理想的な結婚を、適齢期にした沙織、32歳。

誠実で、外見も稼ぎも良い夫と安定した結婚生活を送り、3年になる。

今回は、夫の浮気癖に悩む友人の結婚を思い返してみたが…?

東京結婚式明細 vol.11:30過ぎたら渋谷はNGかも?強すぎるパーティーオーラに気圧された二次会




超遊び人の金持ちを夫に選んだ女。その生活ぶりは…?


由希はいつものように、儚い笑顔を浮かべている。この女は、年々痩せていく。華奢を通り越して、そのうち消えてなくなってしまいそうな細さだ。

今日は彼女との定例のランチで、フカヒレを食べようと『白金劉安』に女2人で足を運んでいた。

「旦那は、相変わらずよ…。」

いつ会っても由希は生気のない寂しそうな目をしているが、それに反して、彼女の持ち物は豪華に輝いている。大きなダイヤのエタニティリングや、ヴァンクリーフ&アーペルのダイヤ付きの時計にピアスにネックレス。

彼女の夫の秀男は、典型的な金持ちの放蕩家だ。昔から浮気が絶えない。

この男の遊び人ぶりには、以前から誰もが呆れていた。結婚前は皆別れを勧めたが、それはもう昔の話だ。

秀男は失態がバレる度に、形式上の詫びとして高価なブランド物を贈る。そうして彼女は持ち物ばかりが派手になるが、本人は体重が減り、輝きを失っていくようだった。

今日も一通り、秀男が40歳にもなって女子大生と夜な夜な遊んでいるという報告を聞いた。

「もう、別にどうだっていいんだけど…。」

私はただ聞いてやるだけで、無駄なコメントはしないと決めている。


遊び人の新郎が起こした、結婚式前日の事件とは…?


桁違いに稼ぐ外銀マンの夫。結婚式前日の、あり得ない事件とは?


二年程前の話になるが、由希の結婚式の前日、彼女は泣きながら私の家を訪れた。結婚式は明日だというのに、秀男が首に大きなキスマークをつけて朝帰りをしたというのだ。

それまでも浮気話は散々聞かされてきたが、それは流石にあり得ないと思った。秀男の浮気性、というか遊び癖は、ほとんど病気の域だ。そんな男に一生付き合い我慢して生きていくのかと、私は朋子も呼び出し、彼女のためにと必死に説得した。

「何であんな男がいいのよ。金をとったら何も残らないような男じゃない。」

朋子の言う通りだった。




秀雄は外資系証券会社に勤める相当なエリートで、出世も早く桁違いの収入を稼ぐというが、若くして禿げ上がった頭とずんぐりと丸まった小柄な背中は貧相で、のっぺらぼうみたいに薄い顔の中で鋭い眼光だけが目立つ、何となく卑しい印象のある男だ。

何度か食事を一緒にしたことがあるが、性格もハッキリ言って微妙だ。

世界は自分を中心に回っていると言わんばかりの偉そうな態度には辟易したし、さらに由希が化粧室などで席を立つと、その場にいる他の女を口説くような軽口を叩く。しまいには、自分のスペックが東京恋愛市場でどれほどアッパー層であるかをプレゼンし始めたりするのだ。

「裸の王様ってやつね。」

朋子も私も、陰で秀男をそう呼んでいた。



その日私たちは、今ならまだ間に合うと、涙を流し続ける彼女を一日中介抱した。しかし、夕方になり秀男から電話がかかってくると、彼女は涙を拭いてサッサと彼の元に戻っていき、翌日には盛大な結婚式を挙げた。


お嬢様育ちの女が、わざわざ遊び人の金持ちを選ぶのなぜ?


「昨日の今日じゃ、とても祝うテンションじゃないわよ。」

朋子は真っピンクのドレスを着て、口をへの字に曲げていた。彼女の言う通り、前日の由希の様子を思えば、不幸の門出としか思えない。

由希はもともと、父親が大手日系証券会社の役員という箱入り娘で、ふわふわと育ちの良い雰囲気を持った優しく可愛い女だった。当時は大手損害保険会社の一般職をしていたが、結婚を機に寿退社をしたのも彼女らしい選択だ。

しかし、お嬢様育ちと言えど、由希は贅沢好きでもなければ、欲深い女でもなかった。だからなぜ、金しか取柄のないような男と辛い思いをして結婚するのかと、誰もが首をかしげていたのだ。

結婚式は、老舗の大手ホテルで行われた。

秀男はいつものように、小柄な身体をふんぞり返らせて、偉そうにニヤニヤしながらチャペルに入場した。私と朋子は、冷めた気持ちをどうしても隠せない。

後から入場した由希は、ふんわりとした妖精のようなドレスを着こなし美しかったが、繊細なベールの下で悲しそうな表情をしていた。それが感激の表情なのか、もしくはまた新郎に傷つけられたのか、私たちには判断がつかない。

それとは正反対に、隣を歩く由希の父親は、満面の笑みを浮かべていた。髪が薄く背も低い父親は地味な外見だったが、娘の晴れ舞台を心底楽しんでいるようだ。彼は娘の夫がどうしようもない男だとは知る由もないだろうと、私は胸が痛んだ。


幸福感ゼロの花嫁。それは友人の心も切なく締めつける


披露宴でも由希の落ち込んだような態度は相変わらずで、やはり前日の朝帰り事件が尾を引いていることは明らかだった。秀男はそんな彼女をフォローするでもなく、自分の結婚式を一人楽しんでいる様子だ。

由希の心境を思うと胸が痛かったし、新郎が憎らしくて食事もあまり楽しめなかった。秀男の会社の後輩たちによる余興動画は、彼がいかに業界のスーパースターであるかを自慢するようなもので、コテコテの俗っぽい外銀臭にむせ返りそうだった。すべてが、何一つおめでたいと思えなかった。

幸福感のない花嫁ほど、友人である私たちの気分を落ち込ませるものはない。由希は結局、披露宴の間中ずっとうつむき気味で、一生に一度の女の晴れ舞台とは程遠い、人生の終わりのようなオーラを纏っていた。


花嫁の男の趣味の悪さの原因が、とうとう判明…?!




最終的に判明した、花嫁の男の趣味の悪さの原因は、まさかの…?


それは披露宴の解散後、数人の友人が集まり、ホテルのロビーでお茶をして女子会を楽しんでいる真っ最中だった。

突然、由希の父親が乱入してきたのだ。

「いやいやぁ、由希のお友達は、美人さんばっかりだなぁ〜。」

父親は真っ赤な顔をしていて、かなり酔っている様子だ。朋子の座っているソファの隣にドスンと音を立ててもたれかかった。

「いやぁ、こんな色の服は、美人しか着れないねぇ。」

そして由希の父親は、なんと朋子の腰にのっそりと手を回したのだ。私たちは全員、息を飲んだ。

父親は私たちのドン引き具合に気づく様子もなく、一人ペラペラと娘の自慢話をしながら、しばらく朋子の腰や膝の辺りをスリスリと撫でまわしていた。さすがの朋子も対応に困っており、ただ顔だけが異様に引きつっている。

「あなた!やめてください!」

由希の父親の手を朋子から引き離したのは、豪華な留袖を着た彼の妻だった。

由希の母親は、娘にそっくりの儚げな表情とか細い声で私たちに何度も詫び、申し訳なさそうに夫を連れて行った。美しく品のある母親だが、首や顔回りの骨が浮き出るほど痩せた身体つきをしていた。

父親は完全に酔っていて、妻に引っ張られながらも、まだこちらに向かって大声で何か話していた。

なぜ由希が秀男のような男をわざわざ選んだのか、長いこと誰もが心底不思議に思っていた。しかし何を隠そう、彼女の父親は、秀男そっくりだったのだ。あの瞬間、皆がすべてを理解した。

これはファザコンと呼べるのだろうか。父親が娘に与える影響とは、恐ろしい。



フカヒレランチから数か月後に由希に会ったとき、妊娠したと告白された。

実は秀男との離婚も真剣に考えていた矢先に判明したとのことで、「やっぱり彼とは別れられない運命なのかもしれない…。」と、またうつむき加減で微笑んだ。

相変わらず妊婦には見えない痩せた身体をしていて、その表情は、結婚式で見た彼女の母親そっくりだった。

まだ性別は分からないと言っていたが、私は絶対に女が生まれるはずだと、一人心の中で確信していた。

【今日の推定結婚式明細】(最高5つ星)
総額:¥6,017,000

ドレス:¥550,000 (★★★★)
飲食代単価:¥3,000,000=単価¥30,000×100人 (★★★★)
ウェディングケーキ:¥130,000 (★★★★)
装花:¥240,000 (★★★)
引出物:¥550,000=¥5,500×100人 (★★★)
司会:¥80,000 (★★★)
会場(挙式料、室料、会場装飾・演出、音響照明、ペーパーアイテム、介添え料、お色直し美容費、メイク・ヘアリハーサル含む):¥1,467,000 (★★★)
余興:(★★)
センス:(★★★)

【指輪】
婚約指輪:¥1,200,000(★★★★★)
結婚指輪:¥2,800,000(★★★★★)