるじゃん」「自分の所有物なら問題ない」など、賛否の声が上がっています。

 本の表紙や中身をSNSに投稿する行為に、法的問題はないのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

複製権と公衆送信権の侵害

Q.書籍の表紙や中身を撮影して投稿する行為に、法的問題はありますか。

牧野さん「書籍の中身は、『思想または感情の創作的な表現』であり、著作物として保護されています。また、たとえ1ページだけ、あるいは表紙だけでも、ありきたりな内容やデザインである場合をのぞき、創作的なコンテンツであれば、その部分が独立して著作物(思想または感情の創作的な表現)として保護されます。

それを無断で撮影し、投稿することは、法的には複製権と公衆送信権(送信可能化権)の侵害です。自分が購入した書籍であっても著作権まで購入している訳ではありません。著作物をSNS上などに投稿したい場合は、著作権者の許可が必要になります」

Q.作者や出版元から訴えられることもあるのでしょうか。

牧野さん「作者など著作者や著作権者は、複製権と公衆送信権(送信可能化権)の侵害を根拠に、被った損害の賠償請求の民事的救済を求めることができます。損害賠償の額は、コンテンツの使用料(販売価格)×アクセス数やダウンロード数で算出されると高額に及ぶ場合があります」

Q.著作物をネット上に投稿したことによるトラブルについて、過去の事例・判例はありますか。

牧野さん「『漫画村』の事件があります。2016年に開設された漫画村は、『登録不要で完全無料な』書籍閲覧サイトとして、漫画や雑誌、小説、写真集を権利者の許可なく掲載しており、利用者はインターネットブラウザ上で無料でこれらの書籍を読むことができました。

これは、異なる解釈もありますが、基本的には、日本の著作権法の複製権と公衆送信権(送信可能化権)の侵害にあたると解されています。2017年に、講談社などの複数の出版社が著作権侵害で同サイトを刑事告訴していましたが、2018年4月17日から接続ができなくなっています」